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ワクチン忌避を学術的に紐解きました(8月23日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年8月23日時点での情報を基にされています。※

2021年8月23日(月)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:木下喬弘

木下喬弘
皆さんおはようございます。月曜日の朝8時半でございます。
よく眠れましたか? 
黒ちゃんは?

黑川友哉
いや、眠りましたね。
私は昨日11時ぐらいにはもう寝ましたね。
最近ね、僕は朝活してるんですわ。

木下喬弘
朝活ってなんですか? 

黑川友哉
いやなんかちょっと朝早く起きて、朝飯前に仕事をいくつか終わらせるみたいな。
なんかそういう意識高い系な生活をするようにしてるんですよね。

木下喬弘
仕事が朝飯前になるわけですね。

黑川友哉
そうそうそう。
なんかね。やっぱり遅いと子供が邪魔してくるんで、なかなか集中できないじゃないですか。日中とかも土日は。

木下喬弘
なるほど。

黑川友哉
いや、そうなんですよ。

木下喬弘
だから貴重な朝の時間を仕事に当てていると。

黑川友哉
そうですね。ゆっくり仕事できるんでなかなかいいなと思いながらやってます。

木下喬弘
分かりました。
じゃあ僕もちょっと、もうちょっと朝早く起きるようにがんばろうかな。

黑川友哉
先生はね、そもそもちょっと夜寝るのが遅いとか、寝てるんですか?

木下喬弘
いや、寝てますよ、最近は。
最近気配を消してるでしょ? 

黑川友哉
気配消してる。
いや、でもツイッター呟いてんなとか思いながら。
どんな時間に…ねぇ。


【テーマ1】ワクチン忌避の定義

Noni E. MacDonald, the SAGE Working Group on Vaccine Hesitancy. Vaccine hesitancy: Definition, scope and determinants. Vaccine. 2015;33:4161-4.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264410X15005009?via%3Dihub

木下喬弘
ということでですね、本日のこびスペのお題に行きたいと思います。
これ久しぶりにですね、私、論文の話をします。

で、多分皆さんが思っている感じではありません。

何の話をするかというとですね、もうどストレートに「ワクチン忌避とは何ぞや?」っていう話をしようと思うんですけど。
れおにい。

岡田玲緒奈
はいはい。

木下喬弘
れおにいといえばですね。
「日本にはワクチン忌避なんか存在しないからこびナビの活動なんか無駄だ」みたいなことをなんかちょっと呟いてる人を見つけてへこんでいたことで有名ですが。

岡田玲緒奈
はははは、結構前ですね(笑)

木下喬弘
はははは。
そう、結構前です(笑)

岡田玲緒奈
よく覚えてますね。

木下喬弘
なんていうか、こう目に見えないアンチ活動みたいなことに我々よく晒されるわけですけれども。

反論するつもりは全然ないんです、面倒くさいので。
ただ、それに絡めてですね。

そもそも、じゃあ「日本にワクチン忌避は存在するのかどうか?」っていう議論をする前にですよ。
「ワクチン忌避とはなんぞや?」というところからいきましょうや。

岡田玲緒奈
なるほど。

木下喬弘
ワクチン忌避ってですね、誰が定義してるか知ってます?

岡田玲緒奈
WHO(世界保健機関)? 

木下喬弘
おー、いいですね。
WHO に SAGE Working Group っていうのがありまして。
まぁ、そこの何ていうか、まあ言ったら WHO の委員会みたいなところがですね。
Vaccine Hesitancy というのを定義してるんですけど。

はい、じゃあ、れおにい先生、Vaccine Hesitancy の定義をですね。
ちょっとここで発表してもらいましょうか?

