第四回限築杯(ゼンディカー=エルドラージブロック構築)環境デッキ紹介
序文
皆さん、MTGを代表するカードといえば、どんなカードを思い浮かべますか?
おそらく、真っ先に名前が上がるカードは《Black Lotus》でしょう。
MTGのシンボルともいえるカードで、おそらくMTGをプレイしてないプレイヤーでも、カードゲームプレイヤーであれば、多くの方に存在を知られるほどの有名なカードではないでしょうか。
今回注目したいのは、それと同じくらいの知名度があるであろうこのカード、通称『神ジェイス』こと《精神を刻む者、ジェイス》です。
長らく様々なフォーマットで活躍し、MTGの枠を超えて、別のゲームでも登場し、その強さで多くのMTGプレイヤーを惹きつけたプレインズウォーカー《精神を刻む者、ジェイス》。
その《ジェイス》が初めて登場したのが、『ゼンディカー=エルドラージ覚醒』ブロックの第二エキスパンション「ワールドウェイク」です。
登場後、その強大な力であまた数多の大会を席巻し、ついには当時のスタンダードで六年ぶりとなる禁止カードに指定されました。
スタンダード禁止後も、レガシー、ヴィンテージと下環境に活躍の場を移し、多くのプレイヤーにとって心強い相棒として、あるいは畏怖の対象として活躍を続けていた『神ジェイス』
しかし、近年では周囲のカードパワーの上昇により、かつてのような圧倒的な強さを見せる機会は少しずつ減り始め、その姿を見かけることが少なくなりました。
この度開催される第四回限築杯のフォーマットは、『ゼンディカー=エルドラージ覚醒ブロック』
つまり、《精神を刻む者、ジェイス》が登場した直後の、全盛期の環境ということになります。
みなさん、久々に『強い神ジェイス』使ってみたくありませんか?
『コントロール』
この時代のデッキの中で『神ジェイス』を採用したデッキは多いですが、特にその強さが際立ったデッキが、『青白コントロール』です。
キャントリップ付きの壁《前兆の壁》と、取り回しの良い除去である《未達への旅》は、序盤の攻めを凌いで安全な状態で《ジェイス》を着地させるのに役立ちます。
《審判の日》は、全体除去の代表《神の怒り》のほぼほぼ相互互換で、《前兆の壁》や《未達への旅》で支えきれなくなった戦線をリセットし、「更地にジェイス」という盤石の状況を作ることができます。
《取り消し》は、対象範囲が限定されていない確定カウンターと便利な打消し呪文です。
確定カウンターはやはり安心感が違い、これを握っているだけで除去呪文では対応できないような能力を持ったクリーチャー、PWやインスタント/ソーサリー呪文とどんなカードでもシャットアウトできます。
上記のカードたちは、どれも《ジェイス》への攻撃を防ぎ、その強力な忠誠度を振るうのを手助けするカードたちですが、このデッキで最も《ジェイス》の力を発揮させてくれる、ベストパートナーといえば、やはりこの《ギデオン・ジュラ》でしょう。
+2で入ることで忠誠度8という堅固さを誇り、さらにその能力は相手のクリーチャーの攻撃を全て《ギデオン》向けるという《ジェイス》の脆さをカバーする能力となっており、-2能力もタップ状態のクリーチャー破壊というコントロール向けの能力、0能力で6/6のクリーチャーとなってフィニッシャーを務めることができるなど、このデッキにうってつけのテキストを持っています。
このコンビを使ったことがない方は、ぜひ《ジェイス》と並べてその強さを実感してください。
このセットで収録され、その後モダンで長く使われるようになった「ミシュラランド」の一角、《天界の列柱》も忘れてはいけない重要なカードです。
タップインながら2色を自由に出せる土地で、5マナ支払うことでターン終了時まで4/4飛行警戒と《セラの天使》相当のカードになります。
どうしても攻めるカードよりも守りのカードを中心に構築したいコントロールデッキにとって、土地の枠に入れられることでスロットを温存できて、かつマナを使わずに盤面に出すことができ、カウンター呪文やソーサリー除去で妨害される危険がない性質を持つ「ミシュラランド」は、非常に相性が良い採用率の高いカードたちとなっています。
