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シュヴァルとバリアシオン 真夏のスイーツバトルwithキタサン&オルフェーヴル



「シュヴァルさん。こんな夜遅くに、何を見てるっすか?」

「えっと、これは……くうふくシスターズさんという大食い系ユーチューバーの動画です……。勉強の小休止のつもりだったけど、つい見入ってしまって……」

「これは……す、凄まじい食べっぷりっすね……。みるみるうちにパフェが消えていきます……」

「……これ、もう10杯目なんですよ」

「本当っすか……!? それだけ食べてもペースが落ちないどころか、さらに加速してるとは……。おそろしい人たちっすね……」

「まるで、オグリキャップ先輩が二人いるみたいだよね……」

「言い得て妙……っすね。このお二人は姉妹なんですか?」

「そうですね。双子の姉妹で、しかも二人とも大食いという珍しいユーチューバー」

「へぇ、そうなんすか。あ、もしかして……このお店、駅前にあるスイーツ店じゃないっすか?」

「うん。最近オープンしたばかりのお店みたいで、かき氷なんかも有名らしいです」

「毎日うだるように熱いっすから、お客さんもひっきりなしでしょうね……」

「この動画が配信されて、さらにお客さんが増えそうだよね……」

「バズった動画から人気が出るのも、よくある話っすよね。あらためて見ると、この二人が食べてるパフェ……とっても美味しそうっすね……。桃をまるごと使ってて、見てるだけでお腹が空いてきます」

「う、うん。それ、すごく分かる……。僕も、お腹が鳴りそうになってる……」

「……あの〜、シュヴァルさん? このお二人が美味しそうに食べる姿を見てたら、私までパフェが食べたくなってしまったっす……。今度、一緒に食べに行きませんか?」

「シオンさん……。じ……じつは僕も、ランニング中にお店を発見したときから気になってたんです。その……いつか食べに来られたら良いなって……」

「ふふ、シュヴァルさんは食いしん坊さんっすからね。ひとつだけじゃ足りないかもしれないっすね」

「ううっ……/// だって、今は桃がとっても美味しい季節だし……」

「桃は果物のなかでも特に甘くてジューシーっすからね。あ、そういえば昨日の夜……シュヴァルさんが『美味しそうな桃……お腹いっぱい食べたいな……』って寝言を言ってるのが聞こえてきたっす」

「ふぇっ!? ほ、本当に!? 僕……そんなこと言ってたの……? は……恥ずかしい……」///

「あ……ご、ごめんなさいっす! 茶化したかった訳じゃないんです。ただ……シュヴァルさんは本当に食べるのが好きなんだなと思って、ちょっと羨ましくなったんです……」

「そんな、羨ましいなんて……食い意地を張って、いつも食べ過ぎちゃってるだけですから……」

「たくさん食べることが出来るのも、立派な才能っすよ」

「さ、才能だなんて……」

「私は小柄で食も細いし……。シュヴァルさんみたいに食べることが出来たら、きっとオルフェーヴルさんやジェンティルドンナさんにもレースで勝っていたかもしれないって、何度思ったことか……」

「シ、シオンさん……」

「ははは……こんな風に考えてしまう時点で、私は彼女たちみたいな強いウマ娘にはなれないっすね……。ほんと、自分で自分がイヤになるっす……」

「そ、そんなこと……ないですよ……」

「いや、良いんすよ。私なんて所詮、ここ一番のレースで勝ち切れないダメダメなウマ娘っすから。あっ……なんか、愚痴みたいになっちゃったっすね……ごめんなさい」

「…………」

「い、今のは、忘れてください。はは……こんな自分、恥ずかしくて、たまらないっす……」

「シ、シオンさん……!! あ、あの、えっと……明日……っ! 明日行きましょう! 二人でパフェを、お腹いっぱい食べましょう! そ、そうすれば……お腹も心も、満たされるはず、ですから……」

