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今後に備えた医療提供体制の整備、接種証明アプリ、3回目接種や5-11歳への接種について議論しました(11月2日こびナビTwitter spacesまとめ)

こちらの記事は、2021年11月2日時点での情報を基にされています。

2021年11月2日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健佑


吉村健佑
おはようございます。
11月2日の朝のこびナビTwitterスペース、今日はこびナビ代表の吉村が担当いたします。
日曜日は選挙でしたね。私は投票に行きましたが、皆さんは行かれましたか?

さっきニュースを見ていましたら、今回の選挙の投票率、どれくらいだと思われますか?
今回は55.93%と報道されていましたね。
約56%で「低いんじゃないか」とか「戦後3番目に低い」とか報じられていましたが、調べてみたら、前回平成29年の総務省発表のデータを見ると前回は53.68%ですから、約54%ですね。「ああ、そんな感じなのかな」と思って見ていました。

今回の衆議院選挙では、知っている方が何人か小選挙区で挑戦されていて、凄いなと思いました。
まずは千葉13区から立候補していた松本尚先生です。
まさに千葉県のコロナ対策本部で一緒に仕事をしていた方が小選挙区で当選されるということで、非常に感慨深いというか、驚きましたね。
松本先生とは去年の4月の対策本部の会議からご一緒して、それから実作業も一緒にやって、臨時の医療施設を作る情報を整理させていただいた方です。
日本医大の救急科の教授でいらっしゃいましたが、非常に「熱い」先生で、今後は国政の場で頑張って頂きたいと思います。

あとは厚労省で一緒に働いていた茨城6区、国光文乃先生ですね。
今回2期目の当選をされ、「接戦を制して」と報道されていて凄いなあと思いました。
ちなみに雑談なのですが、国会議員には4種類ありまして、

衆議院の小選挙区
衆議院の比例代表
参議院の個別の選挙区
参議院の比例代表

という当選の仕方があります。
衆議院の小選挙区の方が、最も当選するのが難しいというか、民意を反映してるということで、国会議員としては要職に就くことが多い当選方法であることを、役所に行って学びました。

さて、選挙の小話から入りましたが、(こびナビTwitterスペースを担当するのが)2週間ぶりなんですよね。
ここ2週間の医療政策ニュースをレビューしたので、まずこれからいきましょう。


【次の感染拡大に備えよ-国から自治体への宿題を紐解く】

吉村健佑
今後の感染拡大に向けたコロナ確保病床数を、自治体で整備しなさいという話が国から出ているので、その話を少し紹介しておきたいと思います。

ちょうど今、第5波が急速に収まって、自治体は少し手が空いているんですね。
そんなところに、厚労省から10月1日に出た事務連絡がありまして、「今夏の感染拡大を踏まえた今後の新型コロナウイルス感染症に対応する保健・医療提供体制の整備について」といいます。

▼今夏の感染拡大を踏まえた今後の新型コロナウイルス感染症に対応する保健・医療提供体制の整備について(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000838787.pdf
出典:厚生労働省ウェブサイト 2021/10/01

国の対策本部から出された、全部で22ページある資料です。
以前少しふれましたが、自治体はこの資料に従い、10月~11月の2か月をかけて病床確保を計画し、その内容を都道府県から国に提出するという、宿題が出ているんですね。
その内容や、具体的に何をしたらいいのかという追加説明も、その後行われました。
例えば10月29日に厚生労働省が説明会を開催しています。
この際に、どういう考え方で確保計画をしたらいいかということで、「『 次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像』の骨格」という資料が自治体に提供されました。

▼新型コロナウイルス感染症対策本部(第79回)(令和3年10月15日開催)配付資料(PDF)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r031015.pdf
出典:新型コロナウイルス感染症対策 対策本部等資料 2021/10/15

