ウルザブロック構築環境デッキ紹介
はじめに
この記事では5/14(日)に開催される限築杯(ウルザブロック構築)に向け、過去のグランプリで結果を残したデッキのリストやそのデッキの動きなどを紹介していきたいと思います。
1.青茶単(グランプリ九州99 優勝)
メインデッキ (60)
クリーチャー (7)
2 変異種/Morphling
2 パリンクロン/Palinchron
3 マスティコア/Masticore
呪文 (27)
4 無効/Annul
4 巻き直し/Rewind
4 天才のひらめき/Stroke of Genius
3 不実/Treachery
1 撤回/Rescind
4 魔力消沈/Power Sink
4 厳かなモノリス/Grim Monolith
3 スランの発電機/Thran Dynamo
土地 (26)
14 島/Island
4 枯渇地帯/Blasted Landscape
4 フェアリーの集会場/Faerie Conclave
4 離れ島/Remote Isle
サイドボード
3 断絶/Snap
3 冬眠/Hibernation
2 鎮圧/Quash
2 消火/Douse
2 軽快なリフレイン/Lilting Refrain
2 時間の名人/Temporal Adept
1スランの鋳造所/Thran Foundry
まず初めに紹介するのはグランプリ九州99で優勝した環境の王者『イタリックブルー』とも呼ばれる青茶単。
この時代の青デッキといえば対抗呪文に代表される打ち消し呪文を大量に投入した「防御的」な構成が一般的だったが、このイタリックブルーは打ち消し呪文の量が少なくなった代わりに《厳かなモノリス》《スランの発電機》といったマナ・アーティファクトから《マスティコア》や《パリンクロン》といったフィニッシャーを早期に着地させることのできる従来のデッキより前のめりな構成になっている。
特に《マスティコア》は戦場に出てしまうと再生能力から排除することが非常に難しく、タフネスが低いクリーチャーは生存権を奪われてしまうため、対戦相手は否応なくこれへの対処が求められる。
マナアーティファクトによる《マスティコア》の早期定着と盤面制圧のためのマナ供給、目減りした手札を回復するための《天才のひらめき》、対戦相手のそれを奪い取る《不実》。
これらを併せ持ったイタリックブルーは前述したように時の王者となったのである。
下地がコントロールデッキなので基本的にはコンボデッキのような大振りなデッキには有利で速攻デッキを苦手としているが、サイドボードからは《火薬樽》や、さらに人によっては《エネルギー・フィールド》といったカードが投入されるためかなり序盤を耐えやすくなっている。
2.スーサイド・ブラック(オスロ予選優勝)
メインデッキ (60)
クリーチャー (18)
4 走り回るスカージ/Skittering Skirge
4 貪欲なるネズミ/Ravenous Rats
2 ファイレクシアの食屍鬼/Phyrexian Ghoul
4 ギックスの僧侶/Priest of Gix
4 ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator
呪文 (23)
4 暗黒の儀式/Dark Ritual
2 発掘/Unearth
4 強迫/Duress
2 汚染/Contamination
3 抹殺/Expunge
4 よじれた実験/Twisted Experiment
4 隠れ潜む邪悪/Lurking Evil
1 汚れ/Befoul
土地 (20)
18 沼/Swamp
2 ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower
サイドボード
2 撲滅/Eradicate
2 村八分/Ostracize
2 発掘/Unearth
2 急速な衰微/Rapid Decay
2 汚染/Contamination
2 仕組まれた疫病/Engineered Plague
3 骨砕き/Bone Shredder
環境最速のデッキ、スーサイドブラック。《暗黒の儀式》から《肉裂き怪物》《走り回るスカージ》《ファイレクシアの抹殺者》《隠れ潜む邪悪》など強烈なデメリットと引き換えに爆発的なスペックを持ったクリーチャーを展開。デメリットによる被害により自分がつぶれる前に相手を倒すというコンセプトはまさにデッキ名通りのスーサイド(自殺)というところ。
アグロデッキというよりはむしろコンボデッキに近いような動きで、うまくいけば相手に何もさせずに数ターンのうちに勝てるが、かみ合わせが悪いとすべてを失って敗北する、というリスキーなデッキ。
歴代でも最高クラスのハンデス呪文《強迫》や、強力なロックエンチャント《汚染》などのサポートスペルをうまく使えるかがこのギャンブルを成功させるカギといえるだろう。
ただし、黒単という不器用な色の性質上サイドボードによってできることがかなり限られてしまうという痛い欠点がある。
