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【キャリコンへの道#1】安心安全に成長することなんてないと思ってた

9月の終わり、わたしはキャリアコンサルタント養成講座の受講のために会場へと向かっていた。

これは、2024年に大学を卒業して、1ヶ月で会社を辞めたそんな劣等若者がキャリアコンサルタントを目指して勉強をする日々の振り返りのnoteである。

キャリアコンサルタントを知っている人はどれぐらいいるのだろう?
キャリアコンサルタントの元にカウンセリングに行ったことがある人はいるだろうか?
会社にキャリアコンサルタントがいるという人は、どれぐらいだろう?

キャリアコンサルタント、通称キャリコンは
労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発、向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行う国家資格である。
命やお金以外で初めての国家資格との噂もあるような、比較的新しい資格である。

しかし、「キャリアコンサルタント」と検索をすると
「簡単」「意味ない」などと出てきてしまう。

4月に入った会社をすぐに辞めてしまったわたしがたどり着いたのは、
そんな資格だった。
6月からオンラインの講座を受け始め、日々勉強を自力で進めていく。
新卒で辞めてしまったわたしには、全く知らない世界のことだった。
理論家を覚えて、テストを受けて、
何も覚えられない恐怖と新しいことを得られる喜び。

わたしは現実から逃避するように勉強をしていった。

そして、9月。
新しい世界に飛び込む日が来た。
前日までは「怖いことを言われたらどうしよう」「お前なんて無理だと言われたら」などと恐怖に近い緊張を感じていた。
恐ろしかった。
それは、わたしが
人間関係をうまく築けないのではないかという不安と
自分というものが否定されるのではないかという不安からきていたのだろう。

大きな駅の人混みを抜けて着いた場所には、わたし以外に18人の生徒が集まっていた。そして、女性の先生。
わたしは、一番前の席に座った。
高校生の時も大学生の時も、いつだって先生に一番近く黒板が見えやすいところに座ってきた。
それは、真剣に話が聞きたいからだった。

授業が始まり、一人一人が自己紹介をしていく。
定年退職をしたおじさま、IT系の会社の人事の人、金融や人材紹介系の会社の人、大手会社に勤める人やパートしかしたことがないという方。
本当に幅の広い人が集まっていた。
わたしが一番の年下で、上は64歳ぐらいだっただろう。
40歳も離れた存在が同じ場所でともに勉強をする。
こんな機会は滅多にない。
とにかく全てを吸収して、早期退職という汚点を少しでも薄めなければならない、そう思っていた。

まず初めに語られたのは、この講座という場においてのグランドルールであった。

「安心安全な場を築くために全員で守っていただくこと」と書かれていることにわたしは心の中で少し泣いてしまった。
「自分も相手も決めつけない」「生徒同士で良し悪しを判定しない」
その言葉たちに気が引き締まる思いと共に様々な悲しみを思い出したのだ。

大学生時代、芸術大学の文芸学科という小説を書く学科に通っていた。
そこでは、合評という「お互いの小説を読み合い、それの感想を言う」ものがある。これはまるで良い時間かのように思われるかもしれないが、その実は、粗探しをして批判をしあうだけの時間になりがちなのだ。
実際、わたしにもその心がある。
だって、みんなライバルだから。作家になれるのは一握りで、同期は敵でしかない。他人の才能なんて認めたら、自分が負けたような気がしてしまう。

だからみんな防衛のために人を批判して、下げて、下げて、自分を守ろうとするのだろう。
その上、教授たちには、このグランドルールという意識がない。
どれだけ酷いことを言っていたとしても、刺し殺そうとしていても、守ることも止めることもない。なんなら、教授がそういうことを言うこともある。

もし、あの時、このルールがあり、適切な言葉での批評をしあえていたのならば、
わたしは小説を書き続けていたのかもしれない。
小説創作のゼミに進学するのを辞めたのは、合評をやりたくなかったからだ。
心を必要以上に乱されて、SNSで暴言を吐きあう、そんなのに耐えられなかった。

だからこそ、わたしはこの講座が始まるまで異常に不安になったし、
この文章を読んで泣いてしまったのだと思う。

受講生同士のフィードバックは指導し合うことではなく、否定し合うことでもなく、感じたこと、学んだこと、聞きたいこと、できたことやできなかったことを話して、そこから各々の気づきを得て、自分なりの学びにつなげること。

リカレントキャリアデザインスクール『国家資格キャリアコンサルタント養成講座テキスト3 応用実習・総まとめ(面談力強化)』

教科書に書かれたこの言葉は、この世の真理ではないか。
とても大事で、素晴らしく、難しいことだった。

そして、ロールプレイングは『上手くやることが目的ではない』という言葉がその後現れる。

わたしは、ずっと上手くなければならないと思っていた。
正解を出し続けないといけない。
間違えたらダメで、恥ずかしいことだ。
少しでも上手くできないと笑われる。

そう思っていて、そう思っていると知っていても、
正しくあり続けないといけないと思っている。

なのに、この場では「詰まってもいいし、上手くできなくていい」と言われる。
言ってくれる。
それだけで少し、自分の恐怖心は和らいで、前向きに頑張ろうという思いになれた。

これらが『防衛反応』『認知の歪み』『女性の特徴』など、
理論家が今まで研究してきたそのものだということを知るのはもう少し後になる。

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