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鈴木凌に捧ぐDay and night
『timelesz project -AUDITION』通称『タイプロ』のepisode13が配信され、松島聡チームの5次審査の様子が公開された。さらに次週の菊池風磨チームの密着では通過者発表を実施。合否が出てから思いを書くと、また気持ちが変わってしまいそうなので、覚醒回と呼ばれたepisode13と鈴木凌への思いをここに書き留めておく。なぐり書きなのでお許しを。
「うそはうそであると見抜ける人でないと(概要を見るのは)難しい」から25年。今や「完璧で嘘つきな君は天才的なアイドルさま」と歌う楽曲をトップアイドルたちが紅白でパフォーマンスするほど、人々はうそをうそとして楽しむようになった。緻密に計算された“完璧”を求め、たった一雫のにごりが命取りとなる。そんな時代に現れたのが、鈴木凌というアイドルなのである。
ananwebのインタビューによると彼のルーツは「ディズニー」にあるという。
小さい頃からディズニーが大好きで、本場のディズニーランドに夏休みを全部使って行ったことがあるくらい。そこにしかない特別なものがたくさんあって、そこに来るたくさんの人を笑顔にしたり、感動させたりもする。僕もいつかそんなことができたらという想いがありました
映画というフィクションの世界を3次元化し、夢と魔法の世界を作り上げるディズニーとアイドルの精神に共通点があるのは言わずもがな。その感覚を吸収し、オーディション前から芸能活動を行ってきた鈴木にとって、3次審査は有利に働いたはずだ。全体ダンスの順位は19位だったものの、怪物界をイメージしたMVが印象的な、コンセプトゴリゴリの嵐の「Monster」で、楽曲の“世界観”をものにし、3次審査を2位で通過。橋本将樹とのシンメからの浜川路己が割って出てくるあのパートは、今見返しても心酔する。
鈴木の表現力に、わたしは『Nizi Project』の鈴野未光の影を見た。天性のビジュアルに、透き通るような歌声、伝説のステージ「Nobady」で魅せた、楽曲の咀嚼力は、鈴木にも通じるものがある。しかし鈴野はオーディションが進むにつれ、スランプに陥っていく。映れば光る美貌を持ちながらも、考えすぎが仇となり、表現が固くなっていった。奇しくも鈴木も同様の壁にぶち当たる。
高評価だった「Monster」でも課題は見えていた。止まる場面でのグラつきが目立つ。その弱みはすぐに4次審査で露呈する。体力や体感のなさが目に見える形で現れ、俳優部の合流で技術も表現力もパワーも愛嬌も最高峰のものではなくなっていってしまった。
意識しているわけではないけれど、僕はたぶん、完璧に振る舞いたいタイプなんだと思います。そのせいで他の人に比べて指摘を受ける機会があまりないまま、どこか自分のやり方で正解だと思っちゃってた部分もあって。でも今回のオーディションで、自分に足りないものを指摘され、僕がアイドルをやっていいのかとネガティブになった時間がありました。
上記インタビューでも答えているように、どこか完璧主義な鈴木。4次審査はギリギリ通過できたものの、パワーの原や魅せ力ある本田、西山と比べると「Purple Rain」で埋もれてしまっていたのは否めない。また猪俣のような天然力も持ち合わせていないので、篠塚同様愛嬌でファンを獲得するようなチャンスも得られなかった。良く言うと優等生、悪く言うと面白みのないプレーンなパフォーマンスに。
それでも信じ続けてこられたのは、鈴木の精神が好きだったからだ。座右の銘が「不言実行」。オーディション公式サイトに寄せたメッセージには「何があっても絶対折れない」。巷ではアイドルになるにあたってメンタルを心配する声が上がっていたが、むしろ逆だと思っていた。着ぐるみの中に言及するのはご法度のように、彼は玄関を出た瞬間から表現者として生きているのだろうと推測する。販売員という職業の手前、きっと嫌なことを言うお客さまもいたことだろうが、ステージであろうと職場であろうと、「誰かの前に立つ」ということに対する強い意識が彼から垣間見える。人の話を聞く時の手の位置、ごはんを食べたり笑ったりする時の所作、そんな彼の生き様は、ステージに立つことを夢見てきた時間が刻まれている。
子供の頃の夢は「ミッキーマウス」と答えていた鈴木。同じくミッキーマウスが大好きな宝塚星組トップスターの礼真琴も同様の完璧主義者だ。いつ何時も“スター”であるミッキーマウスに憧れを持つ人には、表現者としての共通点があるのかもしれない。ただ鈴木の技術は、礼のように頭一つ抜けているわけではないので惜しい。退団会見で「最後の最後まで私らしく、体力と筋肉を使って、この宝塚歌劇にすべてを注いでまいりますので、最後の日までどうぞよろしくお願いいたします」と語るくらいの体力オバケの礼を考えると、スターを支えるのは体力・筋力だと再確認する。
5次審査で松島が言った「映像映えはするが生のインパクトに欠ける」はあまりにも的を得ていた。4次審査でもNOSUKEから言われていたが、パターンのない鈴木のパフォーマンスにはアーティストとしての持続力がない。今回役者として経験のある寺西と同じチームになれたのは、首の皮がつながったような思いだった。松島プロデュースの下、得意分野の「SWEET」で魅せる。追い風だと思った。一方で、菊池・佐藤チームのようなダークなコンセプトで苦しむ姿も見てみたかったとも思う。漢・原と一緒に過ごす時間はプラスに作用しただろうな。
