
「若い読者のための短編小説案内/村上春樹」を完走した
「若い読者のための短編小説案内」という本がある。これは村上春樹がアメリカのプリンストン大学とタフツ大学で教えていたときの講義を元にした本で、村上春樹が選ぶ日本人作家の短編小説を事前に読み込み、授業で解説するというか生徒と一緒に読み解いていくという形式になっている。
この本を読めば、村上春樹が講師をやった大学の講義を擬似的に受講している体験が得られる。これ幸い、と思って本書を手に取った村上春樹ファンは多いことだろう。しかし、落とし穴があった。
この「若い読者のための短編小説案内」の中には、短編小説そのものが含まれていない。題材として6作品挙げられているが、それぞれを自前で入手して読まないことには、この「短編小説案内」を読み進めることができない。
「短編小説案内」の題材として挙がっている作品は、
水の畔り:吉行淳之介
馬:小島信夫
ガラスの靴:安岡章太郎
静物:庄野潤三
樹影譚:丸谷才一
阿久正の話:長谷川四郎
この6作品。どれも超メジャー級の作品(例えば夏目漱石とか太宰治とか)ではない。中には絶版になっている本に収録されている作品もあり、それらは図書館に行って全集を借りるか、古本を探すかしないと読めない。
村上春樹の講義を疑似体験しようとして「若い読者のための短編小説案内」を手に入れても、教材が手に入らなければなかなか手を出すことができない。お手上げ、となった人も多いのではないか。
僕も比較的手に入りやすい「馬」と「樹影譚」は手元に置いていたが、それ以外が揃わなくて長年放ったらかしにしていた。
昨年にポッドキャストでこの「若い読者のための短編小説案内」の感想を話すことを決め、題材となる本を本格的に探し始め、集めて読んで完走することができた。一つ念願が叶って素直に嬉しい。
まず僕は、この6作品をこれまで全く読んだことがなく、作家のことも知らなかった。初めて読む作家の作品に出会えたことがよかった。それも村上春樹の解説付きで読むことができた。こんなに贅沢なことはないだろう。
村上春樹はあまり文学論みたいなのを語る人ではないから、特に日本の文学作品について具体的にレビューを読めたのも新鮮な体験だった。
内容的にはけっこう難しかったけれど、僕らの感想も記録としてポッドキャストに残しています。読んだ人も読んでない人も、よかったら聞いてみてください。
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