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限築杯Vol.2 観戦記事 決勝戦 MasaH vs Seventh Forest ~環境を識るもの、その果て~

前回の決勝を覚えているだろうか。


MasaHは、ドメインと呼ばれる基本地形を中心としたデッキで、ドミナリアの5色の力を惜しみなく使い、《合同勝利/Coalition Victory》を中心とした豪快なカードたちと共に優勝の栄冠を掴み取った。

そう、一度掴み取っているのだ。

そして今この場に座っているのもMasaH。その手に握るのはドメイン。前回と同じ5色の力。

しかし、試合後にMasaHは語った。
「前回は《合同勝利》や《クロウマト》で派手に勝利したマッチもあったけど、今回は《反論》とかの妨害スペルが増えると思って、別の形にしました」

まさしくその通り、今大会で最も使われたカードである《反論/Gainsay》を読み切り、フィニッシャーに選ばれたのは《魂売り/Spiritmonger》をはじめとした青を含まない優秀なクリーチャーたち。

今回のフィニッシャーたち

様々なカードを選択できるドメインの強みを最大限に生かし、メタゲームを読み切ったMasaHが決勝にいるのは、自明の理というものだろう。

それに対するのはSeventh Forest。
ブロック構築の本サーバーにて、日頃から研鑽を行い、環境の解明とデッキの最適解を探索していたプレイヤー。
直前まで調整していたドロマー・コントロールは非常に好感触だったようで、今回別のデッキで出ているのを実況・解説席の二人も疑問に思っていた。

「サーバーがもっと盛り上がればと思って、レシピを公開したんです。実際今回の大会で完コピした方がTOP8に入賞されているので、あのレシピも間違いじゃなかったと思ってます。」

インベイジョンブロック構築を愛し、大会の盛り上げにも貢献してくれた素晴らしいプレイヤーだ。
その深い読みと環境理解は、本大会でも遺憾なく発揮されている。

環境のカギ

使用するのはトリコロール・カラーのSSSと呼ばれるデッキ。火力、バウンス、打ち消しの絶妙なバランス。
クリーチャーの選択、呪文の枚数、そして土地周り。すべてに調整の跡が見える。

お互いが極限まで環境を突き詰め、それぞれの最適解を持って決勝の舞台まで上がってきた。

しかし、それでも勝者は一人。

最後の最後に、インベイジョンブロックの最適解を掲げられるのはどちらになるか。

Game1

《ガリーナの騎士/Galina's Knight》から《天使の盾/Angelic Shield》につなげ、序盤をリードするSeventh Forest。

MasaHが《砕土/Harrow》で土地を耕す中、2点、また2点と確実にクロックを刻む。

そしてMasaHの青マナがないタイミングで《嘘か真か/Fact or Fiction》。

《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》
《稲妻の天使/Lightning Angel》
《選択/Opt》
そして2枚の《平地/Plains》から、MasaHが分け、Seventh Forestが選んだのは

申し分ないパワーカードたち

強力なカードを一気に2枚手に入れたSeventh Forestだが、なんの計算もなしにそれを分けたMasaHではない。

返すターンで《破壊的な流動/Destructive Flow》がSeventh Forestに遅いかかる。

目の前にある土地は島、島、そして2枚の《沿岸の塔/Coastal Tower》。
喉から手が出るほど欲しい平地は、すでに墓地へ送られている。

しかし、《シヴの浅瀬/Shivan Reef》から《稲妻の天使/Lightning Angel》を走らせ、ダメージクロックを5点に引き上げる。
このゲームは盤面を掌握したプレイヤーの勝ちではない。ライフを0にしたプレイヤーの勝ちなのだ。

MasaHが《剣歯ニショーバ/Sabertooth Nishoba》を呼び出すが、それにもひるまずまた天使が走る。そして《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》も追加したSeventh Forest、《天使の盾/Angelic Shield》と合わせて《剣歯ニショーバ/Sabertooth Nishoba》でもうかつに攻められない盤面を作り上げた。

抑え込めるか、この怪物を

「ニショーバで攻撃します。」
しかしこのMasaHの宣言で、事態は予想以上に悪いことを悟ったSeventh Forest。《破滅的な行為/Pernicious Deed》が追加されると、これまで淡々とプレイしてきたSeventh Forestが初めて思考を止める。

協力無比なリセットボタン


「ケア、出来たのかな」

そうして自分のプレイを一瞬だけ反芻するが、すぐに現在のゲームへ戻ってくる。反省はあとだ。

《火/Fire》でMasaHのライフを6まで落とし、《天使の盾/Angelic Shield》で《稲妻の天使/Lightning Angel》を救出。破滅的な行為により戦力は壊滅したが、MasaHが少しでもためらえば、その一瞬でライフを奪い去る構えだ。

だが、ここまで勝ち上がってきたMasaHが、インベイジョンブロックを知り尽くしているMasaHが、そこを読み違えるはずがなかった。

この有利は一瞬でひっくり返ることを充分に理解しているMasaHは、ニショーバで攻撃し、《魂売り/Spiritmonger》を追加する。一気にSeventh Forestのライフを攻め落とす。