何かというと「ワクチン、検査、治療薬等の普及による予防、発見から早期治療までの流れをさらに強化するとともに、最悪の事態を想定して、次の感染拡大に備える 」という第6波向けの感染拡大の話がされています。
そこの文章の趣旨を翻訳すると、
「今後、感染力が2倍となった場合にも対応できるように、医療提供体制をはじめとする各種対策の全体像を示しなさい。さらに感染力が3倍となると、これは自治体では対応は無理だよねということで、国の責任において、一般医療の制限のもと、具体的措置を講じる。それは国が一般医療の制限のもと、具体的措置を講じることとし、その内容を3倍となったら、その時に明らかにしよう」
つまり、
「2倍までは自治体で、都道府県で何とかしてね、3倍になったら国が何かの具体的措置を明示しますので、その時は国がやります」
という説明の内容になっています。

ここでキーワードになる「感染力」という言葉ですが、特に定義のない言葉で、質問が出た模様なんですよね。この「感染力」とは一体何でしょうか。

厚労省もいくつか説明をされているそうなんですが、先程も私、千葉県のコロナ対策本部の方々に「感染力って何ですかね? 伝わるんでしょうかね?」と話をしたら、「あんまりわかんない」ということで、ややイメージみたいな言葉のようです。
具体的に「感染力」というのは、表や説明を見ると、簡単に言うと「陽性患者数」のように読めます。陽性者数が増えたときに2倍となっても対応できるようにしましょうねと。

2倍といっても、それは今回の患者数のピークの2倍ということではなく、新型コロナワクチンの普及や、中和抗体の投下、経口薬の実用化を年内に目指していることなど、さまざまな要素があります。
実際に、ざっくりなのですが、入院患者さんは今年の夏の最大のときに比べて2割増強するという状況を想定した病床確保計画を立てなさい、という言葉になっています。
なぜ、いろいろとさっ引いて2割増強なのかについては、根拠も含めて正直あまり書かれてはいません。
どちらかというとざっくりと「今年の夏の、一番大変だった8月中旬~下旬頃に比べて2割アップの病床数を確保して計画を立てなさいね」という宿題が都道府県に来ています。

その際に何度か出てきたのは「確保した病床が確実に稼働する体制を作りなさい」という言葉でした。
これは岸田総理大臣が選挙前に言ったことで
「いわゆる幽霊病床の実態を把握し、コロナ用の病床の利用率について、少なくとも8割を確保する。具体的な方策を、全体像によって明らかにする」
ということが宿題として書かれています。
「幽霊病床」という言葉も、この説明資料の中にカッコ付きで書かれています。

あとは「在宅療養も今のうちにちゃんと確保しましょうね」ということで、例えばオンライン診療・往診を最大限活用しなさいというキーワードがあります。
さらに「医療人材の確保」という項目が出されています。医療人材の確保、配置調整等を一元的に行う。場当たり的に各医療機関にちょこちょこ頼むのではなく、どこに何人くらいいらっしゃって、それを全体でどう配置するかという体制を構築しなさいということです。

あとは「緊急時の公立・公的病院による人材供給」という言葉があります。
公立・公的病院による人材供給の計画も立てた上で、県全体の他の医療機関も含めた人材供給の体制を考えておきなさいという宿題が出て、今、都道府県はそれに取り組んでいるという状況でした。

10月の末に1回目の締め切りがあったので、各都道府県から国に提出があったと思います。
その内容がまだ我々の手には届いてないのでなんとも言えないわけですが、それが10月末で取りまとめられ、11月末にはさらに詳細な計画が取りまとめられます。
今後、国全体でどういう計画になるかということが見えてくるかと思います。
これもまた、私も各都道府県がどんな計画を出しているのか興味あるのですが、そこについても分かったら紹介したいです。

