旧作杯Vol.4 観戦記事 ROUND5 夜陰 vs 龍之介 ~割るべきか、割らざるべきか~
text by いちごピザ
「ここで勝てば次IDできそうですね」
全勝同士のためこのラウンドを勝利すれば自動的にトップ8進出が決定する。このラウンドを軽んじているわけではないが、いやでもその先を意識してしまうのは人の性というべきものだろう。
何よりもこの発言は両者の自信の表れにほかならない。奇しくも同じアーキタイプを持ち込んでいることからもわかる通り、この黒いアグロデッキは自他共に認める勝ち組になっているのだ。
全勝街道をひた走る夜陰と龍之介のマッチアップを見ていこう。
Game1
即決した夜陰とは対照的にマリガンを悩む龍之介。後手番ということもあり初ターンから動ける手札を求めていたようだ。
夜陰は《Scrubland》からゲームを始め、龍之介は《露天鉱床/Strip Mine》で即応。続くターンに龍之介は《Mox Jet》から《Hymn to Tourach》をプレイして手札、マナともリードした形をつくる。
未だ動きがない夜陰を尻目《Order of the Ebon Hand》が着地する。《剣を鍬に/Swords to Plowshares》対策と名高いクロックの登場により、勝負は決まってしまっただろうか。
いや、ここまで全勝の夜陰がこのまま引きさがるわけがない。《暗黒の儀式/Dark Ritual》でブーストすると黒単にとって天敵である《Juzam Djinn》をプレイする。
起死回生の《Juzam Djinn》の登場により風向きは変わるように思えたが、それでもなお、今日の龍之介は勢いが衰えることはない。デーモンへ《麻痺/Paralyze》をエンチャントしてタップすると、序盤にセットしておいた《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》に活を入れて攻撃へと繰り出す。
流石に《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》は《剣を鍬に/Swords to Plowshares》して残ライフは14。プロテクションを持つ騎士は止まらず、寝かされてしまった《Juzam Djinn》の維持コストもあるため、夜陰のライフは見た目以上に危険域まで落ち込んでしまっている。
なんとか《Hymn to Tourach》で後続は落とすも、いかんせん盤面が止まらない。
淡々と繰り返される騎士の攻撃を前に、夜陰は膝をつくのであった。
夜陰 0-1 龍之介
Game2
手札破壊をケアして《Sol Ring》《Black Lotus》と設置しただけで夜陰がターンを終えると、龍之介は「農場(《剣を鍬に/Swords to Plowshares》)はやめて」と祈りつつ《Juzam Djinn》をプレイグラウンドへ。
夜陰は手早くプランをまとめると《強欲/Greed》をプレイ後、《Black Lotus》をクラック。生み出した黒マナは《Demonic Tutor》へと消費され、《Mox Pearl》と《天秤/Balance》が顔を見せる。残る手札は1枚だ。
この1ターンで龍之介はジンに加えて手札も3枚失ってしまう。《強欲/Greed》を設置された上で、だ。
2ターン目にして流石に勝負あったか、観戦している誰もがそう思った状況から龍之介は勝機を見出す。《露天鉱床/Strip Mine》で夜陰の黒マナを潰し、《強欲/Greed》が起動できないことにかけたのだ。
そして、このプランは功を奏す。引けども引けども黒マナが夜陰の元へ来ることはなく、あとは龍之介がクリーチャーを用意するだけ。どちらが先に求めるカードへと辿り着けるかのチキンレースの幕開けとなる。
ドロー、ゴーと三度繰り返したころだろうか、夜陰は念願の《沼/Swamp》を引き込み《強欲/Greed》の名のもとにドローを加速させていく。《黒の防御円/Circle of Protection: Black》を設置し、龍之介のクロックどころか自身の《Juzam Djinn》の維持コストすら軽減する盤石の体制を構築する。黒単アグロにこの状況を打開できるカードはあるのだろうか?
それは確かにあった。唐突に設置された《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk》は《解呪/Disenchant》をすり抜け、見事起動まで辿り着く。土地以外のすべてのパーマネントは流れ仕切り直しとなったのだ。
それでも《強欲/Greed》がもたらしたアドバンテージ差は確固たるものであり、夜陰は《強欲/Greed》を再設置しつつクリーチャーを送りだす。龍之介も追いすがるがやっとであり、勝機はないように思われた。
プランとドローはしっかりと噛み合い、夜陰がほぼゲームを手中に収めた矢先、信じられない場面に遭遇する。なんと残ライフ3で《Juzam Djinn》をプレイしたのだ。
《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》と合わせて7点クロックだが、龍之介のライフは15。攻撃へ向かうより早くジンの維持コストを支払う必要があるため、追加のクリーチャーがない限りは先に自身のライフが尽きてしまう。
間の悪いことに龍之介はジンへと《麻痺/Paralyze》をエンチャントし、マナを縛る。夜陰のマナは完全に封じられ、攻撃へ向かうも夜陰2-8龍之介とやはり1ターン足りない。こうなっては《黒の防御円/Circle of Protection: Black》か《剣を鍬に/Swords to Plowshares》など何かしらライフ回復手段が必要になって来るが…
次のターンに《Juzam Djinn》が起こされることはなく、夜陰はメインフェイズで6枚の土地をタップする。《Juzam Djinn》をプレイした時点でもっていたであろう1枚は黒を象徴するX火力、《生命吸収/Drain Life》。
この一手により戦況は逆転し、龍之介に必死をかけつつ延命に成功。かつての《ネクロポーテンス/Necropotence》を軸としてネクロさながら、《強欲/Greed》と《生命吸収/Drain Life》が勝負を決めた。
夜陰 1-1 龍之介
Game3
《Black Lotus》をいつクラックすべきかは、Old Schoolのおける命題の一つに違いない。早い仕掛けでクリーチャーを展開したとしても、除去されてはカウント的に損してしまうからだ。
ゲーム2において夜陰は手札破壊で捨てさせられないように設置しつつも、マナが整った状況でクラックし波状的に呪文をプレイし勝負を決めた。
「いつクラックすべきか」「何のためにクラックすべきか」は自分と対戦相手、双方に委ねられる。フェイタルな1枚の有無が勝敗を分けてしまう。
その上で。龍之介は《Black Lotus》をクラックし、開幕ターン目に《Juzam Djinn》をプレイしてみせたのだ!
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》、《黒の防御円/Circle of Protection: Black》と対策カードがあるのは百も承知だ。
『このデーモンで必ずビートダウンする』
龍之介の強い意志がこもった一手である。
気になる夜陰の動きは《Mox Pearl》から《Aeolipile》を置くのみ。《剣を鍬に/Swords to Plowshares》は…ない!
こうなれば龍之介の時間だ。土地を攻めつつ5点、また5点と規則的にダメージを積み重ねていく。
不運なことに夜陰は割られて以降黒マナが用意できず、後続の騎士を《Aeolipile》でいなすのみ。
結局最後まで《沼/Swamp》は引かれず、龍之介はデーモンによるビートダウンを完遂してみせた。
夜陰 1-2 龍之介
龍之介は全勝街道をひた走る!!