岡田玲緒奈
無茶ぶりですね(笑)

木下喬弘
闘ってきたわけですから、今までずっと。
ワクチン忌避と。
ということは「ワクチン忌避とはそもそも何か」ということぐらいは言えて然るべきだと。

岡田玲緒奈
ちょっと失格になりそうですけど。

ワクチンの正確な情報が届いていなくて、接種した方が良いワクチンが打たれないこと。

木下喬弘
前提条件的なものは、実は定義の中には無いんですけど。

その定義でいうとですね。なんかちょっと今ちょっと思ったんですけど、接種しない方が良いワクチンってあるんですか? 

岡田玲緒奈
パブリックに認められているもので、接種しない方が良いものがあるとはちょっと思えないです。

接種できない対象というのはいますよね。
生ワクチンを妊婦さんは打てないとか。

木下喬弘
なるほど、そういう意味ね。
分かりました。

実はそこまで細かいことは書いてなくて、基本的には Vaccine Hesitancy というのは、全受けが正しいというコンセプトに基づいているんです。

SAGE Working Group による Vaccine Hesitancy の定義っていうのはですね。
「delay in acceptance or refusal of vaccination despite availability of vaccination services.」
ということなので、まあ要するにワクチンを受けることができる、そのワクチンサービスが available である、ワクチンを利用できる状況にあるにもかかわらず delay in acceptance or refusal ということなので、まあ「打つのが遅れる」か、「拒否する」っていうことなんで、
まあ、そうですね「接種するのが遅くなる」、あるいは「打たない」っていうことを Vaccine Hesitancy と定義しています。

で、これなんか「まあそれ以外ないやろ?」みたいな感じかもしれないですけど、これ実は微妙にディスカッションがございまして。

この定義に沿って考えると、ワクチン忌避っていうのは behavior(行動) なわけですよ。

まあ、つまりタイムリーにワクチンを打ってたらワクチン忌避ではないわけですね。
逆に言うと。
言っている意味わかります? 
あくまで「ワクチンが打てるのにも関わらずワクチンを打つのが遅くなったり」、あるいは「ワクチンを打たなかったりする」のがワクチン忌避であるので、タイムリーにワクチンを打っている人はワクチン忌避ではないと。

まあ、この辺は何て言うんですかね。「それはそうだろう」と思うかもしれないですけれど、これね。実は例えば僕がいつも言っているワクチン忌避研究の第一人者であるハイディ・ラーソンとかはですね、ちょっと違う意見を持っていて。

どういうことかっていうと「ワクチンをちゃんと受けている人が、ワクチンに対する信頼性が必ずしも高いわけではない」ということです。

つまり、ワクチン忌避というのは attitude(態度)を含めるべきだという議論があるということです。

言っている意味分かりますかね? 
「結果的にちゃんとワクチンを打っている人でも、ワクチンに対して懐疑的な人というのはいて、それはワクチン忌避である」という議論があるということであるように…
どうぞ。

岡田玲緒奈
嫌々打ったらダメってことですね。

木下喬弘
別にダメっていうわけではないんだけれど、それは忌避ではないかという議論があるということですね。

そうなんです。
で、まぁそれは実はですね、決着ついてなくて。

実はワクチン忌避っていうのは、定義としては一応今のところ behavior(行動)の問題になっていると。
ただ attitude(態度)をどこまで踏み込んでいくかみたいなことをちょっと議論がなされているってことですね。

日本語で言うと、つまり「結果としてワクチンを打ったかどうか」ということで一応決まってるけれど、打っているけれども懐疑的な人というのはどうやって拾い上げていくみたいな議論がまあ一応なされていると。

で、もう1つの論点があってですね。
こうワクチン忌避っていうのは「連続した概念である」というふうなことが SAGE Working Group の書いている論文に書かれているんですよ。

「refuse all」、つまり「全部打たない」というふうにしちゃってる人と、「accept all」、つまり全部打つ人がいると。

で、その間に「accept some, delay, refuse some」という人たちがいるっていうことで。

要するに「いくつか打つけれど、いくつかを遅らせている」とか、「いくつかを打たない」みたいな人っていうのがいて。
それがまあワクチン忌避だっていうふうなことになっているわけです。