ただ、これに対して各都道府県も「はい、わかりました」と言っているわけではありません。
全国知事会という、鳥取県知事の平井知事さんという方が代表をされている組織がありまして、そこが直ちに意見を出しました。
「第6波に向けたこのような宿題に対し、一律に2割増やせという考え方が出たが、既に目一杯増床している地域もあり、一部の知事からはかなり強い反発がある」ということを、理事会が後藤厚生労働大臣に訴えています。
後藤大臣は「一律2割ということは求めず、柔軟に調整して行く」と応じたそうです。
都道府県も、それぞれの個別事情を勘案して決めてくれよ、という話を国とやり取りしていると、そんな動きが自治体からは出ています。

そんな話題提供からでしたけど、いかがでしょうか?
ちょっと現場の感覚を少し紹介しておくと、現場は今めちゃくちゃ落ち着いてるんですよね。

例えば本日の千葉県の様子を見ると、
・入院患者数…約40名
・在宅療養者数…20名弱
・ホテル療養者数…20名弱
ということで、全部合わせても既に100名を切っています。

ピーク時を思い起こしてみると、
・入院患者数…約1,100名
・在宅療養者数…12,000名超
・ホテル療養者数…約400名
最大で約15,000名弱の方が療養されていました。

それに比べ、今は100名ですから、もう圧倒的にコロナの患者さんがいらっしゃらない状態です。
ですので、今の医療提供体制の準備の割には病棟はガラガラという状況になっています。
「本当に第6波は来るのか?」という雰囲気が巷には流れている中で、知事は夏のピークの1.2倍の病床を確保して、その計画を立てて国に出しなさいということで、(自治体と政府との間で)やや温度差があるかなという感覚を持っていますが、いかがでしょうか?

ここまで病床確保計画や自治体の動きについてご紹介いたしました。
この辺の計画はまた明らかになってきたら、順次報道等で発表されていくのでご紹介していきます。

じゃあ第6波が来ないのか?という話ですよね。
やはりイギリス、アメリカの状況を見て行くと、日本も新型コロナワクチン接種から時間が経つと、ブレイクスルー感染が起こるのではないかという話が出てきています。
その辺の話に関係して、第3回目のワクチン接種などに話を進めていきたいと思います。
次の話題は、同じようにワクチン接種の件なのですが、まずはプライマリー・シリーズ* ですね。
2回接種の件がやはり最も大事で、その後3回接種なので、その話をしていきます。

*プライマリー・シリーズ:「最初の一連のワクチン接種」の意。日本国内で使用されるファイザー、モデルナ、アストラゼネカ社のワクチンそれぞれの、最初の2回接種を指す。


【ワクチン接種が証明できるスマホアプリ、デジタル庁で開発中】

吉村健佑
2回接種に関連しては、例えば現在ニュースになっているのは、電子接種証明ですね。
これからいわゆるワクチンパスポートが整備されることがニュースになっていました。

▼電子接種証明、表示3段階/プライバシーに配慮
https://nordot.app/823122776769626112?c=39546741839462401
出典:共同通信社  2021/10/19

▼ワクチン接種証明書の電子化、デジタル庁が仕様案を一部変更 APIは当面見送りに 意見募集の結果受け
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2110/19/news171.html
出典:ITmedia NEWS 2021/10/19

デジタル庁は10月19日、スマートフォンの画像に個人情報の範囲を最小限・中間・最大限の3段階に分けた形で電子証明書を示すように開発が進んでいて、年内の運用開始を行うと発表しています。
これは、各自スマートフォンを使ってご自身の接種証明をできるようにするが、全ての情報を全部の場面において出す必要はないだろうという配慮です。

非常に日本的かもしれませんが、ここは細やかに、
・最小限の情報=接種した事実だけを示す画面
・中間の情報=QRコードが加わり、利用者氏名・生年月日・接種日が読み取れる
・最大限の情報=上記個人情報が画面表示され、目視で確認できる
という3段階に分けて表示することが可能になるそうです。

現在は接種済証が紙ですよね。
私も大事に保管していますが、それしかないということで、これをスマートフォンで置き換えていくということです。
スマートフォンの専用アプリをダウンロードして申請すると、ワクチン接種記録システム(VRS)に登録された個人の接種歴を参照して自動で交付される、つまり、自分のスマホに情報が入ってくる仕組みが開発されているというニュースが出ていました。

