見出し画像

コロナ禍でのオンライン診療について議論しました(9月21日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年9月21日時点での情報を基にされています。※

2021年9月21日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:吉村健祐


吉村健祐
おはようございます。9月21日、こびナビの吉村が担当する朝の Twitterスペースを始めます。

9月半ばぐらいから、ずいぶん国内の感染状況も落ち着いてきましたよね。千葉県対策本部の状況を見てみましても、随分穏やかな感じになっております。

千葉県内の状況を見ると、だいたい一日の感染者数は200人ぐらいです。8月のピーク時は1700人くらいでしたので、それに比べるとずいぶん落ち着いて来ました。ただそれでもまだ県内で入院されている方は600人ぐらいはいらっしゃいます。ホテルに入ってる方も200人から300人ぐらい。それから在宅療養者はだいたい2500~2600人。まだまだ治療中の方はたくさんいらっしゃるんですけれど、だいたい全部合わせて3500人ぐらいになってきました。
まあこれはあくまで千葉県の事例ですけど、全体的に少しずつ収まって来て、第5波がそろそろ少し下り坂になってきたなという印象です。
しかしまた数か月したら第6波がくるわけですよね。ここで少し振り返ったり、何が出来たか、どこが対策できるかなということも少し考えながら準備したいと思います。

週末に日本精神神経学会というのがありました。
私も毎年だいたい参加してるんですね。今回は2つほどシンポジウムでお話させてもらいました。そのうちの1つが精神科医療のオンライン診療についてだったんですよ。
厚生労働省にいた時に、オンライン診療とか遠隔医療の制度設計・ルール作りなどもやっていました。その縁もありまして、この精神科領域のオンライン診療のシンポジウムは毎年仲間の先生方と一緒にやっています。
特に慶應義塾大学の岸本泰士郎先生という方がいらして、その方と色々長く取り組んできたテーマなんです。

▼岸本泰士郎先生
https://k-ris.keio.ac.jp/html/100006125_ja.html
出典:慶應義塾研究者情報データベース

そこで「オンライン診療・電話診療はコロナ禍で拡大している」という話題が少し出ていました。
現在、千葉県内にも在宅療養の方が結構いらっしゃるということを少し紹介しましたが、それに関連してオンライン診療の話から入っていきます。


コロナ禍でオンライン・電話診療はどう変化したか

その学会で面白い話を聞きました。
全国的にも全世界的にもオンライン診療がかなり普及していて皆さん当たり前にやってるよ、と。
実はいろんな診療科の中で、1番普及しているのが精神科領域だという話も出ていました。初診の時は身体診察は別として、精神療法だけであれば接触せずに診療しやすい領域なので、広がると思います。

例えばドイツではロックダウン中は対面での診療が「原則禁止」なんだそうです。そこで基本的にオンライン診療で外来診療を行う。
採血が必要な患者さんや定期的に徐放性筋注薬 の必要な方については、当然対面診療が必要になるんですが、それ以外の方は基本100%オンライン診療、という話も出ていました。

▼徐放性筋注薬・・・
1回の筋肉注射で数週間効果が持続する薬剤。服用忘れや間違いを防ぐことができる。血中濃度も安定するので定期的な内服が難しい場合や、内服では効果の出にくい場合も使用できる。

ロックダウン下における診療方法と、それによってどんな影響が出るのかは、是非今後検証すると面白いと思いました。結構ドイツのような極端な地域や国もあるみたいです。

現在千葉県内でも数千人いらっしゃる在宅療養者の健康を医療的に支えている主体・方法は、大体3つぐらいあるんですよね。

1つ目は保健所
保健所の方が毎日電話をしたり情報を取って重症化してないか等を確認する。
これは非常に大きな労力と苦労があると聞いてます。

2つ目は医師の往診
医師が電話などで状況を聞く。
悪化がある場合の入院調整は保健所経由でも行いますが、医師自身も往診をし酸素投与を行う。酸素濃縮器を届けて在宅で支えていく状況を作る。
例えばファストドクターで、菊池亮先生という方がテレビにも時々出てこられますが、そういった方々が在宅診療の支援をずっとされています。これはこれでとても大事な活動だと思います。

▼【救急相談窓口】ファストドクター
https://fastdoctor.jp/

3つ目はオンライン診療です。
かかりつけの病院とか地域のクリニックの先生が、電話診療やオンライン診療を行ってご自宅での状況を支える。
または、もう薬が切れてしまったり普段の治療が必要な方については、電話診療などで処方してお薬を送り届ける。薬局と連携しながら、ご自宅での療養を支えている。

