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古いポラロイド写真


赤い長靴を履いて、オーバーオールみたいなやつ、なんか可愛い格好をして、きゃーって嬉しそうに笑ってる小さい女の子。

その子のほんとすぐ後ろに、手を広げた大人が写ってる。写ってるのは腰から下だけだけど、お洒落なピカピカの皮靴に黒い前掛け、小さな頃から見ているから、すぐに誰だか、分かる。

古いポラロイド写真に写った女の子は遥か昔の私で、一緒に写ってるのは、私の伯父さん。

多分、写真撮るよってなって、きゃーって伯父さんの足に絡んで、ほら、こっち見て!って撮ったやつ。


何年か前に伯父が、片付けてたら出てきたぞって、私にくれた。

伯父は、私の母の姉の旦那さんで、血の繋がりはない。親戚のオジさんってやつ。伯母夫婦に子どもがいなかったから、姪にあたる私と従姉妹を可愛がってくれて、ディズニーランドや花火大会に連れていってもらったりした。

私の伯母は、超スーパー破天荒な人だったのだけど、ある日突然急死した。それがもう17年くらい前。

伯父はあれから17年くらいひとりで生活してた。住まいは近所だけど、わざわざ会うには近所すぎて、そこまで顔を合わせることがなかった。

その伯父が、急死した。最後に会ったのは、先月愛犬(殿)を天国へ見送った翌週、愛犬(若)のお散歩中に見かけたので声をかけた。

殿が18歳でついに亡くなってしまったよ、ほら、殿は伯母さんのことも知ってるんだよ!みたいな話をした。伯父は、俺ももうだめだ〜なんていつもみたいに冗談めいた感じで言ってた。

そう、あの日が最後だった。 

伯父が急死したのは愛犬が亡くなった日の、ちょうど一ヶ月後の日だった。


書類でいえば私とはもはや他人の伯父。いつも一緒に聞いていたお経も、本人の葬儀は別のお経だったし、よく考えたら当然なんだけどなんか不思議だ。他人なのだということを、今更ながらによく知った。私はとても悲しかった。

昨日の夜寝る前にふと、伯父がもわんと頭に浮かんだ。伯父はなんだかこう、とっても嬉しい、多分喜んでいる感じがした。

駆け落ち同然、すべての反対を押し除けて結婚したって聞いていたからすぐにその理由がわかった。ああきっと、伯母と会えたんだろうと思った。

伯父さん、よかったね。髪の毛もふさふさしたままだったし、私が最後に会った日も、シャツも前掛けも靴もピシッとしていたし、伯母が生きていた頃と変わらないままだったよ。また伯母と一緒に美味しいものをたくさん食べて、車でいっぱいお出かけしてね!

ずっと忘れないよ、大丈夫。感謝を込めて、あなたのsweetな姪っ子より 2024.7.30

 

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