で、「日本にワクチン忌避は存在しない」っていう主張の大きな根拠っていうのは、日本って HPVワクチン以外のワクチンの接種率で、結構高いんですよ。

特に多くの定期接種のワクチンって95%以上は打っているので「日本に存在するのは HPVワクチン忌避であり、ワクチン忌避ではない」みたいな。

まあなんというか、トンチじゃないんですけど、屁理屈みたいなことを言う人がいるってことです。

実は、この SAGE Working Group の定義からわかる通り「delay, some」の時点でワクチン忌避なので。

HPVワクチンを打ってない人っていうのは、いわゆる WHO の SAGE Working Group による定義におけるワクチン忌避になるということです。

言っている意味分かります? 
安川先生なんかしっくりきました? 

安川康介
分かります。

木下喬弘
ありがとうございます。

ということで、そもそも「○○ワクチン忌避」っていう言葉っていうのは、まあ別に使えないことはないんですけど、あんまり一般的ではなくて。

ワクチン忌避っていうのは「全受け以外の人たち」で、まあなんというか「ワクチン refusal」という言葉を使う人もいるので、それは別で考えてもいい。

つまり「全部打たない」っていう人は「ワクチン忌避」といわずに「ワクチン拒否」とか「(ワクチン)拒絶」みたいな感じですね。
その間にいる人というのはみんな「ワクチン忌避」ってことです。

この SAGE Working Group の定義に乗ると、実は日本人は、少なくとも女性は、ほぼ全員ワクチン忌避であるということになります。

あんまり言葉遊びがしたいわけではなくて、要は HPVワクチンみたいになる可能性があるんじゃないかということが、僕はこびナビをやっている一番強い原動力なわけですが、定義上も「日本にはワクチン忌避は存在しない」というのは明らかにおかしいよって言いますよっていう。まあそういう話です。

で、ここからなんですけど。
じゃあさっき言ったけど、ワクチン忌避っていうのは行動だと。
behavior だというふうなことなんですけど。

なんでそういうふうにしてるかっていうと、なかなかこう attitude(態度)、つまり考え方みたいなことって、定量的に観察することが難しいですよね。

つまり、「打ったかどうか」っていうのは簡単に評価できるけど、「打つ気があって打ったかどうか」っていうところまでなかなか分からないでしょっていうことなんです。

なので、ワクチン忌避が存在する存在しないみたいなことを議論するのに、態度を含めると結構難しいっていうことです。

「迷いながらも打っているんだったら別にいいじゃん」っていう説もあるということもありまして。
まあ、そういうふうな「行動の結果としてそれを定義する」っていうふうなのが主流なんですが。

一方で、どういうふうな attitude(態度)、その姿勢というか考え方みたいなのがワクチン忌避につながるかみたいなことも研究されてまして。

どういう考え方を持っている人が、実際、ワクチンを打ちにくいかみたいな研究というのもあるわけです。


【テーマ2】ワクチン忌避に繋がる 3C(5C)の構成要素

木下喬弘
SAGE Working Group っていうのは、ずっと長らく「3Cモデル」っていうのを使ってたんですけど、えーと、峰先生「3C」って分かります?

峰宗太郎
三密ですか?

木下喬弘
それそうやったな(笑)そういえば。
日本の開発した「三密」って英語では 3C でしたね。

実は違いまして「confidence(信頼)」「convenience(利便性)」「complacency(無頓着ーワクチンで予防できる疾患は怖くないという認識)」というこの「3つのC」っていうのをずっと SAGE Working Group は使っていたんです。

で、これは結構、まあなんていうか分かるっちゃ分かりますね。
「confidence(ワクチンへの信頼)」っていうのは、まあずっと我々が言ったりやっていることですね。
「ワクチンは安全である」とか「有効である」とかいうふうなことに対する信頼なわけです。

で、2つ目が「convenience(ワクチンが打てる環境)」。これもワクチン忌避に繋がると。
要は手軽に打てるかどうかっていうことですね。
「打つのにハードルがあるかどうか」っていうこの2つ目のC。