プライマリー・シリーズの接種証明が広がってくれば、やはり接種証明を示していく場面や求められていく場面も出てくるだろうということで、プライマリー・シリーズの1回目、2回目の接種に進む方が増えてくるといいのかなと思います。

ワクチンの接種率が公表されていますが、どれくらいだか皆さんご存知でしょうか?
10月26日、先週に発表された内容ですと、
・1回接種済…76.5%
・2回接種済…69.6%
ということで、約7割になっています。

この数字はアメリカ、ドイツ、イギリス、フランスを上回る数字で、非常に優秀、高い数字を出しているんですね。ただし、世代別で大きな差が出ているのが、先週、千葉県の専門部会でも話題になっていました。

新型コロナワクチン1回目の接種率を全体で見て行くと、
・65歳以上・・・91%(2回目90%)
・40代…73%
・30代…68%
・20代…65%
・10代(12-19歳)…71%(内、15-19歳が74%)
となっています。

20代は1回目の接種が2/3ほどで、これは少し低いねと指摘があった一方で、10代の接種率は比較的高く、20代、30代よりも高い割合です。
特に15歳から19歳で絞ると1回目接種率は74%になり、40代の平均を上回る非常に高い数字が報告されていました。
あくまで予測ですが、おそらく10代の方は、受験や部活といったさまざまなイベントもあり、それに備えて接種が進むのかなという印象です。

そんな形で、世代別の接種も進んではいますが、世代別の、20~30代に対する啓発活動や情報提供をもっと進める必要があるかなと思ったところです。


【どうする? どうなる? 3回目のワクチン接種】

吉村健佑
では、プライマリー・シリーズの話から、3回目接種の話に移ります。

既にこびナビでも、皆さんからいくつか発信もされていますが、3回目接種については、結構大きな動きがここ1週間の間にありました。
1番大きかったのは、3回目接種をどの対象に、どういう優先順位で行うのかという問いです。

ご存知の通り、2回目接種までは
・医療従事者
・65歳以上の高齢者
・基礎疾患のある人
といった優先順位を設定して実施しましたよね。

3回目接種ではどうなのか注目されたのですが、10月28日に行われた厚生労働省厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会)の審議の結果、3回目接種では優先接種の対象はもうけないと結論されました。

これはあくまで分科会の、意思決定というかコメントですので、実際に、政策的にどうするかという次の段階はあるわけですけれど、こういう言葉、決定になったんですね。

なので、医療従事者や65歳以上の高齢者、基礎疾患のある方という枠組みはもうけずに、基本的には自治体=市町村からの接種券が発行されて、全ての方がその接種券を受け取って接種に進む枠組みになりそうです。
つまり、希望される方については、基本的には3回目接種を行うんだという国内の方針となりました。

接種は職場では行わず、集団接種会場か個別の接種なのかは別として、自治体が準備した場所で行うことになりました。医療従事者については、どうせ病院に勤めているんだからということで、特例的に職場(病院)での接種を認めますというコメントがされたんですね。
(注)後日、3回目の職域接種の可能性も報じられました。


これについて、こんな意見も出ています。
国立病院機構本部総合研究センター長、伊藤澄信委員は、
「国内の新型コロナの発症率を勘案すると、2回目接種を完了した全ての人を対象とすることには違和感がある。どの人が一番推奨されるのかのメッセージを出すのが、この分科会の役割じゃないか」
というようなことを委員としてコメントしています。
これは、同様の感覚を持たれる方も多いでしょう。
「優先順位をつけなくていいのか」という物言いだと思います。

先週はこのような内容で決定が出されてきました。
それに沿って、接種計画や都道府県に対するワクチンの配分が行われる見通しなのですが、いかがでしょうか。
こびナビの方は何かコメントがありますか?