「シュヴァルさん…………(私のことを、励まそうとしてくれてるみたいっす……)。ふふ、ありがとうございます。もちろん行くっすよ!」

「ほ、ほんとに?」

「はい! 今なら何個でも食べれそうな気がします! 今日はもう遅いっすから、明日に備えて寝ましょう」

「う、うん……!(よかった……シオンさんも元気がでたみたい。明日が楽しみだ……!)」


ーー翌日ーー


「ここっすね」

「はい。なんだか、お客さんがいっぱいですね……」

「入りづらいっすか?」

「い、いや……大丈夫。ここまで来て、入らないなんてもったいないですから……」

「無理だったら言ってくださいね」

「う、うん……ありがとう。と、とりあえず、僕らの名前を書いておきましょうか」

「そうっすね。それにしても凄い行列……」

「うん、トレセン学園の生徒もけっこう居ますね」

「私たちみたいに、くうふくシスターズさんの動画を見て来たのかもしれないっすね」

「そう、だね。僕が言うのもなんだけど……やっぱりみんな、スイーツには目がないよね」

「考えてることは一緒ってことっすね」

「はは……だよね(でも、これだけトレセン学園の生徒が並んでると、もしかすると……キタさんも居たりして……)。」

「ん……? ちょっとシュヴァルさん、あそこに居る黒髪の子、もしかして…………」

「お〜い!! シュヴァルちゃんにシオンさーん!」 

「えッッッ!!? キ、キ、キタさん!!(ほ、本当に居た……!?)」

「えへへ♪ このお店、前から気になってたんだよね〜、美味しそうなパフェだなって。しかも、二人に会えるなんてね♪ 嬉しい!」

「ははは……うん。ぼ、僕も、その……う、嬉しい……」

「奇遇っすね、キタサン。私たちは人気ユーチューバーの人の動画を見て来たんですよ」

「そうなんですか! あっ、そっか〜、だからこんなに行列ができてるんだ〜!」

「う、うん……シオンさんとも、そうなんじゃないかって話をしてたところなんだ……」

「そうなんだ〜! ふふふ♪ シュヴァルちゃんだったら、お店のスイーツぜんぶ食べ尽くしちゃうかもしれないね!」

「ええぇ〜……!? キ、キタさんも、僕がそんなに食べると思ってるの……?」

「ふふっ……実は私も、シュヴァルさんの大食いが炸裂するんじゃないかって言ってたんすよ」

「シオンさんもですか! 食堂の食べっぷりを見てたら、やっぱりそう思いますよね〜! シュヴァルちゃん! 今日はい〜っぱい、スイーツを堪能してね!」

「ははは……うん、ありがとう(それにしても……ほ、本当にキタさんに会えるとは思わなかったな……。今日は、とってもツイてる……♪)。」

「おい貴様、何を談笑しておる。余を案内するのが先であろう」

「あっ、すいません、オルフェーヴルさん」

「えっ……!(な、何故オルフェーヴルさんがここに……。その場に居るだけで、い、威圧感が、スゴい……)」

「なっ……何で貴方がこんなとこに居るっすか……!?」

「愚問だな。余は俗物たちが口にするものに興味がある。貧しい舌で、いったい何を食しているのかと。故に、ここにいる庶民の娘に案内させているのだ」

「実はね……さっき、トレセン学園の廊下を歩いてたら、急にオルフェーヴルさんに話かけられちゃってね。私たちが食べるようなスイーツのおすすめを教えてくれって」

「そ、そうだったんだ……(よかった……変な意味はなかったみたい。でも、この組み合わせは、ちょっと謎だ……)。」

「まったく、貴方は……。後輩を無理やり付き合わせるなんて駄目っすよ」

