【大人の発達障害は自分勝手でわがままなのか?】
自分勝手なのは発達特性?
大人なのに「自分勝手」!
一緒に働く人に対して、こんなことを思ったことはありませんか?
自分ってなんで自分の気持ちを抑えられないんだろう?わがままで嫌になっちゃう。
こんな風に自分を責めたことはありませんか?
発達障害がある方の就職支援をする立場として、
「何も知らない人からすると、もしかしたらわがままに捉えられてしまうかもな」
という特性を持っている方と接して来ました。
「大人なのにわがままなのはどうして?」
「自分の気持ちをおさえられないのはどうして?」
そんな疑問にお答えしていきたいと思います。
1-1.「わがまま」に捉えられるASD(自閉症スペクトラム障害)の特性
まずは、発達障害のひとつ「ASD(自閉症スペクトラム障害)」の特性です。
ASD(自閉症スペクトラム障害)がある方の特徴として、
「独特なコミュニケーションの取り方」と「こだわりの強さ」が挙げられます。
1‐1‐1.独特なコミュニケーションの取り方
「独特なコミュニケーションの取り方」とはどのようなものでしょうか?
事例を挙げると、
不思議な言葉づかいをする
相手の立場に立ってものごとを考えることが難しい
話が端的すぎたり、長すぎたりする
うなずきやあいづちをしない
感情的に言葉を発してしまう
こんな感じです。
ASDの特性がある方の中には、上記のような特徴を持っている方がいます。
この特徴は「発達障害の特性」と呼ばれ、努力や薬で根本的に治すことは難しいです。
(トレーニングをして、特性をカバーするスキルを身に付けることはもちろん可能です)
一緒に働く同僚の方が、こういう特徴を持っていて、
でもあなたは発達障害の特性のことを知らない…
そんな状況だと、どう思うでしょうか?
何も知らなければ、「わがままな人だな!」と思ってしまうかもしれません。
でも、行動の理由を知ったら見方が少し変わりませんか?
(これは、ご自身で自分はわがままだな…と落ち込んでいる方も同じだと思います)
一例ですが、「わがまま」だと思われる行動の理由をご紹介します。
<独特なコミュニケーションの理由>
不思議な言葉づかいをする
→他者の言葉を自分の中に取り入れることが難しいため、小説や漫画などで獲得した言葉をそのまま使っている相手の立場に立ってものごとを考えることが難しい
→「共感化能力」と呼ばれる、他者へ共感する力が弱いため、相手の立場に立つことが難しい話が端的すぎたり、長すぎたりする
→相手の立場に立つことが難しい特性があるため、「相手に伝わる話し方」ができないことがあるうなずきやあいづちをしない
→相手の立場に立つことが難しい特性があるため、うなずきやあいづちをしないことで相手がどんな気持ちになるか想像が難しい場合がある感情的に言葉を発してしまう
→自分のことを客観的に見ることが難しいため、感情のコントロールを思うようにできないことがある
これらの理由は、すべて脳の特性に由来するもので、「無くす」ことは難しいです。
ですが、周りの環境を変えたり、ご自身でトレーニングを積んだりして「特性=困難なもの=障害」でなくすることは可能です。
1‐1-2.こだわりの強さ
「こだわりの強さ」も、「わがまま」と捉えられる可能性のあるASD(自閉症スペクトラム障害)の特性のひとつです。
例えば、
自分の考えを絶対に曲げない
仕事のやり方を変えることに強い抵抗感を示す
いつも同じ席に座りたがる
このような行動の背景には発達障害の「こだわりの特性」が隠れているかもしれません。
こだわりの特性にも、理由があります。
<こだわり特性の理由>
自分の考えを絶対に曲げない
→ひとつの考えに固執し、そのほかの考え方に変えることが難しいのも、
ASDの特性のひとつです。
例えば、一度「A=1」だと思うと、
誰かが「A=2」と伝えても認識を変えることが難しい…という具合です。
突然の変化が苦手だったり、システマチックに考えることが得意というASDの特性が、
この言動の理由として考えられます。
仕事のやり方を変えることに強い抵抗感を示す
→ASDには、「同じことの繰り返し」に非常に安心感を覚える特性があります。
反対に、「イレギュラーなこと」には想像を超える不安を覚えるため、 何か変化が起きると強く抵抗すると考えられます。いつも同じ席に座りたがる
→これも、上記と同様、「変化への強い不安」に由来する行動だと考えられます。
1-2.「わがまま」に捉えられるADHD(注意欠如多動性障害)の特性
次に、ADHD(注意欠如多動性障害)がある方の「わがまま」に捉えられる可能性のある
特性についてご紹介します。
ADHDの特性は、「注意力の特性」と「多動・衝動性の特性」に分けられます。
1-2‐1.注意力の特性
「注意力の特性」が「わがままな行動」と思われてしまう可能性があります。
例えば、
みんな同じ方向を向いて話を聞いているのに、ひとりだけそっぽを向いている
話しかけているのに作業を進める手を止めず無視された
こんな行動をする人がいたら、もしかしたら背景に「ADHDの特性」が隠れているかもしれません。
これらの行動には理由があります。
<注意力の特性の理由>
みんな同じ方向を向いて話を聞いているのに、ひとりだけそっぽを向いている
→ADHDの特性があると、注意力をひとつのことだけに向け続けることが難しい場合があります。
これは自分の意思でどうにかできることではなく、脳の特性としてそうなっていることが多いです。話しかけているのに作業を進める手を止めず無視された
→この行動は、ADHDの特性の一つ「過集中」に由来するかもしれません。
「過集中」は、物事に注意を向ける力のコントロールが難しく、
必要以上に集中してしまうという特性です。
1-2-2.多動・衝動性の特性
「多動・衝動性の特性」を持っているが故に、
「わがままな人だな」と思われてしまうこともあるかもしれません。
具体例を挙げると、
今しなくても良い作業を先に進めていることが多い
みんなじっと座っているのに、ひとりだけ立ち歩いている
これらの行動にも理由があります!
<多動・衝動性の特性の理由>
今しなくても良い作業を先に進めていることが多い
→この行動は、衝動性の特性に由来する可能性があります。
「しなくても良い」ことは分かっていても、考える前に行動に移してしまう。
これも、ADHDがある方の特性のひとつです。みんなじっと座っているのに、ひとりだけ歩き回っている
→多動性の特性に由来するかもしれません。
大人になるとあまり見られなくなる特徴ではありますが、
特性上行動を制御することが難しく、必要以上にたくさん動いてしまうことがあります。
このように、ADHDの特性がある方の場合、「注意力」や「行動」を自身でコントロールすることが
難しく、結果として現れる行動が「わがままだな」と捉えられてしまう可能性が考えられます。
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