木下喬弘
これは、優先接種もそうなんですけど、根本的に、3回目接種って努力義務になるんですか?

吉村健佑
いい質問ですね。ありがとうございます。
これね、明確に書いてないですねそこは。

努力義務については、5-11歳の子どもについて議論されていますが、3回目接種については書かれていないので、そのまま努力義務の予防接種法の記載で行くんじゃないかと思いますけど、どうでしょうか?

木下喬弘
すみません、ちょっとちゃんと把握してなかったのですが、5-11歳も努力義務なんですか?

吉村健佑
そもそも5-11歳は、まだ接種が許可されてないんですが、許可されるとした場合に任意とするか努力義務とするかは、議論の余地があると言われているんですね。
ちょっと話を混ぜちゃってすみません。
その前に、3回接種については特に議論されていない様子を見たり、自然の流れだとそのまま2回目接種同様に努力義務になるんじゃないかなと思います。

木下喬弘
努力義務って、法律的にそこそこ重いわけじゃないですか。
以前、「努力義務」は「任意」だという戦いで結構炎上したんですけど(笑)

努力義務って例えば、「男女雇用機会均等法では企業は男性と女性の賃金を同じようにする努力義務を負っている」とか、そういう使われ方をしている用語だと思います。
それって絶対「企業が好きにしていいよ」というわけではないじゃないですか。

基本的に守らなければいけない国のルールなので、もし3回目接種を努力義務にするなら、最終的な接種の可否は選択できるとしても、国が結構強くおすすめしているというのが、僕の認識なんですよね。
そうなのであれば、ワクチンのメリットとデメリットって、イメージで言うと桁2つくらいは差があって欲しいと思うんですよ。

吉村健佑
2回目接種までと、3回目接種とを比べると、ということですね?

木下喬弘
そうですね。
つまり今、全ワクチン接種対象者に対して努力義務を課していることには何ら違和感がないのです。
それはワクチンを打つこと/打たないことのメリットで言うと、15歳以上に関しては、圧倒的に打つことのメリットのほうが大きいからです。
桁が違うというのは、要はいい勝負にもなっていなくて、メリットが圧倒的にデカイから努力義務は成立していると。

例えばの話ですよ。
16歳の子どもの3回目接種みたいな話になれば、心筋炎のリスクがあるので、これ、メリットとデメリットが相当拮抗すると思うんですよね。
もちろん、その心筋炎のほとんどが軽症だということはわかっています。

とはいえ、コロナのリスクも相当低いわけですから、科学的にメリットとデメリットを比較すると、かなり難しいところになるんですよね。それで努力義務を課すのはアリなのかな?というのが、これ結構微妙だと思うんですけど……。

優先接種順位を決めないことに対して、別にそこまで反対ではないのです。
今はそのワクチンのメリットって感染の流行状況によるわけじゃないですか、かなり。
集団免疫的な要素をメリットに足すのは、非常に計算するのが難しくて、実質不可能なので、それを諦めて個人レベルのメリット/デメリットで比較すると「拮抗するなあ」とは思います。
しかし、トータルで考えて、ワクチンのリスクって別に全然高いものじゃないし、十分受け入れられるものだと僕は思うので、自分なら接種をするだろうという前提です。
だから、高齢者以外にも開放することは構わないと思うんですけど、それを推奨するかどうかは、ウルトラ微妙……だなと思ってたんですよね。

吉村健佑
なるほど、ありがとうございます、木下先生。
非常に鋭い指摘で、「努力義務」をどうとらえるかというところから考えなきゃいけないかもしれませんね。
非常に重要なものですし、木下先生のおっしゃる解釈もあるかと思うので、努力義務というものの幅ですよね。任意と義務との間にある努力義務とはどういうものなのか。一般的には「努力する義務がある」という事で、結構強い用語と思います。

