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限築杯Vol.2 観戦記事 準決勝 Seventh Forest vs coyo ~騎士と竜~

text by ふみ


ソリューション(solution)の語源は、動詞の solve で「(問題を)解決する・解答を出す」などを意味します。従って名詞形のソリューションは「解決・解明・解答」などを意味することになります。

10分でわかるカタカナ語

「解決策を求めて〇〇をキャストした」カバレージでもよく使われる表現だ。M:tGは相手に何もさせないうちに押し切ってしまうか、相手の動きの全てを対処して回り息切れを狙う、というのが基本的な戦略となるが、いずれにせよ勝利の道へとつながる「解決策」をプレイし続けるゲームと言えよう。

そんな解決策たる「Solution」という言葉が、一躍有名になったのがインベイジョンブロック構築で行われたプロツアー東京01である。環境の全てを読み切ってしまえば、デッキを解決策のみで構成することは決して難しくない。問題なのはその全てを読み切る行為が常人にはできないということなのだが。それをメタゲームと呼び、これがぐるぐると輪廻するからいつまでも、何度遊んでもM:tGは楽しく、そして新鮮な体験を与えてくれる。

しかしそれを時のプロプレイヤーはやってのけてしまった。

そこで示されたデッキ名「Solution」。この言葉の響きにプレイヤーは飛びついた。いつの日か自らの手で環境を解明することを目標の一つに置くようになった。

あれから20余年の時を経過した。当時を体験したプレイヤーもそうでないプレイヤーも今再びインベイジョンブロックのカードを手に取った。さぁまた「Solution」を探し求めるべく、戦いの幕を開けよう。


序幕

「coyoさんのデッキリストを見てたんですけど……きついですね。」
「ただリスト見れるから、《翻弄する魔道士/Meddling Mage》で指定できるのいいですね」

「嵌らないと3色の怖さがあるんですよ」
「やっぱり《ガリーナの騎士/Galina's Knight》ですね。これをどう対処できるか」

前者がSeventh Forest、後者がcoyoのゲーム前の言葉だ。当時と違い今は決勝トーナメントはデッキ公開制の場合が多く、秘策というものがなかなか通用しにくくなっている。

そんな中、coyoのあげた《ガリーナの騎士/Galina's Knight》。

Solutionの体現者


この2マナ2/2の騎士こそがSolutionといえばこれ、とデッキを代表するカードであり、環境の大多数の除去を掻い潜る一枚。今回もこれが主役を飾ることになるのであろうか。


Game1

先に記した「M:tGは何もさせないうちに押し切ってしまうか、相手の動きの全てを対処して回り息切れを狙う、というのが基本的な戦略となる」その前者はコンボデッキが極みであるとすれば、その次点にはクロックパーミッションと呼ばれるアーキタイプがそれに当たるであろう。

この試合、Seventh Forestはまさにこれぞクロックパーミッションという試合を見せつけていく。2ターン目に《ガリーナの騎士》をいきなりの登場させると、続けて《翻弄する魔道士》で《終止》を宣言する。

coyoがSeventh Forestの攻撃を受け止めるべく《夜景学院の使い魔》を唱えると、これに少し目をやった後

「出てくるものは全て排除」

と、これを《吸収》してこのまま押し切ることを宣言した。

慌ててcoyoが《十二足獣》をブロッカーとしてキャストするも、《天使の盾》でバウンスされてしまい、今一度の送り出したそれは一瞬にして《氷》漬け。最後は《ウルザの激怒》を発射。

Seventh Forestはcoyoに解決策を探す時間を与えず、あっという間にcoyoのライフは0まで詰めてしまうのであった。

実は《ガリーナの騎士》をトップから手に入れたのだというSeventh Forestと、《予言の稲妻》を3枚連続で引き入れたというcoyo。結果から見れば、どうやっても与しようのない1戦だったのかもしれないが、そんな状況も二人は楽しそうに笑うのであった。

Seventh Forest 1-0 coyo


Game2

立ち合いから一気に土俵際に追い込まれ、そしてその勢いのままに押し出されてしまったGame1のcoyo。だが彼の使うクローシスコントロールは、そのような逆境からでも逆転が可能なヘビーコントロールデッキ。

一度押しとどめれば勝機は自分のもの。coyoは信じる解決策を貫き通す。

再び《ガリーナの騎士》でゲームをスタートするSeventh Forestに対して、coyoは今度は《夜景学院の使い魔》を着地させることに成功した。

これを前にして《ガリーナの騎士》で殴るのみでターンを終えるSeventh Forest。一方のcoyoも着実に土地を積み重ねるとSeventh Forestのターンエンドに《噓か真か》。