そして、3つ目のC「complacency(無頓着ーワクチンで予防できる疾患は怖くないという認識)」っていう言葉がありまして、これちょっと難しい英単語なんですけど。
解説しますと、これ、どういうことをいってるかっていうと「そもそも vaccine preventable disease(ワクチンで予防できる病気)を怖いと思っていない」ということなんです。

まあ無頓着とか、そういうふうな感じですね。
つまり、「ワクチンで予防できる病気、例えば麻疹とかって現代ではほぼ撲滅されているからワクチンなんかわざわざ打たなくても俺は病気にかからないぜ」みたいな。

そういうふうな認知の人っていうのは実際にいて、そういう人はワクチンを接種するという行動に向かないというふうなアイディアをもとにこの3つ目のC「complacency」というのが一応使われていると。

これが比較的よく言われている「ワクチン忌避の構成要素」なんですね。

それでもまあ、別にいいんですけど、更にですね。最近こう『PLos ONE』に2018年に出た論文で、それをまあ、ちょっと拡張して「5Cモデル」とか「5C scale」っていうのをまあ一応考えられてまして、これが最近ちょこちょこワクチン忌避系の論文で引用されているようなので、あと2つほどCを足させて頂こうと思うんですけれども。

※出典:
Betsch C, Schmid P, Heinemeier D, et al. Beyond confidence: Development of a measure assessing the 5C psychological antecedents of vaccination. PLoS One. 2018;13:e0208601.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0208601

4つ目の C がですね「calculation(リスクとベネフィットを計算すること)」
これはさっき言った「complacency(無頓着ーワクチンで予防できる疾患は怖くないという認識)」と若干違いがわかりにくいところもあるんですけど。

どういうことを言いたいかというと、さっきの「complacency」っていうのはまあ、なんというか、その「リスクが存在しない」「感染のリスクが存在しない」みたいな考え方の人のことをいうわけですけれども、この「calculation」の方っていいうのは計算をするっていうことで「information seeking」をしているっていうことです。

で、 assumption(前提)としてあるのは、そうやって「賢く接種行動を決める」っていうふうに「リスクとベネフィット」、つまり「打つメリットとデメリットを比較して決めるのが正しい」というふうな考え方になっている人って「情報をまず求め探す」っていうふうなことをやると。

で、大体そういう人が行き着く情報というのは、簡単に言うとろくでもないっていうことです。

まあ、インターネットで「ワクチンのメリット・デメリット」みたいなことを調べると必ずワクチンのネガティブな情報に行き着くと。

で、この論文では「false balance effect in the media」と書かれているんですけど。

要はそのマスメディアの情報もですね、実際にはワクチン「proワクチンの医師(ワクチンに賛成する医師)」と「ワクチンに反対する医師」って圧倒的にワクチンに賛成する医師、専門家が多いにも関わらず、なんか両者のバランスが取れているかのように報じるメディアの情報とかに触れることにより、この「calculationをする人」っていうのは、ワクチン忌避に繋がるみたいなことが書かれているというか、提唱されています。

4つ目の C「calculation」は、そういうことです。

5つ目の C がですね「collective resposibility」という C になってるんですけど、これは要するに「集団免疫効果のことを考えているかどうか」ってことです。

これは2つのベクトルがあって、1つは「みんな打つんだったら自分は打たなくていい」という認知の人もいるので、それはワクチン忌避につながるということになります。つまり、フリーライダーってやつですね。

で、もう1つは「他人を守るために自分も打つべきだ」っていう考え方もあるので、この「collective responsibility(集団免疫効果のことを考えている)」はポジティブな要素もネガティブな要素もあるわけです。
ともかく、集団免疫効果というのがあると。

まとめますとですね、このワクチン忌避っていうのは基本的には行動の結果というふうに定義されているけれども、その中にある態度みたいなこともちゃんと考えましょうみたいな議論が出始めていて、その構成要素として、3Cモデルというのを WHO が言ってたんだけど、最近は、この5Cというのが使われ始めていますよ。

