旧作杯Vol.4 観戦記事 ROUND3 - tetsu VS MasaH ~天使の舞い降りる刻~
Reported by とけいまわり
Prelude
《セラの天使/Serra Angel》。
美しい。
Douglas Schuler氏によるその凛々しく美しいイラストとともに、MtG黎明期を代表するカードとして一世を風靡。特に初期においてはThe Deckの象徴として君臨し、実にスタンダード在籍18年6か月という記録を持つ、名実ともにMagic; the Gatheringの顔である。
Duelist Japanの朱鷺田祐介氏の『帰還せし「彼女」~天使の伝説』が記憶に残る諸兄も少なくないだろう。
昨今はクリーチャーのインフレが進み、現存末期のスタンダードではほとんど見られなかったが、それでもリミテッドで遭遇するとその圧倒的な支配力に舌を巻くプレイヤーも多かった。
彼女の持つ"Does not tap when attacking."(後期は"Attacking does not cause to Serra Angel to tap.")の一文はやがて「警戒」というキーワード能力になったが、この攻防一体の能力が彼女由来のものであることは自明であった。
「警戒」実装初期は「ん?この警戒って何?」「セラ天能力だよ」という会話も少なくなかった記憶がある。
相手を圧倒しながら、自らを守る盾としてプレインズウォーカーの傍らに聳える守護の天使。こと、Old Schoolにおいても圧倒的な存在感を放ち続けている。
さて、今回2-0ラインからROUND3、お送りするtetsuとMasaHの1戦は、彼女をめぐる戦いとなった。熱戦の模様をお届けしよう。
Game 1
機材トラブル等の関係で開始が少々遅れたが、無事開始。MasaHの先手でスタート、両者7枚をキープ。
――刹那、雲間から一条の光が射した。
先手のMasaHは《Tundra》《Mox Pearl》《Black Lotus》をよどみなく置くと、すべてのマナ能力を起動して開始1Tで《セラの天使/Serra Angel》!
白く羽ばたく翼から舞い散る羽とともに、圧倒的な守護者がMasaHの戦場に、舞い降りる。
美しい。
あまりの唐突な天使の出現に息を呑み見惚れたか、返すtetsuは《Badlands》を置くのみ。
ここから天使が、主を勝利へと導く路を紡ぎだす。攻撃により4点を与えるが、追加のアクションはなし。返しに天使をどうにかしたいtetsuだが、《露天鉱床/Strip Mine》で《Tundra》を割るのみで、天使には触れられない。(「天使にふれたよ」? 触れられる人間など、一部の選び抜かれた人間に過ぎない。)
続くターンも攻撃を受け、その返しでも《Badlands》2枚目を置くのみと厳しい展開。その後も《セラの天使》は手を休めることなく主のために攻め続ける。
度重なる攻撃により、tetsuの残りライフが4まで落ち込む。とはいえMasaHは5ターン目に《Sol Ring》を追加するのみで、ここまで追加のアクションは取れていない。
5ターン目の返し、ようやくMasaHが動く。《島/Island》を追加し《セレンディブのイフリート/Serendib Efreet》。強力なマナレシオのクリーチャーではあるが、彼のスタッツは3/4。4/4の《セラの天使》の攻撃を受けられないtetsuはやむなく彼をチャンプブロックに回さざるを得ない。
2体目の《セレンディブのイフリート》を追加したが、ここでMasaHが抱えた手札を解き放つ。《剣を鋤に/Swords to Plowshares》。精霊に戦いをやめるよう説くと、すごすごと、天使の進む道を明け渡す。
精霊はtetsuに幾ばくかのライフを提供した(残り7)が、、天使の5回目のアタックで残りライフが3。《真鍮の都/City of Brass》を置き、しかしマナはそこから出さずに《Chaos Orb》を戦場に繰り出す!
