Mystery Jets/A Billion Heartbeats(2020) 感想

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やっと聴けた

前作から4年振りの新作。当初去年の9月に出る予定でしたがVo.ブレインの持病が悪化したため今年の4月に延期に。しかし今度はコロナ禍に巻き込まれ店にファンが買いに出かけてはいけないとデジタルのみ4月にリリース、フィジカルは6月へ再度の延期になっています。とにもかくにもやっと聴けたアルバムです。

骨太

ブレインのお父さんと一緒にデビューした彼らも気づけば15年選手、30代半ばの立派なオジサンになりました。アイラインを引きギラギラのスパンコールを身にまとい「2つ隣のアノ子に恋しちゃったみたい♪」と歌っていた頃の面影はありません。

前作の延長線上な感じで、ずっしりとしたボトムに気持ち重くなったギター、センス良くシンセを混ぜ、切々と歌い上げます。「Young Love」みたいな激ポップな曲はなく全編エモいのも前作から地続き。メロディのエモさの安定感にかけてはこの世代ではこの人たちに勝てるバンドはないでしょう。音の面ではギターが重くなったことでより正統派のバンドサウンドに近づき、ジャケットのとおり前作がどこか浮遊感を感じたのに対し今回はもっと生っぽい、地に足がついている感じがします。ジャケットに引きずられているだけな気もしますが。

歌詞はロンドンはトラファルガー広場の近くに住んでいたブレインが頻繁に目にした種々のデモに影響されているそうで良くも悪くも全体的に暑苦しくなっています。

個人的には3rdの「Serotonin」が心のベスト10上位に来るくらいドンピシャなのでもう少しポップに行ってほしいのですが、最近はもうそんな感じの気分ではないんですかね。

おススメ曲

その1:Hospital Radio

今作から1番最初に公開された曲で、今作のハイライトは間違いなくこの曲です。幼いころから入退院を繰り返してきたブレインがNHS(イギリスの国民医療保険制度)、医療従事者たちにインスパイアされた曲だそうです。タイミング的にも「図らずも今年発売になってタイムリーになった」とNMEか何かで言われていました。静かに絶望しているところから感情の爆発に合わせてギターが入り盛り上がる展開(メロディも◎!)がとにかく。名曲です(「僕にはわからない」、「ただ死を待っている間に時間が季節へと変わっていく/神様に向かって叫んでいるのに/神様はただ手を振って通り過ぎていくだけ」、「私たちがあなたの肺を満たす空気になりましょう」)。

その2:A Billion Heartbeats

アルバム発売直前に満を持して公開されたタイトル曲。アンセミックかつ疾走感があり、限りある人生何を迷ってるんだ!とけしかけられ、ライブで聴いたら否応なしに盛り上がってしまいそうです。しかし何度見てもウィルがいない画に慣れません。

その3:Screwdriver

本作の1曲目。Mystery Jets史上最もヘヴィなリフが引っ張ります。「愛を持って戦え/愛とともに/愛の力が打ち勝った時、世界は僕らのものになる」と音とともにのっけから暑苦しさ全開です。このアルバムの、音が重くなったという印象はたぶんこの曲のせい。

評価

7.8

Mystery Jetsに駄作なし。今回も力作です(贔屓目)。

しかし前作もそうですが、アルバムのトーンがエモい感じに統一されているため聴いている内にやや胃もたれしてきます。統一感としては正解かもしれませんが、もう少し彼らの軟派な曲が聞きたい。

このアルバムを最後にオリジナルメンバーのウィル・リース(Gt, Vo.)が脱退しています。バンドの知名度的にもあまりそういう視点で語られませんが、彼の指弾きギターはかなり上手く、音作りの面での影響も気になります(トレモロのセンスは当代一でしょう)。1,2を争う人気曲「Young Love」なんかのボーカル曲もライブではどうなるんでしょうか。

ともあれこの成熟路線は前作、今作で完成形と言えるところまできてると思いますので次回作も非常に楽しみです。




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