この《天界の列柱》は、クリーチャー化した際に警戒を持っている点が意外と重要で、攻撃に行きながらも相手ターンにマナを構えて対応することができる点も、コントロールデッキにあったカードといえるでしょう。
『ランプ』
MTGを代表するカードといえば《BlackLotus》、そしてそれに次ぐ知名度のカードとして《精神を刻む者、ジェイス》と紹介しましたが、実はこのブロックにはもう一枚、MTGの枠を超えて知られるほどの人気カードが生まれていました。
登場から十数年の時がたった今もなお、レガシーで使われているこのカード、皆さんご存じ《引き裂かれし永劫、エムラクール》です。
打ち消されない、唱えたときに追加ターン、プロテクション(有色の呪文)、滅殺6、そして相手を一撃で葬り去る15/15というサイズ。
どれをとっても圧倒的な性能を誇るMTG最高峰のフィニッシャーです。
レガシーでは《実物提示教育》や《騙し討ち》のようなカードで踏み倒して出てくる姿が多いですが、そういったカードがないブロック構築では、15マナのカードともなると使うのが難しいカードに見えますが、実際はそうでもありません。
このブロックではマナ加速カードが多く、エルドラージ専用のマナ加速サポートがあるため大量のマナを用意し、大型クリーチャーを叩きつけるようなランプデッキに採用されています。
《エムラクール》が出れば勝利は目前ですが、流石に15マナとあっては、マナ加速があっても出すのは容易ではありません。
しかし、このデッキでは《エムラクール》の他にも、二柱のエルドラージ神が投入されており、それぞれが《エムラクール》までは届かないときでも、その作り上げた莫大なマナを注ぎ込めば勝利に導いてくれることが多々あります。
どちらも二桁サイズのP/Tと滅殺4を持つため、攻勢に回れば一瞬で相手を壊滅させることができます。
《コジレック》は10マナと比較的お求めやすいマナコストになっているため、プレイできる機会は多いでしょう。
除去耐性は持っていない点が不安ですが、唱えるだけで4ドローがついてくるのが強力なのもあって4枚フル投入されています。
《ウラモグ》はパーマネント破壊と破壊不能がついているのが強く、《エムラクール》に次ぐフィニッシャーとして使われます。
これらのエルドラージクリーチャーを出すことができれば、かなり勝ちに近づくと思うのですが、勿論そこまでノーガードではマナが出そろう前に負けてしまうでしょう。
このデッキはそうならないようにマナを伸ばしながら攻撃を耐えるようなカードたちが採用されています。
《草茂る胸壁》は0/4の壁として序盤を耐えるのに使える上、最低1マナ、防衛の数だけなので並ぶと倍々でマナが加速する、かなり優秀なカードです。
《成長の発作》《コジレックの捕食者》は0/1の落とし子トークンを出すことができ、それらはブロックに回すことも、生贄にして大型エルドラージを出すのに使うこともできます。
また、《捕食者》は3/3とクリーチャーとしてもまずまずの性能であることや、エルドラージサポートを受けることができる点も優秀です。
不利な盤面を全て塵に返すことができるリセット呪文、《全ては塵》も優秀です。
パーマネント全てリセットなのでエンチャントやプレインズウォーカーもろとも巻き込める破壊力はすさまじいものがあります。
7マナと多少重めですが、このスペルもエルドラージ呪文であること、このデッキはマナ加速がふんだんに積まれていることを考えると、そこまで困ることは少ないのではないでしょうか。
これだけ重いこのデッキが成り立っているのはこれらエルドラージサポート能力を持った実質2マナランドの存在も大きいでしょう。
特に《ウギンの目》は1枚刺しの《エムラクール》《ウラモグ》をサーチでき、また大型エルドラージクリーチャーは墓地に行くとライブラリーに帰る能力を持っているので何度でもサーチして唱え直すことができるようになる強力な土地になります。
マナ加速カードではありませんが、《地盤の際》も隠れた名カードです。
相手の土地が4枚以上の時に生け贄にすることで特殊土地が割れる調整版《不毛の大地》で、《ウギンの目》や《天界の列柱》をはじめとしたミシュラランドを除去するのに役立ちます。
『アグロ』
