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旧作杯Vol.3 観戦記事 決勝戦 龍之介 vs じんしん ~夢と現~

text by ふみ

龍之介というプレイヤーをご存じだろうか。

昨年末開催された旧作杯Vol.2の優勝者、即ちディフェンディングチャンピオンである。しかし彼の勇名はそれだけにとどまらず、これまでに2回行われた旧作杯、そしてヴィンテージで都合5回開催されている添削杯、そのうち6回まで決勝トーナメントに勝ち進み、今日は予選ラウンド堂々の1位という成績で7度目の「8人」に名を連ねてみせた。

勝利の報が入るたびに「本当に強いな……」端々からそのように語られるが、この強さこそがまごうことなき現実というやつである。


《Shahrazad》というカードをご存じだろうか。

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アラビアンナイト(千夜一夜物語)を時の王に語って聞かせる語り部に端を発するこのカード。その夢物語をM:tGの世界では以下のような能力で表してみせた。

Shahrazad (白)(白)
ソーサリー
プレイヤーは、それぞれのライブラリーを自分のデッキとしてマジックのサブゲームをプレイする。そのサブゲームに勝利できなかったプレイヤーはそれぞれ、自分のライフの端数を切り上げた半分を失う。

「サブゲーム」果たして聞きなれない言葉であるが、これはM:tGのルールにもしっかりと規定されている正式な用語。されどあまりに突飛であり、現状全てのフォーマットで(あのヴィンテージや、統率者戦すらも)使用が禁止されている数少ないカードのうちの1枚である。

それをこのOldSchoolの世界では使うことができる。そして「Shahrazad 使ってみたいよね」そのようによく口にはする。しかしながらおよそ現実的なものでもなくまさに夢物語であった。

今日じんしんが4枚搭載したデッキを持ち込むまでは。


夢想だにしなかった40人という大人数の参加者が集まって織り成された現実も開始からおよそ7時間が経過。夢と現実が交差する旧作杯決勝が今開幕する。


Game1

まずは龍之介が《沼/Swamp》《暗黒の儀式/Dark Ritual》から《Hymn to Tourach》でじんしんの《稲妻/Lightning Bolt》と《Black Lotus》を落とすことで決勝戦の号砲は鳴った。「Lotusは痛い」そのように呟くじんしんを見るにまずは出鼻をくじくことに成功した模様だ。

じんしんは《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》から《太陽の指輪/Sol Ring》。龍之介は、2枚目の《沼/Swamp》《Order of the Ebon Hand》とゲームを進めていく。

じんしん、2枚目の《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》を重ね先に置いたそれを3/3にして攻撃を通し、ダメージレースを優先する構えを取る。しかしながら龍之介も《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》で応じ、《Sinkhole》を差し向けることで、じんしんの思い通りには事を運ばせない。

更には《精神錯乱/Mind Twist》を使用し、《Timetwister》《解呪/Disenchant》《Chaos Orb》をじんしんの手札から奪い去る。

それでも《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》を前にして《Order of the Ebon Hand》は動けず、一方じんしんの《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》も身を立てたままで、一瞬の停滞が訪れる。

新たな手札を見て次の展開を悩む龍之介。まずは安全確保と《Hymn to Tourach》を選択すると落ちるのは《Serendib Efreet》。

前方の脅威は一旦見えなくなったため《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》を呼び出すが《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で退けられ、お互いに決勝までたどり着いた見事な引きを見せ合う。

バックアップを《黒騎士/Black Knight》に任せ、《Order of the Ebon Hand》への攻撃を命じるがこれは《稲妻の連鎖/Chain Lightning》で排除されることになり、再び膠着状態に。

それを打ち破ったのは再び龍之介。《露天鉱床/Strip Mine》を引き入れると
これで《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》破壊し遂に《黒騎士/Black Knight》の道が開ける。

《黒騎士/Black Knight》の前ではブロッカーの意味をなさない《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》に攻撃を命じるじんしん。しかし龍之介の場には《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》が残っている。当然除去があるかと思われるが、龍之介は受けて立つことを選択。果たしてじんしんがキャストしたのは《解呪/Disenchant》であった。

龍之介は《巨大戦車/Juggernaut》、返しでじんしんは《セラの天使/Serra Angel》と引き込み、この両者が相打ちとなると、《心霊破/Psionic Blast》で遂に《黒騎士/Black Knight》も死亡。

追い打ちとなる《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》には《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で取り除かれ、唯一残った《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》が戦場を駆ける。