ご自宅でお休みされている方はこんな感じの3つぐらいの方法で支えられています。
3つ目の電話診療やオンライン診療についてのこれまでの経緯を少し振り返りながら、日本ではどういう状況なのかを紹介していきます。

オンライン診療が保険に収載された、つまり保険診療になったのは2018年の4月からです。コロナ前ですね。
ただ制度そのものやルールはできたんですけど、なかなか条件も厳しかったりして、あんまり一気に広がっていない。保険診療件数の総計が2018年度は年間で1000回程。2019年度は2000回とかです。そんな感じなんですよ。
1000回、2000回しか行われない診療行為はめちゃめちゃ超レアな診療行為になるんですね。

▼厚生労働省 NDBオープンデータ
NDBオープンデータ (mhlw.go.jp)

ところで、日本人全員合わせると年間何回ぐらい外来に受診するか、外来受診回数がどれくらい累積されるのか?と想像してほしいんですが…
だいたい年間何回くらいですかね?
今日スピーカーの先生方が3人ぐらいいらっしゃいますが。
どうでしょうか。感覚がありますか?お話できる方いらっしゃいます?

黑川友哉
おはようございます。
子供と大人でかなり幅があるかなとは思うんですけど、全部平均するとどうでしょうね?
まあ…日本人1人当たり1年間で3回か4回ぐらいになるのかなぁ、という予想はいかがでしょうか。

吉村健佑
ありがとうございます、黑川先生。非常に良い線いっていて、年間3、4回と。実はイギリスとかアメリカとかはだいたい5回ぐらいです。フランスも6回。
日本はですねなんと! 年間12.7回ですね。外来受診が。全国民がですよ!

黑川友哉
(笑)全然いい線いってないじゃない…

吉村健佑
(笑)いってるいってる!

黑川友哉
やっぱ日本ってアクセスいいんですね! こう比べて見てみると顕著に見えてきますね。

吉村健佑
アクセスがめちゃくちゃいいんですよ。
なので、年間の国民の外来受診回数を合計すると15億回とか行くんですよ。15億ですからね、なかなかすごい数字なんですけど。
さっき言ったとおり、このうちオンライン診療は千回二千回です。ということは、ほとんど無に等しいような割合だったんですね。日本は対面99%以上、みたいな感じの国なんですよ。

それで2020年4月にコロナが拡大して、このオンライン診療と電話診療に対しての衝撃的な規制緩和が行われました。

▼「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」についてhttps://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020/20200407_taisaku.pdf
出典:第27回新型コロナウイルス感染症対策本部 2020/4/7

本当に細々とやっていたオンライン診療なんですが、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策、なるものがバーンと打ち出されたんですね。これは閣議決定されたんです。その中で医療提供体制の強化という項目がありまして、オンライン診療・電話診療の活用が打ち出されました。
これは私はちょっと面食らって、びっくりしました。それまでテレビ電話をベースとしたオンライン診療の制度設計が進められてきていて、電話での診療はちょっともう過去のものになりつつあったんですね。
それが突然、電話で診療してオッケー、とされました。

4月7日に閣議決定され3日後の4月10日には厚生労働省医政局、医薬局から、時限付特例的措置として電話診療・オンライン診療を拡張・拡大するという事務連絡が出ました。

▼新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000620995.pdf
出典:厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課
2020/4/10

特にこの中で大きかったのは「初診から」ですね、初診から電話診療でよいと。
電話診療で診断をつけて処方箋を出して薬を出すことをOKにしました。
これが2020年の4月ですから、非常に早かったですよね。ダイヤモンドプリンセスの件がようやく落ち着いてきた頃でした。
日本の国内でも蔓延が見られ始めた段階で規制緩和を行って、診療体制を整えた。
当時はまだ従来ウイルスの時代ですけれど、新型コロナウイルス感染症という病気がよくわかってなかった。対面診療での感染リスクが高いということで、オンライン診療・電話診療を日常的に行おうと決めました。
そして4月10日に前述の事務連絡が出て、一気に「患者さんも不安をお持ちだし、じゃあ電話でやろう」となりました。テレビ電話の環境だと患者さんも医療機関もちょっと機器の準備しなきゃいけないですけど、電話ならその場にありますので。
それで診療をどんどん行って、お薬が滞りなくちゃんと届けられるようにしよう、という動きになりました。

それでは、2020年4月以降は実際どれぐらい電話診療・オンライン診療がなされたか?