この『ゼンディカー=エルドラージ覚醒』ブロックは『部族』がテーマになっています。
先のエルドラージがかなり目立っていますが、それ以外の部族もシナジーがある良カードが多く存在し、例えばゼンディカー特有の部族「同盟者」には《ハーダの自由刃》《カザンドゥの刃の達人》など優秀なウィニークリーチャーがあるため、軽量クリーチャーを展開し、最後に《精霊への挑戦》によってフィニッシュする速攻デッキなどが存在しました。
また、二種類の1マナ2点クロックによる速攻を仕掛けられる速さに加え、《マラキールの門番》《カラストリアの貴人》《吸血鬼の夜鷲》といった優秀な能力を持ったクリーチャーたちの存在により、広いゲームレンジにも対応できる吸血鬼デッキなども部族デッキとして活躍しました。
しかし、アグロデッキで最も活躍したのは『部族』と共にブロック単位でサポートされたシステム『上陸』デッキではないでしょうか。
《ステップのオオヤマネコ》《板金鎧の土百足》といった二種類の上陸クリーチャーは、大量のフェッチランドのサポートにより4点、5点とマナコストに似合わぬ強烈な打点をたたき出せます。
このブロックは火力も優秀なものがそろっており、中でも《噴出の稲妻》《焼尽の猛火》などは相手のライフ一桁になるや射程圏というようなダメージが出せます。
また、サンプルのデッキでは《バジリスクの首輪》+《狡猾な火花魔道士》のコンボが内蔵されており、二枚がそろうとどんな大きなサイズのクリーチャーであっても『接死ティム』コンボによって葬り去ることができます。
《バジリスクの首輪》はコンボ以外の用途では効果が薄く、重ね引きしたくないですが、《石鍛冶の神秘家》からサーチすることで1枚刺しにでき、このデメリットを解消できます。
『ミッドレンジ』
『ゼンディカー=エルドラージ覚醒』ブロック構築はプロツアーでも採用されたフォーマットですが、その優勝デッキはここまで紹介した全てのデッキの良いところどりをしたような、《ジェイス》『ランパン戦略』『優秀な火力呪文』を全てが入ったRUGデッキでした。
《水蓮のコブラ》とフェッチランドのシナジーが強力で、一時的ですが、かなりのマナが出せるため、中盤のターンでも《失われた真実のスフィンクス》キッカーで唱えたり、《ジェイス》を展開しながらカウンターや除去を打つ、といったビッグアクションも可能になります。
トップから土地を置ける《ムル・ダヤの巫女》は《ジェイス》との相性が抜群で、《ジェイス》の+0で手札の土地をデッキトップに戻し、その土地を置くことで《ジェイス》のタダで打てる《渦まく知識》を、タダで打てる《Anccestral Recall》までに昇華できます。
もちろん、前述の《水蓮のコブラ》、フェッチランド各種とも相性がいいカードです。
採用されている除去呪文は、《炎の斬りつけ》と《彗星の嵐》です。
クリーチャーにしか飛ばないものの、1マナの軽さで4点のダメージを与えられる《炎の斬りつけ》はコントロールデッキでは重宝します。
また、《彗星の嵐》はかなりマナを消費しますが、複数体処理できるX火力なので、全体除去がない、非白のロングゲームデッキとしては採用したいところです。
幸いマナが出しやすいデッキであるため、複数体除去呪文としての利用も、ある程度期待できそうです。
このカラーで採用されるミシュラランドは《怒り狂う山峡》です。
攻撃するたびに成長する上に最初に殴ったときで4/4から始まるので《天界の列柱》と並んでモダンで使われたミシュラランドです。
格闘向きでないカードが多いこのデッキではフィニッシャーを務める機会が多そうです。
まとめ
『ゼンディカー=エルドラージ覚醒』ブロックはでた当初はかなり強いブロックという印象で、実際、下環境にも影響を与えたカードは本当に多く、皆さんも馴染みの深いカードがいくつもあったのではないでしょうか。
デッキの種類も豊富で、土地基盤も多色化しやすいので、構築する楽しさと懐かしさが味わえる良い構築環境だと思います。
もし、これらのカードと共に遊んできたものの、最近はファイルにしまっていたな、久しぶりに使いたいなと思った方はぜひ『ゼンディカー=エルドラージ覚醒』ブロック構築、遊んでみませんか?