そして5次審査の予告から話題になっていた、NOSUKEからの叱責を受ける。仕事で全体練習を抜けたことにより、立ち位置の把握が抜けていた。かなり強い言葉で詰められていたが、「欠席」というマイナスイメージを少しでもフラットに上げていくために必要な機会だったと思う。松島は人一倍痛みが分かるからこそ、鈴木のさまざまな事情を配慮し、「欠席」に関しては自分の中でがっかりするだけに留めてくれたのだろう。しかし、それで出席率の高いノアや山根ファンは納得するのか? チームはまとまるのだろうか? 時間という取り返しのつかない部分で償いを見せるというのはほぼ無理と言ってもいいだろうが、泣くことすら許されない「欠席」の意味の大きさを、視聴者に分かりやすい形で提示されたのは良い機会だった。同じく抜けの多いが立ち位置完璧な寺西と比較されたのもありがたかった。山根→鈴木の歌割りチェンジ、鈴木の髪色チェンジ、山根の重圧を切ってでも、割かなければいけないと判断してくださった構成さんに感謝。
そんな大きな衝撃を食らった直後でも、中間発表のパフォーマンスで笑顔を取り戻した鈴木は、やはり強かった。メンブレするノアに、自身の失敗を励ます要素として使える強さ。のちにNOSUKEを笑顔にし「できるんなら最初からやれよ」と言われるまで成長する鈴木の姿を見ると、無神経だったり、響いていなかったりという訳ではなく、あまり表に出さない形で、彼なりに消化している。
鈴木のすごさは、自己プロデュース力が高く、自分の足りない部分を自覚している上で、人に頼りに行けるところ。トレーナーや佐藤勝利に自ら相談を重ねていたのが、何度か映っていた。でも難しいんだよな。ぼっち飯、人見知りで質問できない橋本の方がかわいく見えてしまう。何台ものカメラをくぐり抜けて自主練してても、スタッフに追いかけたいと思わせる篠塚の方が撮れ高がある。オーディションって、エンターテインメントって、人生ってなんて残酷なんだろうと、鈴木を応援する上で何度も頭を抱えた。
有志による5次審査落脱予想で何度も君の名前が挙がる。「華があるけど…」「メンタルが心配」「timeleszに刺さってない」。大衆への届き具合を痛いほど実感しました。
平野紫耀は25歳のとき「年齢を考えると世界を目指すにはもう遅いと思い脱退と退所を決意しました」と言い、キンプリをやめた。「Produce 101 Japan」を除き、オーディション番組戦国時代の今でも、大手の募集要項はほぼ25歳まで。一般組最年長の鈴木にとって、もしかしたらラストチャンスくらいの意気込みだったのかもしれない。
菊池の言葉を借りると“崖”な一人でもあるのに、童顔と常に笑顔や場を温かくしようとする生粋のエンターテイナーな部分が邪魔をする。松島からの「アイドルになるべくして生まれて来た人」は、(ここではないどこかで)の含みがあるのかと邪推してしまう。
正直、寺西のように確信が得られないまま迎えたepisode13だったが、あの「SWEET」は、鈴木の「Monster」での輝きが戻ってきたようだった。鈴木のハイトーンボイスが、楽曲を締める。楽曲のテイストが“ビター”になり、ダンスパートに向かう時の、その扉を開けるのは、甘くも儚い鈴木のハイトーンボイスでの「捧ぐDay and Night」だ。指先まで神経の通ったしなやかさと、バレエにも通ずる鈴木の踊りの華もグッド。サビの「全然 i don't care」で首を振る君だけのアレンジも、とってもスウィートだ。このまま「It's a Sweetsful Time!」に出してくれと思うくらいの甘さがある。一方で山根と並ぶと、パワー不足も否めない。寺西と山根の間から飛び出してくる部分は、佐藤が「人生遊戯」チームに言った「肩外れてもいいと思ってやっている」の熱量が足りていなかったと思う。でも色々危なさとか鈴木の遠慮が出てしまったんじゃないかなとも考える。
帽子を深く被って食事していた4次審査と比べて、見違えるように前を向き始めた鈴木を見て心底安心した。ただでさえシュッとした輪郭がどんどん細くなっていくのを見た時は、また『Nizi Project』鈴野を思い出した。だからこそ、バーベキューでチキンに食らいついたり、タイプロハウスでドーナツを持ってた姿を見て、君がエネルギーを接種していることにホッとした。
わたしは映画好きだから、ノミネート作品を見ずにオスカー予想する連中が嫌で、それと同様に「New Phase」チームを見るまで、通過予想するのは粋じゃないなと思っている。だからこの先については今回は言及しない。
ただ一つ言えるのは、キラキラ輝く鈴木凌が戻ってきてうれしかった。いろいろ苦しかったよな。わたしは鈴木が「SWEET」で歌う“君”は“timelesz”のことだと思ったよ。昼も夜も試行錯誤して、無理難題を押し付けられても、timeleszを考える時間が幸せなんだろうな。episode13は「すべてが掛け替えないBest Scene」だった。鈴木が大泣きできる仲間と出会えて本当によかった。
再販の時に買えたから、君のトレカは2月下旬に届く。番協の日程を考えると、きっとその頃には新生timeleszが始動しているかもしれない。どんな形でも手に届くチャンスをくれてありがとう。昼も夜も鈴木凌を思って、待っているよ。