「くだらん。余はそんな俗念など持ち合わせておらん。上も下もない、余こそ、この世界を統べる唯一無二の王である」

「また、無茶苦茶な理屈を言ってるっす……」

「ねぇ、シュヴァルちゃん。せっかくだしさ、みんなで同じテーブルに座らない? これだけ混んでるし、そのほうが早く店内に入れると思うよ!」

「う、うん……ぼ、僕は良いと思うけど(キタさんの食べるところを拝めるだけで嬉しいし……)。その、シオンさんは、それで良いの……?」

「そうっすね……。まぁ、オルフェーヴルさんが良いんだって言うなら、私は別にかまわないっすよ……」

「余が興味あるのは、庶民の味とやらだ。それ以外のことなど眼中にない」

「そ、それなら問題はないですね〜。ははは……じゃあ、私、名前書いてきますね〜!」

「あ、ありがとう……キタさん(どうしよう……キタさんに気を遣わせてしまった……。それにしても、オルフェーヴルさんの王様みたいな態度に接してると、疲れるな……)。」

「ちょっと……貴方って人は、キタサンを困らせてばかりじゃないっすか……? その傲慢な態度……貴方はいつも、天上天下唯我独尊っすね」

「貴様、世辞を言ったところで、余は褒美など出さぬぞ?」

「は、はぁ……? お世辞? わ、私は褒めてなんかいないっす! 呆れてるんです!! まったく……」

「ま、まぁまぁ……シオンさん……。お、落ち着いてください(ど、どうしよう……せっかくのスイーツとキタさんとの時間が、このままじゃ大変なことになってしまいそう……)。」

「名前書いてきましたよ〜」

「あ、うん。ありがとうキタさん」

「ねぇねぇ、シュヴァルちゃん。オルフェーヴルさんとシオンさんのやり取りを見てるとさ、これぞライバル! って関係みたいだよね」

「う、うん。たしかに、そう……だね。レースでもトレセン学園でも、お互いを意識してる感じとか、特に……」

「ちょ……シュヴァルさん……私たちをそんな風に思ってたんすか」

「帽子娘よ、貴様の目は節穴か。戯言も大概にしておけ。処すぞ……?」

「はわわわわっ!? ご、ごご、ごめんなさいっ!! (な、な、何で、僕がまっさきに怒られてるの……?)」

「あっ! みなさん! 今、名前呼ばれたみたいです! それじゃあ、なかに入りましょうか!」

「あ、うん……(キタさん……逃げるように店内に入っていったな……)。」


ーー入店ーー


「お待たせしましたー! 当店特製、桃パフェ・スペシャルになりますー!」

「わぁ〜〜っ!! みてみてシュヴァルちゃん! すっごいよコレ! 桃が丸ごと乗ってるよ〜!!」

「う、うん……! バナナにブドウ、サクランボにアイスクリームとポッキーまで……。と、とってもボリューミーで美味しそう……」じゅるり……

「凄いっす……。動画で見たときの何倍も大っきい。せ、せっかくだし、写真撮っておこう」パシャ!

「はしたない真似をしおって。身も心も煩悩にまみれておるな」

「う、うるさいっすね! だ、だ、だって、本当に美味しそうだったから……!」

「(シオンさん……いちいち反応がカワイイな……)」

「それじゃあ、いただきま〜す! ん〜! とっても甘くて美味しい!! 桃が食べても食べても減らない! ほらほら! シュヴァルちゃんも、はやく食べてみてよ〜!」

「わ、わかった……(ぱく……)。こ……こ、これは……っ!? 口に入れた瞬間、舌をとおして甘さが身体中に巡っていく……。まるで、全身に桃の甘味が染みわたっていくように、幸せな気持ちに心が満たされていくようだ……」