3.緑単ストンピィ(グランプリ九州99 第7位)
クリーチャー (24)
4 エルフの抒情詩人/Elvish Lyrist
4 飛びかかるジャガー/Pouncing Jaguar
4 野生の犬/Wild Dogs
4 ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary
4 ティタニアの僧侶/Priest of Titania
4 アルビノ・トロール/Albino Troll
呪文 (16)
4 怨恨/Rancor
4 共生/Symbiosis
4 樫の力/Might of Oaks
4 すき込み/Plow Under
土地 (20)
17森/Forest
1 ヤヴィマヤのうろ穴/Yavimaya Hollow
2 樹上の村/Treetop Village
サイドボード
2 スランの鋳造所/Thran Foundry
4 ウェザーシード・エルフ/Weatherseed Elf
3 ふくれたヒキガエル/Bloated Toad
2 ムルタニの命令/Multani's Decree
3 ガイアの抱擁/Gaea's Embrace
1 木っ端みじん/Splinter
先のスーサイド・ブラックにも負けずとも劣らない速度を持つ緑単アグロデッキ「ストンピィ」。
《野生の犬》《飛びかかるジャガー》という2種類の1マナパワー2クリーチャーに超強力オーラエンチャント《怨恨》を付与し、2ターン目からパワー4トランプルクリーチャーによるビートダウンを行えるのが何よりの強み。
さらに《共生》《樫の力》といったパンプ呪文の存在が《怨恨》付生物の突進をさらに強力に後押しし、デッキ名の『ストンピィ(踏みつける)』の由来にふさわしい突破力のある動きを見せてくれる。
タフネス1の地上クリーチャーが中心のため、環境を代表するカード《マスティコア》をかなり苦手としているため、サイドボードには根こそぎ除去できる《木っ端みじん》やサイズアップと再生効果を付与できる《ガイアの抱擁》などの対策がとられることがある。
4.リス対立(グランプリ九州99 準優勝)
クリーチャー (23)
2 エルフの抒情詩人/Elvish Lyrist
2 心の管理人/Heart Warden
4 ティタニアの僧侶/Priest of Titania
4 ヤヴィマヤの農夫/Yavimaya Granger
2 ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder
4 錯乱した隠遁者/Deranged Hermit
2 マスティコア/Masticore
3 変異種/Morphling
呪文 (13)
4 対立/Opposition
2 不実/Treachery
1 天才のひらめき/Stroke of Genius
4 無効/Annul
2 魔力消沈/Power Sink
土地 (24)
4 樹上の村/Treetop Village
8 島/Island
10 森/Forest
2 フェアリーの集会場/Faerie Conclave
サイドボード
1 平地/Plains
3 絶対の法/Absolute Law
2 断絶/Snap
1 鎮圧/Quash
1 魔力消沈/Power Sink
1 不実/Treachery
2 マスティコア/Masticore
1 調和ある収斂/Harmonic Convergence
1 ムルタニの命令/Multani's Decree3
2 木っ端みじん/Splinter
一度にトークン4体を生成する強力なEtB能力を備えた《錯乱した隠遁者》と、クリーチャーをタップすることで相手をロックできるエンチャント《対立》を組み合わせたデッキ「リス対立」。
キーカードを両方引かずともマナクリーチャーから《錯乱した隠遁者》による高速ビートダウン、マナクリーチャー+《マスティコア》による盤面制圧、マナクリーチャー+《対立》によるロックなど色々な組み合わせのシナジーがあり、さらにそのシナジーをバックアップするカウンター呪文も備えたウルザブロックの強いとこ詰め合わせデッキ。
ただ《ヤヴィマヤの古老》《ヤヴィマヤの農夫》という土地サーチクリーチャーがいるとはいえ二色土地がない環境柄土地基盤が弱い点には注意。
また、クリーチャーが緑の軽量クリーチャーで固められているためストンピィ同様《マスティコア》には滅法弱い。きちんとカウンターを合わせる、あるいは出される前にロックできるような立ち回りが必要になりそうだ。
5.エンチャントレス(アトランタ予選優勝)
メインデッキ (60)
クリーチャー (15)
4 アルゴスの女魔術師/Argothian Enchantress
2 カブトガニ/Horseshoe Crab
4 ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder
2 錯乱した隠遁者/Deranged Hermit
3 変異種/Morphling
呪文(23)
3 踏査/Exploration