具体的にこの「5Cって何か?」っていうとまず「confidence(ワクチンへの信頼)」ですね。
そのワクチンに対する信頼性があるかどうか、特にワクチンの有効性とか安全性に対して信頼性があるか。

更にもう1つの要素として、ワクチンを使っている行政機関とかに対する信頼性、あるいは医療機関に対する信頼性みたいなことも入ってくる研究が多いです。

2つ目が「convenience(利便性)」、あるいはまあ、この『PLos ONE』の2018年論文では「constraints(制約)」っていうふうに C をつけてるんですけど。

まあ、いずれにせよワクチンを打つためのハードルが低いということである。
簡単に打ちに行けるとか、お金がかからないみたいなことも含めてそういうことです。

で、3つ目が「complacency(無頓着ーワクチンで予防できる疾患は怖くないという認識)」
、自分がかからないと思っているかどうかみたいな様子がワクチン忌避に関係している。

で、4つ目が「calculation(リスクとベネフィットを計算すること)」、ダメダメな情報を調べに行かないみたいなことが重要なワクチン忌避の要素。

で、5つ目が「collective resposibility」ということで、集団免疫効果みたいなことを考えているかどうかというふうな attitude(態度)というか、belief(信念)に近いかもしれないですね。この様な考え方が、まだ接種行動に影響してるんじゃないか?ということを提唱していて。

そういういろんな変数を入れた多変量解析とかをしてですね。
実際の接種行動に繋がったかどうかみたいなことを解析して、このモデルそこそこワクチン接種を説明できるんじゃないですか? みたいな論文が出ているということです。

ちなみにその多変量解析すると、やっぱり一番接種行動そのものに直結する因子っていうのは「confidence(ワクチンへの信頼)」なんですけれども、他の要素も関係するんじゃないかみたいなことを議論している人たちが今いて、そういう論文がよく citation(引用)されるということです。

ここまでですね、「confidence(ワクチンへの信頼)」に関する活動を我々はずっとしてきた訳ですけれども、残りの4つのCをどう進めるかみたいなことを具体的に考えていくフェーズに来ていると言ってもいいんじゃないかなっていう話なわけです。

ここまでのところで皆さん何かちょっとコメントとご意見ありますか?

安川先生、さっきなんかちょっと言いかけていただいたのは、ここでお話いただければと思います。

安川康介
ありがとうございます。
「ワクチン忌避がどういうところから来てるのか? 」ってすごい興味深いというか、こういう風に学術的にどういう考察があるのかって知るのはとても重要だと思います。

で、僕も別に全く関係なくですね、最近なんかこう「なんで打ちたくない人って打ちたくないんだろう」、
「そういう人達って分類してその原因をなんか単純化できないかな」ということを思っていたんですよ。

で、たどり着いたのが、基本的にはそういう C、 5Cとか3Cとかいうことに繋がるんですけれども、まず1つが「リスク0信仰」の人たちがいたりとか。

2番目に「前後関係と因果関係の混同をしてる」人たちがいたりとか。

3番目に稀なとか、小さい危険性ですね、「ワクチンの危険性の過大評価」をしてしまっている人。
あとは「コロナ自体の感染のリスクとか感染した時の自分のリスクの過小評価」をしている人っていうのと。

あとは「反権力」ですね。
「医者」とか「政治」とか「CDC(アメリカ疾病予防管理センター)」とか「製薬会社」とかそういうところへの不信みたいな。
なんかそういうところにこう落とし込めるんじゃないかなってこう漠然と思っていたので、結構こういうCの話は納得できるんです。

結構その3Cだと、なんかこう大きすぎて。じゃあどういうふうに対処したらいいのかというのが分かりづらいのかなと思います。
更に分解していって、情報発信の時に応用できるんじゃないかなということを、なんとなく今聞いてて思いました。