「ははは! シュヴァルちゃん、それじゃあグルメリポーターさんみたいだよ〜!」

「あっ……!? こ、こ、これは……美味しさのあまり、つい喋りすぎちゃっただけで……。こんなの……僕のキャラじゃないし……。うう……今の忘れて、キタさん……」

「わ、私も食べてみるっす。うん……うん! この桃パフェ……想像してたとおり、と〜〜っても美味しい!!! シュヴァルさんの口調が変わってしまうのもわかるっす!」

「はうっ……!? (シ、シオンさんまで〜///)」

「ほう、これが庶民の味か。……ふむ、悪くない。よもや、余の舌を堪能させるとはな」

「……へぇ、貴方の口にも合ったみたいっすね」

「古来より、権力者は庶民どもの贅沢を禁じてきた。その気持ちが今、理解できた。この甘味を庶民ごときが口にできるなど、あまりに惜しい」

「…………まったく。美味しいなら美味しいって、素直に言ったらどうっすか……。さっきから、スプーンの動きが速くなってるっすよ」

「貴様……愚弄するでない。この程度の味、余は数え切れぬほど食らってきたわ」

「へぇ、そうっすか。それはそれは、良かったっすね。私は庶民っすから、しっかり味わいながら食べさせてもらいますよ」

「殊勝な心がけだな。自らを庶民とわきまえるその態度。喜べ、この王が直々に、愚劣な貴様を蔑んでやろう」

「は? 蔑む……? そ、それ、どういう意味っすか!」

「知らんのか。無知で、さもしく、低俗な者を哀れむときに用いる言葉だ」

「はぁ……!? なんすか、それ……。も、もう……さっきから、私のことを馬鹿にしすぎっす……っ! せっかくの美味しいパフェが、これじゃあ、台無しっすよ……っ!」

「あ〜……ちょ、ちょっと二人とも〜。もっと楽しく食べましょうよ〜! ね、ねぇ、シュヴァルちゃんからも二人に言ってあげてよ……」

「ごふッ!!? (え……! ぼ、僕に振るの? この空気……僕なんかじゃ、どうすることもできないよ……)。」

「その必要はない。此奴の哀れな姿、貴様らも刮目しておくがいい」

「(ま、マズい……また追い打ちをかけるようなことを……。はやくオルフェーヴルさんを止めないと、シオンさんが怒って帰ってしまいそう……。というか……もう、かなり怒ってるよね……。ど、どうすれば、この悪い空気を変えられる……?)」

「こ、こうなったら。荒療治だ……! ね、ねぇ、シュヴァルちゃん! ア、アレを見て! みんなで、アレやってみない……?」

「へっ……? ア、アレって……あの張り紙? え〜と、『巨大パフェ・フードバトル』……食べ切ったら、お代は……無料?」

「うん! シオンさんもオルフェーヴルさんも、このまま食べ続けるとますます嫌な空気になっちゃいそうだし、それならいっそ、勝負で決着付けませんか? ど、どうでしょう?」

「(か、かなり強引な方法だけど……これなら、いがみ合う二人を落ち着けられるかもしれない。でも、そんな簡単に行くわけ……)」

「ふん。何だ? そのくだらん児戯は。あの程度の量、余なら造作もなく食らい尽くせるわ」

「(あ、意外とすんなり受け入れてくれた……)」

「シオンさんは、どうですか。い、嫌だったら、大丈夫ですよ?」

「……いえ、ここまで散々バカにされて、黙ってなんかいられないっす……。なんか、お腹のなかも、もっと食べさせろって騒いでるっす……。だから、わ、私も、やるっす……!!」

「(シ、シオンさんも乗ってくれた……。な、なんとか話が収まって良かった……)」

「よーし! それじゃあ、みんなで巨大パフェを食べましょう! すいませーん! 私たち、フードバトルに挑戦しまーす!」

「承りましたー! 巨大パフェ4つ、注文入りましたー!」

「えぇええっ!!? ぼ、ぼ、ぼ、僕たちも食べるの……!?」

「うん! せっかくだし、私たちも食べよっ! もしかして……イヤだったかな、シュヴァルちゃん……?」

「うっ……! え、えっと……い、嫌では……ない、けど……(そ、そんなキレイな瞳で訴えられたら……こ、断れるわけないじゃないか……!! しかも……その上目遣いは、反則だよ……キタさん……っ!!)。」

「お待たせしましたー! こちら、ハイパー・デンジャラス桃パフェでございますー!」ドン!