それ以前はだいたい年間二千回ぐらいと説明したんですけど、テレビ電話を用いた診療もその後増えて、4月以降は「オンライン診療の初診」だけで年間1万回ぐらいのペースで増えました。

さらに「電話で初診」。電話で「もしもし、はじめまして・・」から始めて診断つけて処方する診療行為です。これは保険診療でやってる範囲ですけど、一気に年間30万回ぐらいに増えたんですね。

さらには初診じゃなくて再診も増えました。
一度かかっている方、または対面で初診を済ませている方の再診を電話で対応する、という電話での再診です。回数として月に40万回から100万回。つまり年間大体700万~1000万回位のペースに到達する勢いで、行われたことになります。
これは結構すごいことです。
年間1000回程度しかやってなかった診療が一気に年間1000万回に伸びるわけです。それぐらい一気に診療行為が増えたということになります。

おそらく多くの医師が初めて電話で保険診療を行って処方箋を出す、という経験をしたんじゃないかなと思うんですけど、いかがでしょうかね?


耳鼻科は不向き⁈

前田先生や黑川先生はこの1、2年の間に電話での診療は経験しましたか?

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
そうですね…電話診療で初診…僕はしてないですね。再診はありましたけれども。

黑川友哉
私も電話での診療は無いんですが、治験を遠隔でやっていこうっていう動きはあります。
この動きはかなり活発化していて、世界的な臨床試験のルールである GCP(Good Clinical Practice:医療品の臨床試験の実施の基準に関する省令)の中にも、遠隔で行われる治験が定義されるように動いているところなんですね。

遠くに住んでてなかなか新しい治療の研究開発に参加できない方も、今後どんどん参加しやすくなるようなプラットフォームの構築が進んでいる、ということだけちょっとコメントしておきます。

吉村健佑
ありがとうございます。さすが PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)との関係で治験に熱い黑川先生ですね。
患者さんのリクルートから完遂まで、治験参加もやはりオンラインや遠隔で支援できる環境を作ってあげた方が良いですもんね。是非進んで欲しいです。

前田陽平先生
診療科による差は結構あるかもしれません。僕と黑川先生は耳鼻科なので。
耳鼻科で遠隔診療を結構やってる先生、往診による診察をよくやってらっしゃるような先生は、割とやっていらっしゃったりするんですけど。他はまだまだすごく少ないですね。
多分内科系の先生の方がやはり多いんじゃないかと思うんですよね。

黑川友哉
僕と前田先生が喋ると耳鼻科の濃度が濃い(笑)
耳鼻科は「対面して見て処置」がクリニックでの gold standard というか、いちばん自分たちの力を発揮できるところなのです。オンラインとの親和性というのは、特定の疾患を除くとなかなか難しいかなというのはありますね。

前田陽平先生
そうですね。観察も難しいようなところがありますね。(笑)

吉村健佑
確かに眼科や耳鼻科、歯科など患者さんに接近して局所の観察を行う診療科はオンライン診療にはちょっと向かないのかもしれません。
全世界的にも精神科や、体表の画像で状態が評価できる皮膚科などの領域の方が進んでいると言われています。
実際に診療科を見てみると、オンライン電話診療を行ったところはだいたい7割近くが内科の診療ですね。3割弱で小児科が続いてます。小児と内科で8割~9割というところが実績ですね。
でも耳鼻科も厚労省のデータを見ると2.5%ぐらいですが、ちょびっとだけありますね。
例えばアレルギーの方などの、問診で済むような診療行為ならありうるのかな、と思って見てました。

黑川友哉
そうですね。おっしゃる通りです。花粉症の時期になって症状出てきて、病院へ行かないで電話で診察受けて、毎年もらっていつも使っている薬を出してもらう。そういうことは知り合いのクリニックさんでもされている、と聞いたことありますね。

前田陽平先生
開業医の先生方がされてるのは舌下免疫療法の薬を定期的に処方している方やアレルギー性鼻炎、あるいはかなり安定してる状態の慢性疾患で投薬を中心にされている方。あとは睡眠時無呼吸症候群とかで CPAP を使ってらっしゃって、機械をちゃんと使えているかを診察されるような方です。いわゆる往診による診察ですけれども、これらは定期的に診察する形です。

ここで経営的な話するのはちょっと違うんですけど…耳鼻科のクリニックは内科などと違って、「〇〇管理料」で診療しているパターンはめちゃくちゃ少ないんですよね。実際に処置したり投薬するというところでコストが発生するのがほとんどなのです。ですから電話診療だとなかなかペイしにくいっていう事情もあるようですね。