4 仮装の歩哨/Veiled Sentry
4 肥沃な大地/Fertile Ground
4 軽快なリフレイン/Lilting Refrain
4 対立/Opposition
2 不実/Treachery
2 魔力消沈/Power Sink
土地 (22)
4 樹上の村/Treetop Village
2 スランの採石場/Thran Quarry
6 森/Forest
9 島/Island
1 沼/Swamp
サイドボード
4 無効/Annul
3 消火/Douse
4 仕組まれた疫病/Engineered Plague
2 鎮圧/Quash
2 不実/Treachery
ウルザブロックがエンチャントがテーマのブロックである恩恵を存分に生かし、《アルゴスの女魔術師》で優秀なエンチャントを連打してアドバンテージにつなげ優位を築くコンセプトのデッキ。
今回取り上げたデッキは《対立》を活かしたデッキでリス対立とのハイブリッドのような構成になっているが、一方で《ヤヴィマヤの女魔術師》を中心にした攻撃的なデッキ、補充とハイブリッドしたコンボデッキなど自由度が高い。
ウルザブロックでは被覆の《アルゴスの女魔術師》を処理する手段が少なく、最速で出すことができればかなりのアドバンテージが見込めるだろう。
また、この《アルゴスの女魔術師》の生存能力を見込んで《スランの採石場》が採用されることが多い。
エンチャントレスのほとんどは多色デッキであるため、やはり土地基盤に不安がある。
特にマナ・クリーチャーを採用していないため《なだれ乗り》などの土地破壊カードは鬼門であり《肥沃な大地》付きの土地を割られたときなど目も当てられないことになる。
6.ピットサイクル(ニューヨーク予選優勝)
メインデッキ (60)
クリーチャー (11)
4 アカデミーの学長/Academy Rector
3 レイディアントの竜騎兵/Radiant's Dragoons
4 スカージの使い魔/Skirge Familiar
呪文 (26)
4 ギックスのかぎ爪/Claws of Gix
4 厳かなモノリス/Grim Monolith
4 暗黒の儀式/Dark Ritual
4 ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain
4 死体発掘/Exhume
2 ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will
4 魂の饗宴/Soul Feast
土地 (23)
8 平地/Plains
10 沼/Swamp
1 スランの採石場/Thran Quarry
4 ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower
サイドボード
1 強迫/Duress
4 ファイレクシアの抹殺者/Phyrexian Negator
3 急速な衰微/Rapid Decay
3 解呪/Disenchant
4 要撃/Waylay
最も美しいコンボデッキ、と形容されることもあるチェイン系コンボデッキ。
《暗黒の儀式》《厳かなモノリス》といったマナブーストカードや《アカデミーの学長》の死亡誘発能力によりライブラリーから《ヨーグモスの取り引き》を高速で戦場に出すことが出来たらコンボスタート。
ライフを手札に変換し《スカージの使い魔》で手札をマナに変換、《魂の饗宴》により相手に4点与えつつ自身のライフを4点回復、その回復したライフをまた手札に変換・・・・最終的に《ヨーグモスの意思》で墓地から使い終わった《魂の饗宴》で相手に止めを刺す。
また、途中で《魂の饗宴》を引けずライフが尽きそうになった時には《スカージの使い魔》で捨てた《レイディアントの竜騎兵》を《死体発掘》で釣ることでライフを供給することができる。
いったんコンボが始動したら止めることが困難なため、《ヨーグモスの取り引き》を出させない、あるいは《ヨーグモスの取り引き》で十分なドローができないようにライフを早急に削るというのが基本的な対策になる。
サイドボード後であれば《秘儀の研究室》で機能不全に陥らせたり墓地対策カードにより回復手段を止めるなどが効果的である。
7.スニーク・アタック(グランプリ九州99第5位)
メインデッキ (60)
クリーチャー (20)
4 ヤヴィマヤの農夫/Yavimaya Granger
4 アカデミーの学長/Academy Rector
3 ウェザーシード・ツリーフォーク/Weatherseed Treefolk
1 シヴのフェニックス/Shivan Phoenix
4 火口の乱暴者/Crater Hellion
2 オーラ泥棒/Aura Thief
2 茨の精霊/Thorn Elemental
呪文 (18)
4 厳かなモノリス/Grim Monolith
2 肥沃な大地/Fertile Ground
2 睡蓮の花/Lotus Bloom
4 騙し討ち/Sneak Attack
1ギャンブル/Gamble
1 崇拝/Worship
