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half・alive / Now, Not Yet (2019) 感想

※2021/4/1追記しました。

オシャレなポップバンド

アメリカはカリフォルニア出身の3ピースバンド、half・aliveのデビューアルバムです。ザックリ言うとTom MischやRex Orange Countyに通じるような、ジャズやファンク、R&Bといった要素を混ぜ合わせた洒脱なポップソングを聞かせるバンドです。ドラムとベースのリズム隊に、シンセにギターにと忙しく動き回るフロントマンという編成です。

しかしどちらかといえばソング・オリエンテッドなTom Mischなどと違い、彼らはジャケットの通り、よりダンサンブルなリズムに重きを置いているようです。そこにホーンやストリングスが絡み、曲によってはFriendly Firesのような高揚感をも感じさせます。シングル曲でもある"RUNAWAY"や"Still Feel"はこのタイプの極致です。ボーカルやバンドの演奏自体はどちらかと言えばクールなのにいやにアレンジが情熱的。このなかなか不思議な世界観こそが彼らの個性です。

変態性

聴けば聴くほど、ヘビーなギターから始まりあれ?プログレバンド?と思っているとトロピカルなIDMになり、最終的にユニゾンコーラスと情熱的なホーンに彩られるオープナーの"ok ok?"を筆頭に、今作の楽曲群はアレンジ的にはかなり変態度高めです。

続く"RUNAWAY"にしても、もともとは手数の多いドラムにクールなシンセとボーカルが乗る涼しげなダンスミュージックとして始まりながら、2番ではベースがヘビーに強調されて1番とはかなり聴こえ方が変わります。そして更にここでもユニゾンコーラスが情熱的に曲を盛り上げ、聴き終えた時には1番のクールさが思い出せないほどです。今作では最終曲、メロウなエレクトロニカきらブレイクを挟んでブレイクビーツが始まる"creatures"まで一貫して、曲が最初の印象から気づけば遠いところにいることが非常に多いです。しかもそれが唐突さ、不自然さを感じさせずに自然に変化していくところがこの人達のアレンジ力の巧みさです。聴き終わった時にかなり独特な感触を残してくれます。

実際に特定のジャンルに縛られないような曲を作ることを念頭に置いていたそうですが、資質的にはパッと聴きオシャレでカッコいいけど最後には隠しきれない変態性が爆発してしまう岡村靖幸に近い人達なのかもしれません。

オススメ曲

■ 5. Still Feel

ダンサンブルな時のKings Of Convinience界隈の人達のような、クールかつファンキーなヴァースからヘビーなサビへ目まぐるしく展開し、そして最終的にホーンが情熱的に盛り上げる、MVの謎ダンスを含めてある意味今作を象徴するような曲です。しかしMVが4000万再生もあるとは知りませんでした。凄い。

■ 9. ice cold. 

ニュージーランドのインディポップシンガー、Kimbraを迎えた曲です。この曲はガットギターを効果的に使った爽やかなポップソングに仕上がっていますが、突然挟まれるミドルエイトのラップや多重コーラス、カットアップされたアウトロに変態さが滲み出ています。

■ 2. RUNAWAY

1番と2番でガラッと変わるアレンジ、終盤に向けて曲を盛り上げるユニゾンのコーラスとこれもまた今作を象徴する変態アレンジが炸裂する一曲です。悲しくも力強く自分の人生を肯定するような歌詞も素敵です。

自分の人生、自分がどんな人間になりたかったかっていう夢を目の前に持ち上げてみた/空白のページを見てみると/今の僕は自分が成るべきじゃなかったあらゆるものだってことが分かる/だけど僕は逃げ出さなくていい/ああ、逃げ出さなくていいんだ

2021/4/1追記:
コメントで上記訳の間違いをご指摘いただき、「今ある自分は自分が成るべきすべてのもの」だから「逃げなくていい」という激ポジティブな曲であることが判明しました。バカ丸出しでお恥ずかしい限りですが、戒めのために当時のままにします。

点数

7.1

最近増えていますが、今作はストリーミング/デジタルとフィジカルはヴァイナルのみのリリースです。時代の流れですが、今もフィジカルを買うとしたらCDの私は切ない限りです。ヴァイナルに手を出したいのですがそうすると今まで必死に集めたCDたちが可愛そうで…。

今年に入って今作の楽曲をオーケストラと共演したEPが出ており、より高揚感が増した良作なのでこちらもオススメです。


(今作を聴きながら読んだインタビュー記事) 





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