吉村健佑
ありがとうございました。2人の耳鼻科の先生方に詳しく教えていただきました。

話を戻します。
電話診療行為そのものが年間1000万回に到達するぐらいに広がってきている。しかしこれはあくまでコロナ禍における時限付き措置であると冒頭に説明しました。
あくまで緊急事態なので、時限的特例的な取り扱いで対面診療を避けたオンライン診療を許可しているんです。
これがその後、政府の方針が変わってきました。今後コロナが終息した後も継続するという方針になってきています。
それを紹介してまとめていきます。


オンライン診療の今後

あくまで今はコロナの感染拡大予防ということでやってるんですけど、そうではなくて規制緩和して、オンライン診療を診療・医療の新しい在り方の1つとする。そうして患者さんの選択肢を増やすことが必要だ、という政府方針が打ち出され始めました。

▼規制改革実施計画
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/keikaku/210618/keikaku.pdf
出典:内閣府 2021/6/18

毎年開催されている規制改革推進会議ですが、今年も6月18日に規制改革実施計画が閣議決定されてるんですね。
その中に「オンライン診療・オンライン服薬指導特例措置の恒久化」という文言が入ってます。特例じゃなくてずっと継続するんだよ、ということが大きな目標として掲げられています。

これは国の方針ですから、厚労省も省庁のひとつとして、制度設計を急いでいます。
具体的には来年4月に診療報酬改定があります。2年に1回行われる国の医療の公定価格を変えていく手続きですが、その中でおそらく議論されて組み込まれ、オンライン診療を診療のあり方の1つとして、コロナ禍以降も定着化固定化するという議論に一気に進んできています。

私自身はすごくいいことだなと思っています。さまざまな生活や地域の特性もある中で、患者さんを外来で診療し往診で拝見する事に加えて、オンラインで診療するということは、選択肢を増やしていくことになると考えています。

ちなみに電話のみで行う診療はおそらくあくまで緊急的時限的なもので、今後はオンラインで顔を見ながらお話できる環境を作って、それをもって診療する。そのようなオンライン診療が恒久化されていくという議論でした。
国の議論は概ね進んでまして、このまま恒久化に向けていく方向です。あとはどれぐらい値段が付くかということも重要なことですが、その議論もしています。
こんな形でオンライン診療が定着していきます。

最後に、現在コロナ禍における特例措置で、どれぐらいの診療報酬が貰えるかをちょっと紹介していきたいと思います。

そもそも皆様は医療の「金額」なんてあんまり意識されたことないかもしれません。
対面で初診で病院にかかると初診料ってかかるんですよ。いくらくらいか皆さんご存知でしょうかね?
初診料が288点ですね。つまり、2880円が医療機関の報酬として入ります。
当然患者さんは全額を負担しないですよね。多くの方は7割は保険が負担、3割が自己負担。高齢者は9割を保険がカバーして、1割が自己負担という計算になりますので、10分の3とか10分の1が自己負担になります。ですからだいたい2880円ぐらいか病院に入ります。
ではオンライン診療ではどうなのか?
初診をオンラインや電話で行うと214点=2140円が医療機関の報酬になる。
電話で再診を行ったりすると再診料は73点=730円。
さらに管理料の147点=1500円弱。
この管理料とは慢性的な疾患患者さんに対するものです。例えば高血圧の方や糖尿病の方が電話で診療を行って薬剤投与を受けたりする場合です。
再診料と管理料を合わせて2200円ぐらいの収入が病院に入るようになってます。
しかし、いろいろな手続きや準備が必要で、2200円くらいでは不十分なので、
もう少し点数を付けて欲しいという意見が現場から出ていました。

そこで今年8月16日に、在宅療養しているコロナの患者さんに限っては、電話やオンラインでの診療を行った場合には1回250点=2500円上乗せして、医療機関が収入を得ることができる、という特例措置も追加されました。

▼新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その54)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/iryo_shido/000198643.pdf
出典:厚労省保健局医療課 2021/8/16

コロナの患者さんを対応するとだいたい1回の診療で4700円ぐらいの報酬が取れる。
これは診療報酬の制度設計の中ではかなり気前のいい設計になっています。
コロナの在宅療養の患者さんを支えている医療機関にとってはとても後押しになりますし、オンライン診療が普及して行く為にも非常に重要な仕組みだろうというふうに思います。
しかもこの250点=2500円は一日一回算定できる。例えば、10日間毎日電話診療を行えば2500円×10回分=25000円分の報酬を算定して請求することができます。
在宅での診療は手厚くカバーされてる状況です。もちろん、入院での診療も手厚く点数がついてます。
こういったオンライン診療にかかるお金も大きく変えていきながら、患者さんに対してサービスを提供できるようにしていこう、という制度設計が進んでいます。

一気に色々話してしまいましたけど、なんかコメントとか質問あります?
安川先生何かありますか?