「も、もう来たっ!? (しかも、丸ごとの桃が、三つも乗ってる……。その他の食材まで、ご丁寧に三つ増やしてる……。通常パフェの三倍のボリュームだ……)」

「制限時間は15分。食べ切ったらお代は無料ですー」

「それじゃあ、勝っても負けても後腐れなしですよ! オルフェーヴルさん! シオンさん!」

「貴方には、ぜ、絶対に負けないっす!!」

「ふん。せいぜい、この王に抗ってみせよ」

「(なんだか……皆さん、勝負のスイッチが入ってる……。僕だけ置いてけぼりな気がする……。でも、これだけのパフェを食べられるなんて、トレセン学園じゃあり得ないし……せっかくだし思い切り楽しむしか、ない……!)」

「それではスタートですー!」ピー!

「はむ! はむはむ!」

「もぐ、もぐもぐ……!」

「ぱくぱくぱくぱく……!」

「ふん……」モグモグ

「う〜ん、やっぱり美味しいー!」

「うん……!(こ、これなら、かなりの量を食べられそう。もしかすると、キタさんやシオンさん、オルフェーヴルさんにも先行できるかも……)」

「(シュヴァルさんもキタサンも、凄いスタートダッシュ……。私も負けてられないっす。まずはポッキーやブドウを食べ切り、それから大きい桃やバナナを切り崩す作戦で行くっす)」ぱくぱく

「所詮は巨大などと謳ったところで、余を手こずらせるほどではないな」モグモグ

「シオンさんとオルフェーヴルさん。お互いに火花が散ってるね」

「うん……。でも僕らだって、負けてられないよ」

「そうだね! あ……でも、これだけ甘くて冷たいものを食べ続けてたら、放置してた……む、虫歯がしみてきちゃった……!!」キーン!

「えっ、キタさん……。だ、大丈夫……?」

「うん、なんとか……。でも、こんなに美味しいスイーツ、めったに食べられないから。が、頑張るっ!」

「そ、そっか。でも……無理しないでね……」

「うん! ……あ痛っ!? た、食べれば食べるほど虫歯にしみる……。でも、美味しいからスプーンが……と、と、止まらないよ〜〜っ!!!」はむはむはむはむ!!!

「(キタさん……泣きながら笑ってる……。マズイな……タオル投入したほうがいいかも)」

「ふ、普段から王を名乗ってるわりには、食べるのに、ひ、必至じゃないすか……」ぱくぱく

「『獅子は兎を狩るにも全力を尽くす』という言葉を知らぬのか。舌よりも口を動かせ」モグモグ

「(くっ……! 何すか? その格言……。ちょ、ちょっとカッコいいと思ってしまったっす……)」ぱくぱく

「わたひも、ふぁけないよ! ジュヴァルしゃん!」はむはむ

「ぼ、ぼぐばって……!」もぐもぐ

「(シュヴァルちゃん……ほっぺがリスみたいに膨れてて可愛い♡ ……じゃなかった。あの食べっぷり、レースと同じくらい、いやそれ以上に本気だ……!)」

「(キタさんの必死にパフェを頬張る姿……か、可愛いすぎるよ…………! 目の前のパフェを無我夢中で食べ進めないと、どうにかなっちゃうよ〜///)」

「……あ痛〜ッ!? や、やっぱりムリ〜! 虫歯いたーいッ! ギ、ギブアップ……」

「キ、キタさん!? だ、大丈夫っ?」

「ごめん、シュヴァルちゃん……。お先に脱落するね……」バタン……

「キ……キタさーんっ!!?」

「ふん、他愛もない。見よ、余の器を。すでに底が見えてきたわ」

「もがっ……!(う、うそ……。もうそんなに食べたっすか……。わ、私もスピード上げなきゃ。オルフェーヴルさんには……絶対に、負けたくない!!)」

「せいぜい足掻いてみせよ、愚劣な庶民よ」

「(くそ……負けたくない……。ぱくぱくぱくぱく……。よし、器の底が見えてきたっす! あとは、ラストスパートをかけるだけだ……!)」

「ほう……やるではないか。だが、それまでだ」パクパク

「ふがっ!?(まずいっす……このままじゃ、また負けちゃう……。イヤだ、イヤだイヤだ! 今日こそ、オルフェーヴルさんに勝つんだ!!)」

「これで、終わりだ」パクパクパクパク!