その5Cとか3Cとかあるのは良いんですけども、なんかもうちょっとこう分解していって、情報発信をどういう人たちにターゲットしていけば良いのかっていうのを、こびナビの活動をやっていて感じました。

木下喬弘
ありがとうございます。
おっしゃる通りでですね。
今お話いただいた要素って、全部5Cのどこかに落とし込めると思うんですね。

例えば、「前後即因果の誤謬」っていうのかな? 
要するに前後関係で即因果関係だと信じてしまって「ワクチン接種後何人死亡」っていうのワクチンのせいだとか。

そういう風な考え方をするのって「confidence(ワクチンへの信頼)」の問題なわけですね。まあ「safety and effectiveness(安全性と有効性)」の「confidence(ワクチンへの信頼)」の問題でとか、まさにそうなんです。
自分はウイルスに感染しないとかですね。
感染してもまあ大したことないみたいな「complacency(無頓着)」そのものなわけで。

我々、なかなかそれしかできないんだよね。
まあ、つまり availability を上げるとかですね。
ワクチン安くするとか、インセンティブを出すみたいなことをできる組織ではないので。

そういう観点でいくと、アプローチできるCとアプローチできない C があって、アプローチできるCの中でもうちょっと細分化して戦略を考えるのが正しいみたいな話にはなるかなと思います。

ええと、どうでしょう? 
内田先生とか、峰先生とか。

内田舞
おはようございます、内田です。

今私聞いてて思ったのが、先生が HPVワクチンの忌避について、日本の女性のほとんどの方が、接種可能なワクチンを接種を遅らせている、あるいは打っていない、ということで、「日本の女性のほとんどがワクチン忌避と分類されます」とおっしゃってたのを聞いて、それってすごく打つ側に責任が置かれすぎちゃってる言葉だなって思ったんですね。私は、この状況を表すに当たって、的確な表現だとは思いません。

日本の女性で HPVワクチンを打っていない大きな理由に関して、存在も知らないっていう方も多いからなのではないか、また小児科や婦人科で打てる時期に勧められていないのではないかと思います。
その最初の情報すら無いっていう方が多いんじゃないかなと思って。

「confidence(ワクチンへの信頼)」に行き着く前の 「awareness(ワクチンの存在の認知)」っていうか、残念ながらちょっとCで思いつくものが無かったんですけれども、「awareness(ワクチンの存在の認知)」で躓いてしまっている段階もあるなって言うのを感じます。

それに関しては、医療者の知識だったり、メディアからの情報だったりが全部絡むものです。

WHO の Vaccine Hesitancy の定義っていうのが、ワクチン接種を遅らせる・あるいは接種しないという behavior(行動)のことを指すと言っても、私としては、 Vaccine Hesitancy っていうのは文化を表すものなんじゃないかなっていうような事を感じています。
接種しなかった人以上に、もっと多くの人を含む言葉であると思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
これはおっしゃる通りではあるんですけど、ちょっと論点が多分いくつかあって。

まあそもそも別に SAGE Working Group は Vaccine Hesitancy はなんというか個人の振る舞いを非難するフレームワークとはおそらく考えていなくて、ワクチンを忌避しているということ自体が少なくとも接種者側の責任になるみたいなことって、別に文面の中で出てこないので。打たない人を責めているというものではないということが、まず一点。

あとおっしゃる通り、この5Cなり3Cモデルにあんまりはまらないというかですね。

Vaccine Hesitancy の定義そのものにあんまりしっくりこない理由の一番大きな理由のうちの1つは、日本のHPVワクチンに関しては唯一、世界で唯一といってもいいぐらいですね、国が公式に「積極的には勧めない」ってやってるので。

それってもう何ていうか、国が Vaccine Hesitant なんじゃないかみたいな。
個人じゃないんちゃうかみたいな。
そういう話なんだと思うんですよね。

だから何ていうか、日本の、少なくとも日本の女性がヘルスリテラシーが低いとか、そういう話をしてるわけでは全然なくて。

定義としてこういう風に定義されているので、まあそれに則ると、一応忌避っていうふうになりますよっていう。

ただそれで「忌避していることが悪い」とか、もっと言うと「忌避してるのは個人の責任だ」とかいうふうなこと言ってるわけは僕は決してないし。
おそらく WHO もそういうことを言ってるわけではないと。
というところをちょっと補足させていただきます。