3 よりよい品物/Greater Good
土地 (22)
3 ファイレクシアの塔/Phyrexian Tower
7 森/Forest
9 山/Mountain
1 平地/Plains
サイドボード
1 小休止/Lull
2 湯焼/Scald
2 オーラ泥棒/Aura Thief
1 マスティコア/Masticore
2 調和ある収斂/Harmonic Convergence
4 ケルドの蛮人/Keldon Vandals
2 断層/Fault Line
スニーク・アタックはその名の通り《厳かなモノリス》《アカデミーの学長》から《騙し討ち》をサーチし、手札にあるクリーチャーを踏み倒して相手を倒すコンボデッキ。
今回取り上げるデッキは《ウェザーシード・ツリーフォーク》と《よりよい品物》のコンボを内蔵した形のデッキだが、ほかにも《セラのアバター》や《ファイレクシアの巨像》といった大型クリーチャーを出し《血まなこのサイクロプス》で投げつけて一気に勝つタイプもある。
《騙し討ち》への依存度が高く打ち消しデッキには弱いため今回のデッキのようにハードキャスト可能なマナコストのクリーチャーを採用する、あるいは《補充》によって再度着地のチャンスを狙うなどの手段を用意することがある。
《火口の乱暴者》のリセット能力が高いためいったん《騙し討ち》さえおければ不利な盤面からも巻き返しやすい。
8.青赤コントロール(PTニューヨーク第6位)
メインデッキ (60)
クリーチャー (11)
4 なだれ乗り/Avalanche Riders
4 火口の乱暴者/Crater Hellion
2 変異種/Morphling
1 ヴィーアシーノの異端者/Viashino Heretic
呪文 (23)
3 弧状の稲妻/Arc Lightning
4 疲労困憊/Exhaustion
2 断層/Fault Line
3 誤算/Miscalculation
4 乾燥/Parch
2 魔力消沈/Power Sink
2 撤回/Rescind
3 ギックスの指輪/Ring of Gix
土地 (26)
4 フェアリーの集会場/Faerie Conclave
4 ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment
8 島/Island
10 山/Mountain
サイドボード
2 無効/Annul
4 秘儀の研究室/Arcane Laboratory
1 冬眠/Hibernation
3 溶融/Meltdown
2 天才のひらめき/Stroke of Genius
3 ヴィーアシーノの異端者/Viashino Heretic
冒頭の青茶単とは違い本来の防御寄りの青系コントロールデッキ。
リス対立、緑単ストンピィなどタフネスの低い横並びデッキには火力で、遅めのデッキに対しては《なだれ乗り》や《ギックスの指輪》による時間稼ぎ打ち消し呪文で対応し、盤面をコントロールしたら《変異種》か《フェアリーの集会場》または《ギトゥの宿営地》のビートダウンによって勝つ。
環境の顔となっているようなとびぬけたパワーのカードはないが対応力が高く多くのデッキに渡り合えるデッキとなっている。
余談ではあるが今回開催される限築杯では当時と異なりダメージスタックがなくなっているため、《変異種》のP/T変更効果によるコンバットトリックが限定され実質弱体化となっている。
しかし、それでもなお青のフィニッシャーとしてはとびぬけた性能を持っており、今回の大会でも当時と変わらず「青い悪魔」と呼ばれた姿を見せてくれることだろう。
終わりに
この記事では限築杯で見るかもしれない8つの有力なデッキを紹介させていだきましたが、もちろん他にも結果を残したデッキもありますし、あるいいはこの時代にはまだ「完成していなかったデッキ」が姿を現すかもしれません。
当時とはマリガン、ダメージスタック、マナバーンなどのルールが変更になりましたし、構築の思想も進化してきたと思います。
当時あこがれたデッキが躍動する姿が見れることと同じくらい新たな意欲作が見られたらいいなと願い、大会当日を楽しみに待ちたいと思います。
もし、この記事を見られた方で青春時代のカードを使いたくなった、あるいは言い伝えでしか知らなかった時代を体験してみたいと思った方はぜひ参加して一緒に遊んでいただければ嬉しいです。
大会参加、あるいは当日都合がつかなくとも遊んでみたいと思った方はぜひこちらのDiscordサーバーにてお待ちしております。
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今回テーマとしたウルザブロックは、この時代からマジックをやっていたかどうかを問わず多くの人を惹きつける「華のある」ブロックだと思っていますのでたくさんの人でにぎわい、多くの人に楽しんでもらえるイベントになったらいいなと思います。
ここまで長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。