見出し画像

『リベンジ』(1990)冒頭のトップガン演出がとても謎だし、半分くらい何も起こらない復讐劇

さいトニー・スコットが亡くなって今年の夏でちょうど10年にあたる。その意味もあって、これまできちんと観てなかったトニー作品を観ようと心掛けた結果、なぜか『トップガン』(86)や『エネミー・オブ・アメリカ』(98)といった代表作ではなく、あえてマイナーな『リベンジ』(90)を手に取ってしまった。ケビン・コスナーが主演・製作総指揮を務めている。

このタイトルは実にクセモノだ。復讐劇であることを高らかに宣言してしまっているので、見る側は最初からハードな復讐モノだと期待する。が、その肝心な復讐が始まらないどころか、前半はまるで何も起こらないうちに時間だけが過ぎていく。

一応断っておくと、このあとの後半できちんとコスナーがボロ雑巾のように痛めつけられ、なおかつ復讐のために再起するくだりはある。しかしどうにも冒頭、あんな描写から始められてしまってはこっちの調子が全然定まらない。というのも、本作はなぜかコスナーが海軍の戦闘機パイロットという設定で、『トップガン』そのままの飛行シーンで幕を開けるのである。

それが最終的に彼の職能として復讐劇に生かされるのかと思いきや、それも全くなし。これほど金のかかったことをやりながら、伏線ですらなかったのである。

ただ、時代背景を見つめてみると、どうやらこの頃、ジェリー・ブラッカイマーとドン・シンプソンら製作者コンビはいつも「『トップガン』の続編をやろうぜ!」と息巻いていたようで、もしかするとトニー的にも事前の肩慣らし的な意味合いもあったのかもしれない。が、結局のところ当時は「続編」も実現することなく、トニー・スコットとプロデューサー陣は代わりにトム・クルーズの持ち込み企画『デイズ・オブ・サンダー』(90)で『トップガン』のカーレース版的なことをやるのだが、これも賛否が分かれる結果となった。

歴史は点で判断してはいけない。常に全てトータルの線で捉えなければ。そうやって見方を変えるだけで『リベンジ』も幾ばくかは味わい深く感じられるものである。ちなみにコスナーは同年公開の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』の監督、主演として人生最大の脚光を浴びることに。撮影は『リベンジ』が1年ほど早かったそうなので、この現場が彼に与えた影響も比較的大きかったのではないだろうか。

画像1

リベンジ Revenge
監督:トニー・スコット、出演:ケビン・コスナー、アンソニー・クイン、マデリーン・ストウ 製作総指揮:ケビン・コスナー(1990年/アメリカ)124分



いいなと思ったら応援しよう!