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世界一周あこがれ

世界一周…

なんと夢のあるひびきだろう…

ここで言う世界一周とはもちろん、世界一周旅行のことだ。僕が旅行者だった頃、この世界一周という響きに憧れたもんだった…。当時聞いていたPodcastは、世界一周旅行を行ったバックパッカー3人が送る、『世界一周たびたびニュース』。3年ぐらい続いたのかな…ほぼ毎週欠かさず聞いていた。

僕が最初に旅行したのは、タイとかベトナムとかインドとかチェコだった。パッケージツアーを利用したり、ホテルに泊まったり。いわゆるバックパッカーからは程遠かった。たまにバックパッカーという言葉を知らない人がいるため、説明しておきます。

バックパッカーとは、旅行のスタイルの一種です。でかいリュック(バックパック)に大量の荷物を詰め、1ヶ月から1年といった長期の旅行をします。旅行期間が長いから宿泊費を節約するため、主にホステルといったドミトリータイプの安宿に泊まります。ドミトリーとは相部屋のこと。僕が今まで泊まった中では、最大32人部屋という部屋がありました。いろんな国から来た知らない人たちが、一つの部屋に寝泊まりします。オーストラリアでは、ホステルのことを利用者にちなんでバックパッカーズと呼んだりします。

バックパッカーを成す要素は、①バックパック、②長期、③節約、この3要素でしょうか。彼らの行う世界一周旅行は、ツアーガイドのついた豪華な周遊旅行のようなものではありません。むしろ対極にある。

僕が世界一周に憧れていた当時、だいたい10年ほど前は、世界一周ブームでもあった。世界一周航空券というものがあり、書店には世界一周本が数多く並んでいた。世界一周はカジュアルに流行っていたのだ。

屈強な旅行者たちは、ポップカルチャーとなった世界一周に異を唱え、ワンワールドの周遊チケットなどを使わず、それどころか「飛行機に乗らず世界一周」「陸路は自転車で世界一周」などといった、独自の縛りを設けてより困難な世界一周へと旅立っていった。

そういうのはさておき、僕は世界一周憧れをいだきつつも、出遅れを感じていた。旅行を始めた当時は会社員だったため、6ヶ月から1年かかる世界一周旅行なんてできるわけがない。世界一周をする人はだいたい、大学生、卒業生、退職した人と相場が決まっていた。外国人だと学生と社会人の間のギャップイヤーに長期旅行をする人が多い。世界一周にあこがれはある。しかし、世界一周のために会社を辞める…??会社を辞めて、半年から1年かけて世界一周して、帰ってきたらどうすればいいんだ??

結局はそうしなかった。会社は辞めたものの、世界一周ではなく2年ばかり長期で1国、2国に滞在することにした。その間に何人も、世界一周経験者の日本人と知り合った。みんな実に普通の人だ。女の子も多い。彼らは何か、特別な意味を込めて世界一周を行っていたわけではなく、旅行の一種として世界一周を素直に楽しんでいた。僕らの時代の世界一周は、もはや冒険ではない。誰でもできるポップカルチャーであることを実感した。お金と時間さえあれば、気軽に楽しんでいいものなのです。

現在はLCCが増え、Googleマップが網羅され、どこでもスマートフォンが使えるようになった。世界一周はかつてよりさらに手軽になり、その言葉から特別感を失った。それでもいまだに、世界一周というひびきから僕は、旅行者になりたて当時のときめきのようなものが思い起こされる。

世界一周、なんて甘美な誘惑なのか。

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