今活躍する若者たちの、幼少期の過ごし方とは?
2020年7月27日に、クラウンシッター初のオンラインイベント「東大生×N高卒業生が語る幼児教育対談」が開催されました!
イベントの内容は、様々な分野で活躍する登壇者の幼少期を振り返りつつその内容について、教育学的に解説するというものでした。合計で、50名以上の方が参加して下さいました。
<登壇者>
登阪 亮哉 (とさか りょうや) / クラウンシッター研究開発担当
東京大学教育学部。ドイツの幼稚園に1年間通う。東京大学入学と同時に休学し、世界一周しつつ各国の幼稚園を取材。帰国後は読み聞かせの研究や、フランス現代思想と幼児教育の接続に関する研究を行なっている。
note:@tosaka
冨樫 真凛 (とがし まりん) / ベビテック起業家
14歳から16歳をニュージーランドの現地校に留学し、その後角川ドワンゴ学園N高等学校に入学、卒業。「育児の社会化」をテーマに、テクノロジーの力で育児を安全に楽にするべく、ベビテックに取り組んでいる。
twitter:@marin_togashi
小坂真琴 (こさか まこと) / 東京大学医学部医学科 5年生
灘中学校灘高等学校を卒業、東京大学医学部5年。一般社団法人inochi未来プロジェクトや、NPO法人留学フェローシップで中高生の教育に関わる。また、医療ガバナンス研究所及びオレンジホームケアクリニックでインターンとして研究に従事する。
ー登壇者の幼少期についてのトークセッションー
前半のトークセッションでは、以下の3つのテーマに沿って対談を進めました。
テーマ① 特に声掛けと関係する、両親の子育て方針について
テーマ② 家にあったモノで、今の自分を形成していると感じるもの
テーマ③ 自分たち世代のキャリア観と、そこから導かれる幼児教育のあり方
テーマ① 特に声がけと関係する良心の子育て方針について
登阪:弟が2人いて、幼少期は一歳下の弟と切磋琢磨しながら成長しました。両親は僕たちがやることについて、おすすめはしても何かをさせるということはありませんでした。自分の記憶ではそのように色んなことを自分で決めさせてもらったという印象だったのですが、あとから両親に聞くと、僕たちが豊かな好奇心を育めるように、環境や声かけを意識していたそうです。また、兄弟のどちらかを贔屓することはせず、どちらにも成功体験が生じるように考えていました。
冨樫:すごく褒められる家庭で育ちました。なんでも「上手にできたね」と言われ、一方で怒られることは危ないことの注意くらいで、本当に全くありませんでした。あとから両親に、子育てで意識していたことを聞くと、「何もしてなかったよ。のほほんと子育てしてただけ」と言われました(笑)ただとにかくポジティブな声掛けばかりされていたのが印象的です。
小坂:僕は言葉を話し始めるのが遅く、両親はそれを心配して幼児教室に通わせてくれました。そこでは、自分で洋服を畳んだり片付けをしたりといった習慣を、表にしてチェックするということをやっていました。そこで両親は、できなかった場合にそれを責めるのではなく、「なぜできたかったと思うか」について丁寧に聞くということを意識していたそうです。
以上のお話は、それぞれの現在の活動と幼少期の特徴が結びついていたのが印象的でした。登阪は自己決定を習慣化していたことで自ら学びを形成するようになり、冨樫さんは自己肯定感を育まれたことで積極的なチャレンジができるようになり、小坂さんは自己反省を繰り返す中でメタ認知が発達して高い学習力と社会性を身につけた、というふうに考えることができます。セッションでは、そのような因果関係が見出されつつも、必ずしも単純に育て方と成長が一致するわけではない、ということも話されました。
テーマ②家にあったモノで今の自分を形成していると感じるもの
登阪:父が物理学者なので、家の二ヶ所に元素周期表が貼ってありました。また、大学の教科書や論文を印刷したものがよく机に置いてあって、お絵かきをするときはその裏紙を使っていたのを覚えています。論文中に綺麗な写真があったときなどは父に解説を聞いて、意味がわからないなりに科学の面白さを楽しんでいた記憶があります。
冨樫:ぬいぐるみが好きで、たくさん置いてありました。それでよくごっこ遊びをしていました。その時から、自分より小さいぬいぐるみのお世話をするような遊び方をしていたのを覚えています。
小坂:1つ目が野球盤で、ひたすら一人でそれを遊んでいました。右手と左手で攻守を同時に行っていました(笑)当時は父の影響で高校野球が好きだったこともあり、トーナメント表をつくるために出場高校の名前を覚えることもしました。2つ目が歴史の本で、これは今も城巡りなどの自分の趣味に結びついています。3つ目はトミカのミニカーです。床に這いつくばって、同じ目線で遊んでいたようです。
このセッションでは、子どもの知覚的な刺激と結びつく「モノ」について話されました。登阪は特殊な家庭でしたが、冨樫さんや小坂さんは普通のグッズが置かれていたようです。しかしその使い方について、それぞれにこだわりを持っていたことがわかりました。ぬいぐるみの形の違いによって様々なレベルでの共感を育めるといった話や、両手で異なる動作を行うことによる知覚への刺激が得られるといった話が特に注目されました。
以上のように、座談会ではそれぞれの幼少期の経験をシェアした上で、登阪によってその幼児教育における理論的な裏付けが説明されました。セッション中には視聴者の方々からもたくさんの質問をいただくことができました。