テクノロジーで進化する診療

安川康介
コロナになって telemedicine・telehealth はアメリカでもすごい進んだと思います。
具体的にどれぐらいかっていうのは色々あるんですけども、こういった技術を使った virtual visit は、多分30倍ぐらい増えていますね。病院で大体10%~20%の外来診療がオンラインに移行したようなことも書いてありました。

ちょっと話を戻します。
僕の個人的な感想なんですけど、日本の外来の回数が多いのは、処方するためだけに1か月に1回、例えば血圧の薬を貰うためだけに行く場合があるからじゃないですか?そういうのはアメリカの場合無いんですね。
血圧が安定してたら3か月分ドバっと処方する。長い人だったら90日分処方して頻繁にこなくてもいい感じになっています。その分、1回の診療時間を日本よりも長く20~30分ぐらいとってやっていると思います。別にアメリカの方が良いって言ってる訳じゃなくて、回数の違いはそういうところからきてるのかなっていうのが、僕がアメリカで働き始めて感じたところではあります。

今後 telemedicine した場合としてない場合で、患者さんの治療成績が変わらないということがはっきりわかってきたら、どんどん virtual visit とか telemedicine の方に移行してくるのかなと思います。

現在、テクノロジーによって医療が変わってきている時期だと思います。これは患者さんと医師の外来診療だけではありません。
例えば、集中治療医の専門医がいないような比較的小さな病院だと、iPad みたいなもの
で集中治療医と繋いで、その医師と一緒に実際の患者さんを診療する技術があります。
放射線科医などは院内にいないで、誰か起きてる放射線科医の人に画像を送って、読影してもらうっていうことも、多くの病院がやっていると思います。病院で放射線科医がいない時間はどこか別のところにいる放射線科医がオンラインで読影しているとか。
デジタルでいえば、ウェアラブルデバイスみたいなものを患者さんがつけていて、そういう情報をリアルタイムで主治医が把握して診察するとかですね。
耳鼻科は、例えば今後は Airpods みたいなものを入れて、耳の奥や鼓膜が見えるぐらい便利になったら、オンライン診療ももしかしたら広がっていくかもしれません。
コロナのことで一気にガンって進んだ感じがするので、今後すごく楽しみな領域ではあります。

吉村健佑
安川先生ありがとうございます。多くの情報提供と話題提供をしてくれました。

リフィル処方箋(一定の期間内に反復使用できる処方箋)やいわゆるドゥ処方(複数回同一処方)。
teleICU(ICU をオンラインで遠隔コントロール)の試み。
teleradiology(遠隔での画像診断)などの事例を紹介してくれました。
その他 IoT で生体をモニタリングする機器が開発され発展していけば、病院に来て対面で医師に相談しなくても、日常的に患者さんの状態を観察することができる。その情報を継時的に集めていくことで、むしろ外来よりもリッチな情報を主治医に伝えることができる。そうしてより正確で質の高い診療につながる可能性もある、といわれてますよね。

ということで、安川先生からの「オンライン診療はアメリカでずいぶん拡大したよ」という情報提供でした。

日本では、保険のオンライン診療とか電話診療の数で言うと、5000倍とかの勢いで拡大しました。これは、大きな前進というか変化だなと思います。

以前は精神科医の方々を前にこのような話をすると「いやいや。オンラインや遠隔じゃわからないことがある。それによって失われてしまうことも大きいんじゃないか?デメリットも大きいんじゃないか?」という慎重論が必ず出ていたんです。
しかし昨日オンライン診療のシンポジウムで話したときは、診療所で診察している先生方からもそういった慎重論は出ず、むしろ「これ可能性あるよね。対応していきたい」という前向きな発言が聴かれるようになりました。
ここ3年ぐらいで、ずいぶん変わってきたなという感覚を得ています。

日本の医療も、世界に遅れている部分をどんどん取り返して行きながら、今のやり方を変えり、需要に応じて変化していくことが出来るといいですね。
コロナがそのきっかけの1つになれば、これはコロナから社会が得られるものの1つなのかなと思いました。

9時4分になってしまいましたね。そろそろまとめます。
今日はこびナビの吉村がコロナ患者さんの在宅療養の支援という切り口から、オンラインや電話診療の広がりについて話をさせていただきました。

今日は、このあたりにします。連休明けの火曜日の平日ですが、皆さん頑張っていい一日にして行きましょう。
では、これで失礼いたします。お聞き頂きありがとうございました。バイバイ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?