そして、それをどこまで国民に対して推奨していく、ないしはメッセージとして出していくのが適切なのかということは、論点の1つとして十分あると思いますね。
第3回目接種をどう扱っていくのか、また年齢が下がったときにどう扱うのか、ここは引き続き見て行きたいと思います。

確かにメリットとデメリットを考えていくと、2回目の接種までと大きく変わってくる可能性があるので、そこは丁寧な情報発信が必要なのかなと感じました。

優先順位を決めないという話ではありますが、その一方で、2回目接種から3回目接種までの間隔は「概ね8か月以上」という決まりをもうけています。
このルールにより、2回目接種の進んだ順番で8か月が経過して、自分の番、3回目接種が回ってくるので、実質的には2回目を打った順番で回ってくると思います。

具体的に4月1日に打った人は、8か月後ですから、12月1日以降になります。
私も病院勤務で、確かに3月末と4月の頭に順番が回ってきて2回目の接種を終えていますので、自分の番が回ってくるのは早くて12月の頭です。
医療従事者からはじめて、次は高齢者というふうに、実質的には2回目接種の順番で回ってくるのかなと思います。

これと関連してもう1つ情報が出ていまして、「3回接種の考えを示すのはいいけど……」ということで、これまた知事会が登場します。
10月27日、平井鳥取県知事は「交差接種*についてどう考えるか、早期に考え方を示してくれないと、実際に接種を進める自治体側としては困る」という話をしていました。

*交差接種…前回と違うメーカーのワクチンを打つこと。例として、1回目と2回目がファイザー社製、3回目がモデルナ社製のワクチンの接種となる場合など。

基本的には1回目、2回目と同じ会社のワクチンを接種する、という考え方のようですが、交差接種についても早めに意見を出してねと、そうでなければ、オペレーションする側としては計画が立てられないよという話を厚生労働副大臣にお話をしたというコメントが出ていました。

ここまでいかがですか?
木下先生のコメントに対してでも結構ですし、スピーカーの方、意見、コメントありますか?

ばりすた先生
やはり、3回目をどうするかが非常に大事ですね。
特に現場の医者目線で言うと「3回目って、打つんですかね?」とか「打った方がいいんですかね?」という声を、今2回目を打たれる方からも既に聞いています。
正直、どう答えようかと非常に悩むんですね。

先ほどもお話があったように、医療従事者や高齢者、あるいは免疫の付きにくい方については、相対的にはメリットが上回る状況が出てくるでしょうけれども、一概には言えないところがあります。
流行状況などにもよってきますし、非常に難しいコミュニケーションになるだろうなと考えています。

優先順位を実質的に設けないとしても、引き続き3回目を打ったほうがよさそうな因子が何なのかは、個人の医師としても、情報は収集していかなきゃいけないなと思いますし、同時に、そういう情報が共有されるといいなと思います。

あとは実質的な、オペレーションでは、感染状況が落ち着いていたらそれほど需要はないけれど、感染が今後急拡大してくると、「やっぱり3回目打つぞ!」みたいな人がいっぱい出てきて、ロジスティクス(物流)がすごく大変になりそうだなという感じも受けています。

今までの2回目までだったら当然「とりあえずできるだけ打ちましょう」といった方針でしたが、3回目では、流行状況に合わせて接種希望が変わってくるので、ワクチン供給の調整も非常に大変になるだろうなと、聞いていて思いました。

吉村健佑
ばりすた先生、コメントをありがとうございます。
今、2点非常に重要な指摘かなと思いました。

こびナビでも「3回目接種の必要性をどう説明するか」の議論をしていると、2回目までのプライマリー・シリーズに比べて、3回目接種についてのエビデンスがまだまだ十分じゃないよね、部分的なところがあるよね、という話は出ています。
木下先生も3回接種のまとまった話もしていますけれど、なかなかそこでも全体像が見えてくるような研究はまだまだ足りないのかなと、私個人は考えています。