テーマ③自分たち世代のキャリア観と、そこから導かれる幼児教育のあり方
登阪:Youtuberのような新しい働き方が当たり前になる中で、僕自身も東大から安定した企業に就職するのではなく、教材開発のフリーランスという道を選びました。海外の幼稚園を取材するために世界一周をする中で、この社会における人間の生き方がいかようにも許されていると感じ、それを自身の人生にも教育にも適用したいと考えたのです。幼児教育を通して、単に発達が整っているだけではなく、お互いにより良い社会を認め合いながら作っていけるような人が育ってくれたら、という想いで活動しています。
冨樫:難しいですね(笑)これからは、「こうすれば幸せ」といった固定的・普遍的な生き方がどんどん個別化していくと思います。私自身も今のところは大学進学をせずに起業する道を選びました。自信を持って、人と違う道を選んでもいいという感覚が幼少期から得られるというのが大事だと思います。
小坂:僕は医学部の5年生でこれから病院を選ぶ段階です。大事だと思うのは、逆張りというか、自分にしかできないことを突き詰めて他の人と違う道を行くことです。その結果として、他者とのコラボレーションの可能性を広げると思います。医師の場合も人口減少によって需給バランスが変化する中で、「自分はこれについては一番」と言えるものを作るのが重要だと考えています。
このセッションでは、登壇者それぞれの人生のステージを踏まえて、幼児教育というものの捉え方について様々な角度から意見が示されました。登壇者の同期が東大から有名企業に就職し、それでも必ずしも幸せになれているとは限らないという実感がこもっていたのが印象的でした。
ー質問への応答ー
次に、事前に頂いていた質問への応答の時間がありました。
質問① 習いごとについて
冨樫:ピアノをやっていました。正直めんどくさいなと思っていたのですが、親からは「めんどくさいならつづけたほうがいいけど、本当に辞めたいならやめていいよ」といわれたので、続けると決めました。他にも様々な習い事を経験はしましたが、だいたいすぐにやめました。バレエは3日でやめました(笑)実はこどもの頃は勉強も嫌いで、留学すれば勉強しなくても英語ができるようになると思って留学しました。ただ、そこでさすがに勉強しないと何もできないとなって、いざ勉強してみたら好きになりました。
小坂:僕も習慣づけの意味でピアノか水泳を選ばされました。あまりにも水泳が苦手すぎて、消去法でピアノにしました。それから、どれだけ辞めたくなってもピアノだけはずっとやらされていました。7歳前後ごろには泣きながら練習した記憶があります。今思えば、そこで努力する習慣ができたかもしれません。
習いごとはどのご家庭もいろいろな考えで選ばれると思います。今回の登壇者は特に対照的で、いずれにしても親御さんの方針がその後の姿勢に影響を与えていた可能性が示唆されました。一方で、どちらも二人の人生にポジティブに働いていたことも見逃せません。
質問② 自分が親になったときにしてあげたいこと
登阪:自身の研究テーマでもあるので、その知見を活かした読み聞かせはたくさんしてあげたいです。また、子どもが相手だからと難しい概念を簡略化するのではなく、丁寧に説明してあげたいと思います。大人が本気で考えたことをぶつけてくれたからこそ、今の自分も考えることに真剣になれるのだと思いました。
冨樫:私自身は幼少期に集合住宅でたくさんの家族に囲まれながら育ちました。たくさんのお父さんお母さんや兄弟姉妹がいるような感覚です。そこで色んな価値観に日常的に触れて、辛い時には逃げる場もあったのが、今の自分を強く支えています。そのような環境を与えられたらと考えています。
小坂:ピアノを投げ出さずに集中してやっていたことは、当時は辛かったけど、今の自分の困難への向き合い方や音楽の理解、あるいは知能面でもとても意義深かったと思います。そのように何かに向き合う経験は与えてあげたいです。
このテーマでは、全体の話を踏まえて自身の将来の子育てをイメージしました。登壇者は皆、自身の経験の中でも今の自分に良い影響を与えているものを伝えたいと考えていました。子育てを自分の経験と照らし合わせて行う感覚は誰しも持つものだと思います。その意味でも、保護者の価値観のみで固定されないように、ベンチマークとなるような優秀な教育者に出会うことが重要であることもコンセンサスとなりました。
他にもチャットでたくさんの質問をいただき、登壇者それぞれの経験や知識を踏まえて双方向的に質疑応答が進められました。
イベント終了後も様々なご感想や追加の質問をいただき、実りある時間となりました。お越しいただいた皆様、誠にありがとうございました。
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クラウンシッターでは、今後も年齢や分野を問わない様々な方を招きながら幼児教育について共に考える会を定期的に開催していきます。
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次回のオンラインイベントは、2020年9月13日21:00より開催いたします。
【ハーバード生 x 東大生】活躍する2人が幼少期の体験を語る!
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