はい、どうぞ安川先生。

安川康介
じゃあ、ちょっとその間に。
ただアンケート調査とかみていると、アメリカって「どんな情報を与えられてもワクチンを接種しない」という人が少しずつ減ってきてるんですけども、2割弱とか15%とか、まあそれなりに居るじゃないですか。

日本でそういう調査の結果をみると、3%から5、6%と結構少ないんですよね。

多分、それぐらいだと思うので、本当にワクチンが嫌な人ってアメリカの方が多いような印象はありますね。

木下喬弘
おっしゃる通りだと思います。
それもなんか各国の少なくとも covid vaccine の接種意向みたいなのでいうと「絶対打たない」みたいなのは、やっぱアメリカは多いんですよね。

で、実際に伸び悩んでいるし。
ミシシッピ州とかまだ40%行ってないんでね。

安川康介
そうですね、うん。

木下喬弘
そうなんです。
だから実は Vaccine Hesitancy というよりは rejection(拒否)に近い人たちっていうかですね。

まあ、政府に対する信頼性の欠如からワクチンを打たないという風に決めているみたいな人って、実はやっぱりアメリカの、特に現状だと、共和党支持層の方が多い。

結構ボリュームゾーンみたいなのがきっとあって。
そこがですね、接種意向に対して結構影響を与えているみたいな感じなんじゃないかなというふうに思ってます。

安川康介
そうですね。
まあ、あとあまりメディアとかで取り上げられていないですけれどもニューヨーク・タイムズが Vaccine Class Gap っていう表現をしていることがありました。

教育を受けた方の方がワクチンの受け入れが良いみたいな、そういう調査結果とかが確かKaiser(Kaiser Permanente アメリカの健康保険システム)のデータを使ったもので発表されました。

ちょっとセンシティブな領域なんですけれども、そういうのもあるのかなとは思いました。

木下喬弘
ありがとうございます。
これもですね。実はあの結構 controversial(物議を醸す)です。
Education level が Hesitancy に、関係するかみたいな。

安川康介
あの。

木下喬弘
はい、どうぞ。

安川康介
まあ必ずしも教育が高い人が受けているとか、そういうことではないと思うんですけども。
そういう傾向があるのか、ちょっと興味深いところですよ。

木下喬弘
ありがとうございます。
そう、そうなんですよね。

あの皆さんご存知かもしれないですね。
2020年にハイディ・ラーソンの研究グループが出したワクチン忌避の論文で、日本が世界で最も忌避する国だと書かれています。

正確に言うと、ワクチンが安全であるとか、重要であるとか、有効であるとか、「強く同意する」という人の割合が世界で最も低い国の1つであった。
トップ3に入るという論文があるんですけど。

あの研究では確かに多変量解析をしていて、education level はワクチン忌避とネガティブに関連するということがわかってるんですね。
つまり、高い教育水準の人の方がワクチンを忌避しにくいという結果になってるんです。

ただ、実は最近の新型コロナワクチンの研究ではですね。
アメリカで PhD(博士号)持ち の人ってどんだけ情報を与えても忌避思想というかですね、打たないと決めてる人は一切打たないみたいな。
なんかそういう研究結果もあってですね。

他の教育水準の人って、経時的に打たないと決めている人の割合が減っていくんですよね。
感染拡大したりとか情報提供されることによって。

なんですけれど PhD を持っている人はですね、一切他人の言うことを聞かないみたいな。
全く打たないと決めてる人の割合が変わらないみたいな研究もあってですね。

教育水準によって接種意向が高いか低いかって実は研究によってもまちまちだったりもするんですけど。
めちゃくちゃそれだけで説明できるほど強い決定因子ではないと言うのは多分結構コンセンサスかと思います。