アメリカやイギリスなどでは数万人単位の陽性者が今でも出ていて、そのうちどれくらいが重症化しているか、入院するかという情報がもっと必要だと思う一方で、やはり数か月経って、諸外国の状況を見ていても、ブレイクスルー感染がもう一度起こってくるんじゃないかという懸念はあります。

ただ、諸外国では感染予防対策(マスク、手洗い)がかなり不十分になってきていますから、その影響もあるのでしょう。
その観点からはワクチン接種の方がいいのかなという、かなりこれは大雑把な接種のモチベーションに繋がるのかもしれません。
こびナビとしても引き続き、情報収集と発信をしていく必要があるかなというのが、1点目の(3回目接種の)必要性についてです。

私個人は医療従事者ですので、検疫官としても陽性患者さんと日常的に接近する環境にありますから、迷わず3回目接種に進みます。
その方が置かれている環境や流行状況に左右されるとも思います。

もう1つ、ロジスティクスについては、ばりすた先生がおっしゃる通りです。
感染の流行や自治体の準備の状況はあるかと思うのですが、1つ言えるのは、なぜ日本がこれだけ接種が進んだかというと、いろんなプラスの要因がありますが、1つは感染拡大していた8月~9月の頭くらい、日々ニュースで最高記録、最高記録と出ていたときにちょうどワクチンのロジスティクスの準備が整って、一般の方が打つタイミング、ないしは意思決定するタイミングと感染流行期が重なったんですね。
これは大きなワクチン接種のモチベーションになって行っただろうと考えています。

ですので、今回第3回接種が進むとしたら、やはり感染が拡大していると注意が喚起され、メディアでの報道もされ、関心が寄せられて、じゃあ3回目の接種に進もうという方も増えて、ワクチン接種も進むのかなと予測をしていますが、そこは今後見て行かないとわかんないかなと思っていました。

コメントをいただいてありがとうございます。
その他、コメントありますでしょうか?

谷口俊文
やはり先生方がおっしゃっていた通り、感染の起点となる若年者のワクチン接種が8月~9月で急速に進んだことで、かなり今は落ち着いていますが、やはり抗体価は経時的に低下してくることが分かっています。

コロナって、多分なくならないじゃないですか。
多分、日本の中でもどこかでくすぶっている、もしくは海外から入り込んでくるということもあって、やがてまた少しずつ出てくるのかなと実は予想しています。
それがどういうタイミングで出てくるかというと、やはり8月、9月から数えて4~6か月くらい、年明けくらいのタイミングを、実は僕、1番注目してるんですね。

ラッキーなことは、医療従事者への3回目のブースターショットが12月から始まって、医療従事者の方はなるべく受けて欲しいと思うんですけれども、その時に、1月~2月頃から、ご高齢の方のブースターショットが始まればいいかな考えています。

そういったときに、また感染の再拡大があるかどうか、なんとなく見えてくるわけじゃないですか。そういった中で、感染の流行状況に合わせた本当の必要性が見えてくればいいかなと少し思ってます。

僕は個人的には、感染がまた拡大しないとブースターショット打たない、という考え方はあまりして欲しくないなと思っています。
なるべくならダメージを最小限に抑えて、やはり、必要な人に関してはみんな3回目の接種をして欲しい。もうね、8月みたいな思いをするのは嫌だなと思っています。
どのようにリスクとベネフィットを説明していくべきかは、こびナビ内でも議論していかなきゃいけないなと考えています。

木下喬弘
私も全く同意見で、現時点でのメリットとデメリットの比較に固執せずに、打てばいいと思うんですよ。
感染の流行状況が悪化したら確実にまた「メリットが上回る」ので、それを待った場合、すぐに打てるとも限りません。

そして、リスクは固定していて、別に「いつ打っても3回目接種のリスクは変わらない」わけじゃないですか。そのリスクが、コントロール範囲内にあると僕は思っているので、打てばいいと思うんですけど、人に勧めるかどうかはめっちゃ微妙になってくるんですよね。

