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『グラディエーター』誕生のきっかけになった絵画

『グラディエーター』といえば、『エイリアン』や『ブレードランナー』に並ぶリドリー・スコットの代表作。だが彼は当初からこの題材に興味を持っていたわけではなく、全てのきっかけとなったのはドリームワークスのプロデューサー、ウォルター・パークスから見せられた一枚の絵画(の複製)だったと言う。

それは、フランスのロマン派の画家ジャン=レオン・ジェロームが描いた「指し降ろされた親指」(英題”Thums Down”/アメリカのフェニックス美術館所蔵)。

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この絵の中では剣闘士が敗者の傍に立ち、生かすか殺すか、皇帝の決断を仰ぐべくコロシアムの上方を見上げている。映画のワンシーンさながらの場面である。

これを目にして、リドリーは好奇心を刺激され、自分がローマ帝国の世界について何も知らなかったことに気付かされた。そしてこのプロデューサーから提案内容を聞いた上で脚本に目を通し、参加することを決意したと言う。そのため、製作にあたっては常に「古代ローマの実態は果たしてどんなものだったのか?」という根源的な知的欲求が原動力になっていたようだ。

ここからあれほどの傑作を作り上げたリドリーもすごいが、企画をさりげなく、巧妙にリドリーへと投げかけたプロデューサー、ウォルター・パークスもさすがである。

物事には相手に合わせた「話の順番」や「持っていき方」の作法がある。彼はおそらくどのような切り口で誘えばリドリーの好奇心のスイッチを押すことができるのか、その性格、嗜好、考え方も含めて、知り尽くしていたのではないだろうか。それゆえ最初から脚本を送るのではなく、まずはこの絵画でリドリーのイマジネーションを刺激した上で、話を展開していったーーーそう考えるとすごい策士だ。


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