これはカウンター合戦の上で打ち消されてしまうものの、この一連の攻防を受けてSeventh Forestの土地がフルタップとなったことを見て、coyoは次の動きを決断する。

土地を一つずつ順に倒すのを見て「《虚空》ですね」と問いかけるSeventh Forest。だがcoyoは「もうちょっと熱いもの行きますよ」と高らかに。


coyoと共に戦う熱い存在、その名はクローシス


対処する術を持たないSeventh Forestに見事にクローシスの攻撃が通り、これによって手札を2枚奪い取ると、唯一残された《ラッカボルバー》をフルキッカーするのだが、これを《除外》してみせるcoyo。


確かに《ガリーナの騎士/Galina's Knight》はcoyoにとって天敵である。だが手の届かないところに行ってしまえば、結局は単なるパワー2点の生物でしかない。

まるでGame1の意趣返しかのように《粛清するものクローシス/Crosis, the Purger》があっという間にライフを奪い去ると、coyoの手から放たれた《ウルザの激怒》がSeventh Forestの身を焼くのであった。

Seventh Forest 1-1 coyo


Game3

三度《ガリーナの騎士》スタートとなったSeventh Forest。coyoがこれに《ヴォーデイリアのゾンビ》で返すと、探りを入れるかのように、少し溜めを作ったのちSeventh Forestは《ガリーナの騎士》で攻撃を宣言。coyoも少し迷いながらもで相打つことを選択した。

その行動を見てSeventh Forestが2体目の《ガリーナの騎士》を追加。この男、デッキとの相性はやはり最高のようで、coyoからは思わず悲鳴が漏れる。

それでもcoyoは再生用のマナを確保したうえで《夜景学院の使い魔》をキャスト。《ガリーナの騎士》の攻撃にひとまずの防御の盾を作り上げる。この盾の維持のために毎ターン2マナを使わさせられる格好となるが、それでも絶対に3枚の土地はアンタップを維持した状態で構え続けるcoyo。Seventh Forestもcoyoの持つであろうカードを想像し、次なる動きを取ることができない。

coyoはじわりじわりと少しずつ土地を伸ばし、8マナを揃えたところで《無明の予見者》。これにお互いに《反論》を打ち合った結果、このカウンター合戦もSeventh Forestが勝利、更に加えてまたcoyoの青マナが全て倒れてしまう。その隙を見逃さずSeventh Forestが《噓か真か》を通す。

ここで捲れたのが

この状況で貴方であったらどのように分けるであろうか。

《火炎舌のカヴー》
《予言の稲妻》
《翻弄する魔道士》
《火+氷》
《沿岸の塔》
という実に強力な5枚。

coyoは左2枚と右3枚へと分割し、後者を選んだSeventh Forestはすぐに《翻弄する魔道士》で《終止》を宣言。しかしこれによりSeventh Forestもフルタップを迎えリスクを抱える側となった。

だがしかしここにアクションを返せないcoyo。

ならばと詰めにかかるSeventh Forest。《翻弄する魔道士》は《ウルザの激怒》で失うものの、coyoのアップキープに《噓か真か》をしかけていく。ここはcoyoに《反論》されるが、1枚また1枚と手札が失われ行、coyoは実に苦しそうだ。

Seventh Forestは《稲妻の天使》、《蝕み》にかかるcoyoだが《吸収》で返していくSeventh Forest。《稲妻の天使》は無事着地しcoyoのライフは残り3となった。

3、そうそれは《ウルザの激怒》の射程圏。だが幸いかSeventh Forestはまだその構えは見せない。あと僅かかもしれないが猶予はある。

「解決策」を。そう求めたcoyoが引き入れたのは《ヨーグモスの行動計画》。これにより墓地にある《氷》を使いまわすことで更に1ターンを得る。その代償に残りライフは1。

1、ああそうだ。Seventh Forestの手札には先ほど渡した《火+氷》があるではないか。coyoは悟った、どのようにふるまっても、戦場と手札その全てを解決する策は見つからない。


計画通りに振舞ってもうまくいかないこともある

Seventh Forest 2-1 coyo


閉幕

「ガリーナは全てを解決する」試合後、Seventh Forest・coyoの双方から吐かれた言葉。

環境を解決する存在として勝利を託した一介の騎士は、今再び決勝戦の舞台へとSeventh Forestを導いた。環境を解決すべく、Seventh Forestは勝利を追い求める。