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ゲースロ前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第1話を見てきた

『ゲーム・オブ・スローンズ』の200年前を舞台に描いた前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が、8月22日(月)から、米HBOでの放送と同時刻に日本で独占配信される。

8月16日(火)にはTOHOシネマズ 六本木ヒルズのスクリーン7(!)で日本最速プレミア試写会も行われ、一足先に第1話がお披露目された。

1時間6分におよぶ第1話が幕を閉じ、スクリーンに再度明かりがついた際には、あまりの衝撃に拍手とどよめきが…。今回は、ネタバレなしで『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第1話を解剖する。

まず『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、ドラゴンを従えてウェスタロスを支配したターガリエン家を綴った年代記『炎と血』を原作としたHBOドラマ。『ゲーム・オブ・スローンズ』では、エミリア・クラークが演じたデナーリス・ターガリエンがその一族である。(『ゲースロ』でのデナーリスの歴史は下記から振り返られるのでご参考までに)


①『ゲースロ』より見やすいキャラクター構成

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相関図をこんなに握りしめながら見たドラマは、人生の中でないんじゃないかと思うくらい複雑なキャラクター構成だった『ゲーム・オブ・スローンズ』

7つ分の王国があったのだから、それはもちろん当たり前で、その複雑性こそが裏切りや結託をより面白くしてきたわけだが、今回は【ターガリエン家】に重きが置かれており、第1話の段階である程度一族の中の立ち位置が明確になるので大変見やすい作りになっている。

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その上キャスティングも第1話から衝撃を受けるほどハマっており、特にエマ・ダーシー演じるレイニラや、マット・スミス演じるデイモンは、まさに“ターガリエン顔”。「これがデナーリスやヴィセーリスの先祖か」と納得の行くビジュアルで、フタを開けた瞬間からシリーズの帰還を感じさせる。

②進化した『ゲースロ』のエッセンス

『ゲーム・オブ・スローンズ』といえば、有料ケーブルチャンネルのHBOだからこそできる過激な性描写や暴力描写が売りの1つだった。いわゆる“主人公”が不在で、主要キャラクター次々と死んでいき、たとえ大御所俳優でも悲惨な最期を迎えていく。

その容赦のなさは見るものを惹きつけるが、特に性暴力のシーンは、見るのに苦痛を伴う内容で、視聴者からは批判を受けたラムジー・ボルトンとサンサ・スタークの該当シーンは、ラムジー役のイワン・リオンも「苦しかった」と吐露するほどだった。

さらに、セックスやヌードを背景に状況説明を行う手法を意味する「セックスポジション(Sexposition)」という言葉も生まれ、そういったものが本当に必要なのか議論がなされていた。

なので、こうした経緯を経て、ウェスタロスの残虐性の表現方法を含め、『ゲースロ』から時代が変わった今、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が何をどう描くのかは1つの注目ポイントだった。

結論から言うと、第1話から血飛沫は飛び散るし、裸の男女は大量に登場する。しかしながら、家父長制の中にいる女性たちに強いスポットライトを当てているのが本作のため、『ゲースロ』と比べると、慈悲なき腐敗したウェスタロスという世界観は継承しつつも、大きく異る雰囲気をすでに第1話から醸し出している。

2019年に公開されたBBCによる「ショーの中で女性がどれだけ話しているのか」という記事では、「全8シーズン中ほとんどで、女性が発言した時間が全体の20%だった」という結果が出ているため、それを思い返すと、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第1話は、女性が誰かのついでではなく、中心となったシーンが増えていた。

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の第1話を監督し、IMDBで10点満点中9.9点を叩き出したシーズン6第9話「落とし後の戦い」など複数エピソードを担当したミゲル・サポチニクは、 The Hollywood Reporterのインタビューで、「あの時代の男性から女性への暴力は無視できない。軽視や美化されるべきでない」とした上で、慎重に思慮深く取り上げ、今回はどちらかといえば暴力の側面に光を当てると語っている。

一方で、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の脚本を担当し、本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるサラ・ヘスは、「番組の中で性的暴力は描かれていないことを明確にしたいと思う」とミゲルのインタビューの後に付け加える形でVanity Fairにコメントしている。

さまざまな記録を残した大ヒット作ながらも、女性の描き方や人種の扱いなど、問題点も議論されてきた『ゲーム・オブ・スローンズ』。まだ初回ということもあり、その問題点をどう乗り越えていくのかといった点は今後を見届けないとわからないものの、少なくとも第1話は、制作陣のシリーズへの愛と、観客へのアンサーが感じ取れる作品に仕上がっていた。

2019年春、『アベンジャーズ/エンドゲーム』と『ゲーム・オブ・スローンズ』で二人のスタークが物語に終止符を打ったあと、世界中には新型コロナウイルスが広がり、エンターテイメントももちろんストップした。

数々の映画やドラマが延期され、個人的には海外からの来日がなくなったのが大打撃で、振り返ってみると空虚な3年間だったわけだが、『ベター・コール・ソウル』のすばらしい最終シーズンが配信され、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が始まる2022年夏は、あのとき止まった時計が本当に動き出す季節なのかもしれない。もうこれ以上長い冬はこりごりだ。

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