お酒の愉しみ方
先日、Podcastを録音するため事前に映画『愛がなんだ』を見返していた。『愛がなんだ』では、主人公の山田テルコが劇中ずっと酒を飲んでいる。金麦だったり焼酎お湯割りだったりワインだったり、ことあるごとに飲む。居酒屋には行くし、自宅でも飲むし、なんだったら自宅への帰り道に缶ビールを飲みながら歩く姿さえある。僕の周りで今までこれをやっていたのは、以前シェアハウスで同居していた野口だけで、他にそんな酒の飲み方をしている人を見たことがない。
人に酒の話を聞くと、たいてい「自宅では飲まない」「一人では飲まない」「お酒よりもお酒を飲む場が好き」などと言われる。お酒に強いか弱いかは関係なく、飲める人でもすき好んで飲まない人が多い。「飲めない」という人も多い。最近に至っては、ずっと飲んでいた人でも酒をやめる風潮が拡がっている。「酒は少しなら体にいい」という説が覆され、今は「少しでも飲まないほうが健康的」という学説に落ち着いている。禁煙が当たり前になり、禁酒もブームになりつつあるのか?今の若い人は酒飲まないとも聞く。
うちの父親は70歳で、ほぼ毎日飲んでいた。昼間から飲んでいたことも珍しくない。しかし最近はあまり飲まなくなった。タバコも減った。生きる楽しみは何もないと言っている。川べりを散歩して、草花や鳥を見ることが最近の楽しみだとか。そんなことを言い出したのはつい最近のことで、これまでずっと酒、タバコ、ギャンブル漬けの人生だった。依存症になったり大金を溶かしたり病気になることなく、好きなだけ嗜んで酒・タバコ・ギャンブルと距離を置くようになった。70まで元気でやっているから、賢い選択なのかもしれない。
『イスラム飲酒紀行』という本は、お酒が禁止されているイスラム圏で酒が飲める場所を探し回って、毎日飲み歩くという本だ。著者の高野秀行さんは、この本の冒頭で「ここ三年、酒を口にしなかった日は二、三日しかない」とこぼしているぐらい、毎日酒を飲む。自らを堂々と、「酒飲み」「酒好き」と称している。そういう態度はすがすがしい。自身はアル中と言っているが、それほど深刻ではないのだろう。
先日まで続けて二冊、村上春樹のエッセイを読んでいた。村上春樹もことあるごとに酒を飲む、酒好きの人だと言える。うちの父と年が近いから、この年代の人はそういう人が多いのかもしれない。エッセイを読んでいても、しょっちゅうビールだのウイスキーだのワインだのが出てくる。「小説の中でもずいぶん支持し、宣伝してきた。僕の小説を読み終えてすぐに酒屋に走ってビールを買ってきたという人を何人も知っている。」と書いている。気負いなく、カッコつけることもなく酒について触れたり語ったりするのがいい。
ライムスターの宇多丸さんも、ラジオでしょっちゅう酒の話をしている。基本的に白ワインばかり飲むそうだが、ときどきラジオ収録中に缶ビールを開けたり、ウイスキーを飲んでいる様子が伺える。宇多丸さんはコンバットRECさんといった友達や、仕事仲間ともよく酒を飲んでいるけれど、自宅ではゲームをやりながら白ワインを飲むのが至福の時間だそうだ。
結局僕はやっぱり、お酒を飲むことについて前向きでありたい。人に迷惑かけることなく、体を壊すことなく、酒をやめろと言われないように、うまく楽しく付き合っていきたいもんです。
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