黑川友哉
あ、ちょっとよろしいですか? 
もう時間過ぎてるので、ちょっとコンパクトにお話がしたいなと思ってるんですけど。

あの先程、木下先生からお話いただいた5Cの中でワクチンへの信頼についてこびナビ結構頑張ってるっていう話もあったんですけど。

まあ、実はなんか結構その例えば無頓着とか、その無関心層に対するアプローチっていうのも結構なんかいろんなツールをですね。我々としてはその TikTok であったりですね。

あと TikTok じゃなくてなんだっけ?
えっと、インスタグラムとか。

まあ、そういったいろんなツールを使って、そのガイドブックとかも含めてですね、情報発信をしようっていうのも、これもちょっとアプローチとしては良いのかなとか。

あとはですね、 convenience 。
まあ、ワクチンが打てる環境を整えていくという点では、我々はツイッターで個人で発信していることが多いと思うんですけど。

例えば知念先生とかもですね「なんかここの地区でワクチン打てる。今日打てるらしいですよ」みたいなことをしっかり発信していただいてる。
これも非常にやっぱり重要なんだろうなって。

今日のこの5Cじゃなくて、5Cか。
5Cを聞いて、なんかまだまだできることってあるんだろうなと。
まあ、こびナビっていう団体としてではなくて、まあ個人でそういう情報を共有するっていうだけでも、きっと意味があるんだろうなと思いますし。

これはこびナビメンバーじゃなくても、全ての方ができることなのかなと思いながら聞いてましたね。

木下喬弘
ありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
基本的に convenience 、あるいは constraints (強制)っていうところですけど、行政に頑張ってもらわないとどうしようもないところではあるんですけど。

おっしゃる通り「なんかここの予約が空いているらしいよ」みたいなことって、医療の専門家じゃなくてもできますので、リスナーの皆さんもぜひお友達とかに空いている枠があったら教えてあげるとかで、忌避の減少というか、ワクチン接種率の向上に協力していただければなと思います。

というところで、7分過ぎちゃいましたので、今日はこのあたりにしようと思います。
「そもそもワクチン忌避の定義はなんなのか」というところと「どういう構成要素なのか」というお話をさせて頂きました。

これに基づいてですね、色々策を今後進めていけたらなと思っている次第でございます。
ということで、皆さん、ご登壇いただいた先生方ありがとうございました。

安川康介
ありがとうございました。

内田舞
今夜インスタライブ聞いてください。

木下喬弘
今日何時からです? 

内田舞
今日はですね、今夜の10時15分から木下先生が、もう1つの団体であるみんパピ!代表で産婦人科医、また四児の母でもある稲葉可奈子先生を迎えて、私と稲葉先生で妊婦さんに向けた妊娠中のワクチン接種に関するインフォメーション・ナイトをさせて頂きます。

皆さん、本当に先週の亡くなってしまった赤ちゃんのニュースを聞いて、本当に皆さん胸の詰まる思いだったと思いますし。

特に妊娠中でいらっしゃったり、パートナーが妊娠していらっしゃる方は不安で仕方がない時だと思うので、お気軽に質問を投げていただいたら、私と稲葉可奈子先生がお答えしますので、ぜひとも皆さん聴いていただけたらと思います。

こびナビのインスタグラムのアカウントから始まります。
よろしくお願いします。

▼放送は終了しましたが、こびナビIGTVよりアーカイブの視聴が可能です。
https://www.instagram.com/covnavi/channel/?hl=ja

木下喬弘
はい、ありがとうございます。
稲葉先生もちょうど今聴いていただいてますね。

本日夜のインスタライブということで、ぜひ皆さんですね、ご参加いただければと思います。
ということで、本日はここまでにさせていただこうと思います。

こびスペ、今日モデレーター担当させていただきました木下です。どうも皆さんありがとうございました。
日本の皆さん、良い一日をお過ごしください。


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