Seventh Forestも《稲妻の天使/Lightning Angel》であと一撃のところまでMasaHを追い詰めるが。

《ラッカボルバー/Rakavolver》が最後の壁となり、MasaHが倒れることは最後までなかった。

MasaH 1-0 Seventh Forest


Game2

「最後、ぎりぎりでした」
「《急流/Rushing River》か《氷/Ice》でどかせれたらね」
「いいゲームでしたね、本当に」

サイドボードの合間に、感想戦が挟まれる。
両プレイヤーとも、早く、正確なプレイを惜しげもなく発揮してくれており、決勝にふさわしいといえる好ゲームとなった。

そんな強者にも平等に訪れるものがある。
不運だ。

Seventh Forestは先手ダブルマリガン。決勝の舞台で、がけっぷちの状況で。これはどれだけ悔しいのだろう。何を恨めばいいのだろう。

しかし、Seventh Forestはそんなことは一切思わない。
与えられた5枚で、残りのドローで、7枚をキープした今大会で最も強大なライバル、MasaHにどうやって勝てばいいのかを必死に考えていた。

2ターン目に《翻弄する魔道士/Meddling Mage》を展開したSeventh Forestは迷わず《破滅的な行為/Pernicious Deed》を宣言。

最序盤での脅威、またライフを狙うプランでは最も厄介な軽いリセットボタンを封じた。

プレイヤーの技量を問う一枚

そして《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》から4点クロックでMasaHを攻める。

少しでも足止めしようとした《集団監禁/Collective Restraint》には迷わず《急流/Rushing River》。出しなおされた返しのターンは4マナを払って攻撃。

限りのあるリソースで、1手、また1手と最適解を導き出し、MasaHを追い詰めていく。

MasaHはたまらず《虚空/Void》。《破滅的な行為/Pernicious Deed》が封じられている以上、これが最短のリセットだった。

そして無残にも散っていく2体の熊。これでやっとMasaHの時間かと思われたが。

Seventh Forestの最後の手札から《予言の稲妻/Prophetic Bolt》が放たれ、ついにMasaHのライフは1となる。

文字通り、勝利を【予言】した

「たのむ、引かないでくれ」

あとはトップデッキを祈るだけかと思われたが、Seventh Forestはすでに解を持っていた。

「ドロー前に、《ウルザの激怒/Urza's Rage》をあなたに」

引くまでもなく、《予言の稲妻/Prophetic Bolt》はSeventh Forestに最後の一手を与えていた。

MasaH 1-1 Seventh Forest


Game3

「観戦している人とかいるなら、盛り上がったんじゃないかな」
「きれいにやられました。素晴らしいです。」
「ダブルマリガンからまくれるとは正直思ってなかった。」

薄い薄い勝ち筋を、誤ることなく通し切ったSeventh Forest。
1手間違えば、1点を躊躇えばどうやっても届かなかっただろう。
不運は誰にでも起こりえる。そこからそうやって選択肢を見つけるかが強者の条件なのかもしれない。

そして、MasaHも間違いなく強者の一人なのだ。

最終ゲーム、ここで初めて先手を取ったMasaHは《頭の混乱/Addle》でカウンターをケアしながら、3ターン目に《破壊的な流動/Destructive Flow》。
最速ターンの《破壊的な流動/Destructive Flow》を演出したのは、MasaHがデッキに選んだ小さな宝石である《彩色の宝球/Chromatic Sphere》だった。

3ターン目に出すのは難しい

これにはたまらず《オーラの旋風/Aura Blast》を叩き込むSeventh Forestだが、それでも1枚、土地を持っていかれてしまった。

そしてMasaHは容赦しない。追加の《破壊的な流動/Destructive Flow》を設置すると、《集団監禁/Collective Restraint》でマナも、クリーチャーも機能不全に追い込む。

もはや両手足を縛られたに等しいSeventh Forest、それでも勝つための選択を探し続け、《ウルザの激怒/Urza's Rage》をプレイヤーに放つ。

しかし、抵抗はここまでだった。
MasaHは《魂売り/Spiritmonger》を2体連続で盤面に送り出すと、自身の選択肢がなくなったと悟ったSeventh Forestは素直に勝者を称えた。

【最強のクリーチャー】

MasaH 2-1 Seventh Forest


前回の大会で勝利した自分自身を囮に、まったく違うドメインを作り上げてきたMasaH。
あらゆるデッキ、あらゆる選択肢を試し、この環境のプロフェッショナルにまで上り詰めたSeventh Forest。

それぞれが自身の思う形でインベイジョン・ブロック構築を極め、その集大成を決勝という場で惜しみなく披露してくれた。

この成果と、手に汗握る熱い戦いに、最大限の称賛を送りたい。

このブロックの可能性、奥深さ、そしてなにより面白さを教えてくれた、MasaH、Seventh Forest両プレイヤー、限築杯に参加してくれたすべてのプレイヤーに感謝を。

そして、これらすべてを受け止める広さを持った、インベイジョン・ブロックへ、ありがとうを伝えて本大会を終わりにしよう。

限築杯Vol.2、優勝は2連覇のMasaH!