結局、また努力義務の話に戻るんですけど、一定程度、努力義務を履行していない人というのは、社会に対してそれなりに不利益を与えているわけじゃないですか。

これは厳然たる事実なわけで、定期接種のワクチンはすべて集団免疫効果があるものをA類の疾病として選択して、努力義務を課している以上「努力義務を課されているけれども接種しない」という選択が可能だけど、それは社会の中で感染を広げることに影響します。
だからこそ(A類疾病のワクチンを)やっているわけで、だから人に勧められるわけじゃないですか。「それって良くないですよ」というか「まあ打った方がいいですよ」ということですよね。

だけど、この3回目接種に関しては、本当に極めて微妙なんですよね。
個人レベルで「打ったほうがいいですか?」って相談されたら、僕はもう「いつ感染流行するか分からないので打っといたらどうですか?」って言うけど、全体に発信していくときにそう言っていいのかどうか。

逆に科学的にはデメリットの方が上回るという計算をしようと思えばできると思うので、そういうツッコミが入ることを考えたときにどう勧めるのかは、めっちゃムズいなあと、最近ずっと思ってるんです。

吉村健佑
ありがとうございます。
そうですね、谷口先生は日々、現場で重症化されている患者さんを診ている立場で、やはりあの状況は二度と起きてほしくない、という強い思いが背景にあるのかなと推測します。それで「予防できることは予防していこう」という考え方ですよね。

一方で、エビデンスについて十分な蓄積の余地がまだあるのか? 接種の必要性について、相対的には、2回目までに比べると下がってくるんじゃないか? というコメントもあると思っていて、そこは本当に、まさにこびナビ内で議論中というところですね。
何か、明確な結論が出てくるわけではない。
当然それもあって、国のワクチン分科会も、その辺のコメントは最終的には明確にするものじゃなくて、優先順位を付けずに準備をするところに留まっているわけです。

日本国政府は「希望する方については3回接種を受けられるようにする」という環境を整えています。ワクチン接種を希望する方については、ちゃんと届くようにしようとする、ここはいい要素だと思いますね。

あとは情報を見ながら、ないしは状況を見ながら、個別にどう判断していくかになってきますので、ロジスティクスをちゃんと準備しておいて、接種したい人については接種できる環境を整えてくれている、これは政府側が非常に前向きな姿勢なのかなと感じました。

すみません、ここについてはまだ結論が出てこないかもしれません。

以上で3回目接種については大丈夫でしょうか。
結構いろんな意見が出てきて、この点はまだまだ面白いですよね。
引き続きこびナビ内でも情報収集と発信をまだまだしなくちゃいけないのかなというところです。


【日本でも「5-11歳の接種」準備が進んでいる?】

吉村健佑
あと、ここ2週間のニュースで1つだけ触れておきたいと思います。
先ほど木下先生との議論の中で出てきましたが、5-11歳の接種ですね。
これも最近いろんな動きが出てきて、アメリカは10月26日、FDA の外部有識者委員会が、5-11歳の接種許可というニュースが出たのは、こびナビでも発信したかと思います。

それを受けて、日本でも10月28日に磯崎官房副長官が「今後安全性を確認して、5-11歳の接種についても検討し、適切に対応していく」と述べたり、ファイザー社が政府との協議を既に進めているという報道もされています。

おそらくアメリカが認可されたので、日本も早晩そういう環境になってくると思います。
お子さんの接種に関しても許可されて、選択肢になってくるということで、お子さんの接種に対してどういう情報が必要かということもこびナビで議論し、今後、情報発信も考えていきたいなと思っています。

今日は3回目接種の話でだいぶ盛り上がりました。
こんないろんな意見やポイントがあるということで、皆さんのご判断の際の参考になればいいかなと思います。

さて、今日は以上でおしまいにいたします。
多くの方に聴いていただきましたね。皆さんありがとうございました。
皆さん、今日もよい一日にしましょう。ではこれで失礼します。
じゃあね、バイバイ。


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