「(こ、こうなったら、器を持ちあげて一気に……かき込むっす!!)」

「はぁあああ!」パクパクパクパク!

「うぁああああッッッ!!(勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたいッッ!!)」ぱくぱくぱくぱくぱくぱく!

「な……何だと」

「モゴモゴ……ふぁ、ふぁたしの……かひっ、すね……(か……間一髪……間に合った……)。」

「わぁ、スゴいっ!! シオンさんの勝ちぃ!」

「お、おめでとう。シオンさん……!」

「(ご、ごくんっ……!)はは……あ、ありがとうっす……。うぷっ……」

「貴様……余のスピードを上回るほどのラストスパートとはな」

「負けたくない。この一心で、パフェを食べ続けただけっす……ただ必死に、貴方に食らいついただけっすよ」

「……そうか。ならば、さらに励むがよい。貴様の食べっぷり、見事であったぞ」

「……え? 今、なんて言ったっすか?」

「二度は言わん。今日のこと、ゆめゆめ忘れるでないぞ。腹もそこそこ満たされた、余は帰る」

「あ、オルフェーヴルさん……」

「(去り際はカッコいいけど……お腹が風船みたいにパンパンに膨れてる……。まぁ……僕のお腹も同じ状態か……)」

「(……や、やった……!! オルフェーヴルさんに、認められたっす……!! つ、ついに、私は……勝ったんだ!!)」

「シオンさん、とっても嬉しそうだね」

「うん、ずっと勝てずにいたオルフェーヴルさんに勝ったんだから……。嬉しいに決まってるよ……」

「そうだね! おめでとうございます、シオンさん!」

「お、おめでとう、シオンさん」

「二人とも、ありがとうっす……!」

「ピピーッ! ただ今の時間を持ちましてチャレンジ終了ですー!」

「あっ……パフェのポッキーだけ残ってたの忘れてた……」

「あ〜、残念だったね、シュヴァルちゃん……。

「うん。でもシオンさんの喜ぶ姿が見れただけで、今日は来て良かったよ……(そ、それに、キタさんの可愛い姿もいっぱい見れたし……)。」

「えっとね……シュヴァルちゃん。実は私……今日、持ち合わせがあんまり無くてね……」

「えっ……そ、そうなの……? ちなみに、所持金は……」

「千円だけ……。ご、ごめんね。だから、その……お金、貸してくれないかな……? すぐに返すから!」

「(ま、まさかの展開……)ち、ちなみに、お代って幾らだっけ?」

「えっと……一人につき挑戦料が一万円だから、千引く一万は、えっと……九千円?」

「うっ……そ、そうなんだ(九千円の出費は大きいけど……キタさんの可愛い姿が拝めたから、良しとしよう……)」

「あの……店員さん。もしかすると……オルフェーブルさんが残したパフェ代のほうは……わ、私が払うっすか?」

「はいー! お代はキッチリいただきますー!」

「そ……そんな…………」ガクッ

「シオンさん……」

「はは……勝負には勝ったけど、財布のなかは軽くなっちゃったっす……」

「うん、ぼ、僕の財布も……。でも、シオンさんの食べる姿、本当にかっこよかったよ……。だから、今日は来れて良かった……」

「シュヴァルさん……。その言葉、めっちゃ嬉しいっす! 今日は誘ってくれて、ありがとうっす!」

「う、うん……! シオンさん……これからも、よろしくね」

「はい! こちらこそ!」

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