すぐさま天使にご退場願うためこれはすぐ起動されたが、起動に対応しMasaHからは《解呪/Disenchant》! しかしこれに《真鍮の都》からの《Mana Drain》で応じる(残りライフ2)。
かくて《Chaos Orb》は解決され、天使の勝利への道はラストワンマイルで閉ざされた――に見えた。
tetsu「ふう……ではターン終了で」
MasaH「あの……第2メインフェイズの《Mana Drain》の2マナは?」
Old School特有のヒストリカルなルール「マナバーン」。これが無情にも、tetsuが必死に残した生命の一破片を削り取る。
これも天使のお導きか。
tetsu 0-1 MasaH
Game 2
tetsuにカード効果の勘違いがあり意図しない幕切れとなったとはいえ、基本は先手1ターン目の《セラの天使》が圧倒したGame1。しかしtetsuのデッキにも十分彼女への応手はあり、ドローに恵まれなかった点は実に惜しい。こんどはtetsuの先手、両者7枚キープでゲームはスタート。
tetsuは《真鍮の都》から《Sol Ring》。返しのMasaHも後手ドローから《Library of Arexandria》で追加ドロー、《Mox Emerald》を置いて終了と両者悪くないスタート。
しかしtetsuは《露天鉱床》で《Library》を、《粉砕/Shatter》で《Mox Emerald》を破壊し、相手の戦場に跡形も残さない。これに応じる形でMasaHも《露天鉱床》で《真鍮の都》を割り、両者譲らない構え。
ここでtetsuのマナソースが止まってしまう。MasaHは3ターン目も《露天鉱床》を置き、相手の土地をワンタイムしか許さない構えをとる。
次のターンも土地を置かずターンを返すtetsuとは対照的に、MasaHは4ターン目に《Tundra》を置き順調にマナを伸ばしていく。
5ターン目にMasaHが動く。自身への《Ancestral Recall》で手札を補充、《Mox Jet》《Sol Ring》と一気に展開。手札はなおも8枚となり、クリンナップステップに余剰手札を捨てる充実ぶり。
返しのターンでようやくtetsuも土地を引き込むが、《露天鉱床》がある以上、長くはもたない。
MasaHは攻め時と見たか、ようやく《セレンディブのイフリート》を追加。守護の精を戦いへと送り込む。続けざま、相手のアップキープに《露天鉱床》で相手の唯一の土地を攻める。tetsuはこれに対応で青マナを捻出しながら《Ancestral Recall》で手札を補充。そのまま《Black Lotus》からの《Time Walk》、《心霊破/Psionic Blast》で《イフリート》を対処しながら追加ターンを得るも、動きはここまで。
MasaHの2枚目《セレンディブのイフリート》は《心霊破》の2枚目で対処、2戦連続のマナトラブルから盤面を保ち、なんとか均衡を保つ。tetsuはさらに、MasaHの《Underground Sea》を《Chaos Orb》で破壊、相手の動きをけん制すると、MasaHも手が止まる。
攻め手不足を懸念したMasaHは、《回想/Recall》X=1で手札の《対抗呪文/Counterspell》を《Ancestral Recall》に変換、アドバンテージで優位に立つ作戦をとる。《Underground Sea》の破壊が功を奏して、同一ターンでのキャストは未然に防いだ。
ここで得た幾ばくかの猶予時間。しかしリミットが迫るtetsuは本体に《稲妻/Lightning Bolt》を打ちながら《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》を送り込みクロックを突き付ける。
返しのMasaHの《精神錯乱/Mind Twist》X=3に対応して、tetsuは意を決して《稲妻》《心霊破》で相手の残りライフを10まで落とし込むと、手札を失いつつ返しのターンで《ミシュラの工廠》による追加攻撃。遂に相手のライフは一桁に。tetsuが細い糸を手繰るように、一つずつ勝利への道を突き進む。
――はずだった。
MasaHは《Tundra》セットから、満を持して《セラの天使》!
またも天使が舞い降り、組立作業員たちの行方を阻む強大な護りとなる。
これにはtetsuも渋い顔。《空飛ぶ男/Flying Man》を追加するのみでターンを返す。
度重なる《心霊破》や《真鍮の都》で既にtetsuのライフも11まで落ち込んでおり、《天使》の攻撃でライフは7まで落ち込む。「攻撃に参加してもタップしない」彼女がここまで盤石とは。
意を決してtetsuは《ミシュラの工廠》と《空飛ぶ男》を攻撃に送り込む。逡巡の上、守護者の《セラの天使》に守りの指令を――出さない!? MasaHのライフは残り5となり、ターンが返ってくる。
実はここまで3枚の《心霊破》を使っているMasaH、手札には3枚目の《稲妻》が。どちらかをブロックしてもらえれば、火力との合わせ技でご退場いただく算段だったが――
かくて天使は返す剣でtetsuのライフを3まで落とし込む。天使に圧倒される戦場に、しかしMasaHの手札には悪魔さえ潜んでいた。
古来より幾度となく繰り返されたであろう、天使と悪魔の結託。
MasaHの《悪魔の教示者/Demonic Tutor》からの《Time Walk》を見届けると、tetsuは天使の剣に切り裂かれる自身の姿を浮かべ、投了を宣言した。
tetsu 0-2 MasaH