といったところで、引き入れたカードを見たじんしんが計算を始める。そして徐に二つの白マナを生み出すと龍之介を夢の世界へと誘う。

《Shahrazad》が解決された

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現実世界が

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一転して夢の世界へ

両者のプレイマットがおきかわる。真っ白だったじんしんの世界が暗く闇のような世界へと移り変わる。龍之介の世界も応じて新しい景色が広がっているようだ。

実のところこの時点で龍之介のライフは14。サブゲームの戦いに勝利すれば7となる。2マナ7点火力。過去を見回してもここまで優良な火力は存在しない。


Game1 サブゲーム

ダイスロールにより先手となったじんしん(※ルールによりサブゲームはランダムで先手後手を決定する)は《Mox Sapphire》から《Tundra》。龍之介は《沼/Swamp》から《暗黒の儀式/Dark Ritual》で《Order of the Ebon Hand》。
  
じんしんは《露天鉱床/Strip Mine》で《沼/Swamp》を破壊すると、逆に龍之介は《露天鉱床/Strip Mine》で《Tundra》に差し向け、夢の中でも両者ともに全く譲ることはない。
  
じんしんは《稲妻の連鎖/Chain Lightning》で《Order of the Ebon Hand》を破壊すると、続けて《Serendib Efreet》を召喚。
すると一方の龍之介は《暗黒の儀式/Dark Ritual》から《Juzam Djinn》!

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ここは真に千夜一夜の物語。お互いに血肉を捧げながら現実世界に勝利して帰る道を模索し続ける。
     
じんしんは《Ancestral Recall》で手札を回復すると更なる《Serendib Efreet》も追加していく。毎ターン2点は決して楽ではないが、そこまでしなければ龍之介は倒せない。

龍之介からは《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》。
  
ぎりぎりのライフレース。龍之介の手が止まる。相手が除去手段、直接火力は何枚なのか。自身のマナをカウントし状況を確認する。

最終的に決断を下し《麻痺/Paralyze》でブロッカーに立てていた《Serendib Efreet》をタップさせると、全軍に攻撃を指示。

じんしんのライフは9、一方の龍之介のライフ7。

この時じんしんは手札に《剣を鍬に/Swords to Plowshares》と《心霊破/Psionic Blast》を抱えている。まさしくここが分水嶺。

じっくりと考え、改めて計算を行ったじんしんの選択は、麻痺している《Serendib Efreet》に《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を打ちライフを確保。そのうえで《心霊破/Psionic Blast》を龍之介に打ち込む。

これで龍之介のライフは7-4=3。
じんしんのライフは 9+3-2ー9=1……1?

じんしん、ここで痛恨のミス。自身の《Serendib Efreet》に捧げるべきライフが足りないことに気が付き……そして目が覚めた。

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まるで何もなかったかのようなあの日と同じ現実の光景。ただ一つじんしんのライフが半分になっているということを除けば。

いやもう一つ違うことがあった。現実で最強であった龍之介が夢の世界でも勝利を収めたという事実だ。

目を覚ました龍之介は一気にアクセルを踏み込む。《暗黒の儀式/Dark Ritual》《Hymn to Tourach》《Juzam Djinn》と3連打! 更には夢の世界に続き、現実でも《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を《麻痺/Paralyze》させる。

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「来いと命じれば来てくれる」そう《Juzam Djinn》のことを称した龍之介。今発する言葉は「行け」であろう

龍之介 1-0 じんしん


Game2

完全に勢いを掴んだ龍之介は、じんしんの《Volcanic Island》を《露天鉱床/Strip Mine》。そしてこれでは終わらずすぐに《Black Lotus》をセットすると、そこから《Hymn to Tourach》をキャスト。

マリガンを喫してしまっているじんしんから追加の土地と、逆転の一手となる《Tundra》と《天秤/Balance》を奪い取る。

「せめてどちらかが残っていれば」試合後じんしんはそう語ったが、龍之介が勝ちを収めてきたのはそのような甘さを残さなかったが故だろう。

じんしんも手札に残された《真鍮の都/City of Brass》をセットするのだが、これも即座に《露天鉱床/Strip Mine》で破壊されてしまい、更に《Order of the Ebon Hand》が目の前に降り立つ。

それでも《Volcanic Island》を引き入れることができたため《稲妻の連鎖/Chain Lightning》でこれ排除して見せるのだが、何事もなかったかのように2枚目の《Order of the Ebon Hand》が龍之介の旗下に加わる。

更に続くターンには3枚目の《露天鉱床/Strip Mine》と3枚目の《Order of the Ebon Hand》。

最早、龍之介の勢いが止まらない。じんしんの《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》は《麻痺/Paralyze》させられブロッカーの体もなさない。

必死に《稲妻/Lightning Bolt》《剣を鍬に/Swords to Plowshares》などで食い下がるのだが、1マナではできることには現実的に限りがある。

そして

龍之介、旧作杯二連覇達成!!

龍之介 2-0 じんしん