【発達障害グレーゾーンの仕事上の問題点と向いている職種、相談先を解説】
近年、発達障害という言葉を見聞きする機会が増えてきました。
支援体制も整いつつありますが、その一方で同じ生きづらさを抱えながらも発達障害と診断されないグレーゾーンの人たちもいます。
この記事では、発達障害のグレーゾーンの特徴とあわせて、仕事上の問題点と向いている職種、相談先について詳しく解説します。
発達障害は大きく分けて3種類
対人関係がうまくいかない「自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症または自閉症スペクトラム障害はASDとも呼ばれ、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などの総称です。
2013年のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5で発表されて以来、使用されるようになった比較的新しい名称です。
これまで症状ごとにさまざまな名称で呼ばれてきましたが、いずれも原因は生まれつきの脳機能障害と考えられ、主な特徴には対人関係がうまくいかないコミュニケーション障害があります。
また関心や興味に偏りが見られ、自分ルールに固執する傾向が強いため、予定外のことが起きると臨機応変に対応できず、パニックを起こしてしまうこともあるでしょう。
早ければ1歳を過ぎたころから症状が現れはじめ、1歳半の乳幼児健康診査でASDの可能性を指摘されることもあります。
また、保育園や幼稚園での集団行動に馴染めず、保護者が気づく場合もあります。
ASDは症状の偏りに幅があり診断が難しいため、グレーゾーンになる可能性がもっとも高い発達障害です。
つたないながらもコミュニケーションがとれていると子供ならではの未熟さと見過ごされ、思春期を過ぎてからようやくASDが判明するといったケースもあります。
落ち着き、集中力がない「注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)はその名の通り、落ち着きがなく目の前のことに集中できないといった症状のある発達障害です。
特徴的な多動衝動は7歳頃までに現れ、学童期は男児の報告例が女児の数倍にものぼるといわれています。
これは男児に強く現れる多動性・衝動性が問題視されやすいのに対し、女児は不注意の症状が強いため見逃されやすいといった性差も関係しているようです。
日常生活に支障をきたすことも多く、忘れ物が多かったり、人の話をさえぎって喋り続けたり、遊びでも順番を待てずに割り込んだりといった言動が多く見られます。
友達の非難や大人の叱責の対象となりやすいため、自己肯定感が低下し、鬱症状や不安症を発症することもあります。
計算、読み書きが困難「学習障害(LD)
知的発達に問題がないにも関わらず、計算、読み書きが困難な状態が学習障害または限局性学習症(LD)です。
主な症状は読字障害・書字障害・算数障害の3タイプで、これ以外の学習には全く支障がないというパターンも見られます。
そのため、LDが判明するのは計算や読み書きを学ぶ小学校低学年以降で、真面目に勉強に取り組んでいるにもかかわらず、成績が振るわないことで初めて気づくということが多いです。
本人が努力してもなかなか結果につながらないため、学習意欲の低下や自信喪失を招いてしまうことも少なくありません。
発達障害のグレーゾーンとは
確定診断を下されていない状態
発達障害の場合、症状があっても、精神科や心療内科などの専門機関から確定診断が下されない場合があります。「傾向がある」に留まり、診断名がつかない状態がグレーゾーンです。
確定診断を下すには、発達障害の複数ある診断基準を満たす必要があります。症状があっても似た症状を持つ他の疾患である可能性もあるからです。
そのため、一つ、二つの症状がどんなに日常生活に支障が出るほど強く出ていても、他の基準を満たしていなければ発達障害の確定診断が下されないことがあります。
したがって、診断がつかない=症状が軽い、というわけではありません。
また、幼少期の状況について、当事者や家族の記憶が曖昧な場合、診断に必要な情報が得られず、発達障害と判断できないケースもあります。
ほかにも受診日の体調によって症状が左右されたり、医師によって見解が分かれたりといったこともあるので、日を改めて受診したりセカンドオピニオンを求めたりすることも必要となってきます。
必要な支援を受けられない
発達障害と診断されなかったからといって、日常生活に支障をきたす症状があることに変わりはありません。
そのため、グレーゾーンの方も治療や就職支援など何らかのサポートが必要になります。
サービスを提供している発達障害支援施設はいくつかありますが、その多くが利用に際して医師の診断書や障害者手帳が必要になります。
ですが、グレーゾーンの場合は確定診断が下されていないため、いずれも取得は困難です。
症状があるにも関わらず必要な支援を受けられないのは、グレーゾーンが抱える大きな問題点のひとつでしょう。
ただし、相談できる機関はあります。こちらについては後ほど紹介します。
二次障害を引き起こす可能性がある
グレーゾーンは、二次障害を引き起こす可能性もあります。
障害の診断が下りなかった場合、家族や同僚から「障害でないのなら単なる甘えや怠けだろう」と見なされがちです。
配慮すべき事情がないと当然のことながら、周囲と同じやり方で結果を出すことを求められますし、結果が出なければ本人の努力不足とされてしまいます。
しかし先に述べたように、診断がつかない=症状が軽い、ではありません。発達障害の基準は満たしていなくても、同じ先天的な原因から起こる症状であれば、本人がいかに努力しても結果につながりにくいことに変わりはありません。
そうした事情を無視して周囲からさらなる努力を強いられると、過剰なストレスによりうつ病や不安障害などの精神病を発症してしまうことがあるのです。
プライベートで起こる問題
グレーゾーンによる仕事への支障は後述しますが、プライベートで起こる問題もあります。
もともと発達障害は対人関係に問題を抱えやすい疾患ですが、障害と診断されないと、自分勝手な性格が原因と見なされてしまいます。
そのため、周囲はコミュニケーション能力を身に付けるよう求めます。
しかし、グレーゾーンとして適切な治療や支援が受けられない以上、状態の改善は困難です。
自身の極端なこだわりから他人に質問を繰り返したり、人の話をさえぎって喋り続けたり、空気を読むことができなかったりという発達障害特有の状態が続けば、友人知人どころか家族とも良好な関係性を築くことが難しくなってしまいます。
グレーゾーンによる仕事上の問題点
仕事の全体イメージを掴めない、段取りが取れない
発達障害と見られる傾向があると、仕事の全体イメージを掴めない、段取りが取れないといった問題が起こりやすいです。
自分なりのこだわりが強いため、関心の向かう箇所ばかりに意識が向かい、仕事全体を見渡すことが難しいのです。
全体が見えないために与えられた仕事をクリアするにはどうしたらいいか、その道筋を把握することができません。
また、指示通りにやるよう言われても、注意欠如によるケアレスミスが多い上、不測の事態が起こるとパニックになりがちということもあります。
このような場合、必要な作業をリストアップして、優先順位をつけるなどの対策が必要です。
漠然とした指示では理解できない
抽象的で漠然とした指示では理解できないことも多いです。
発達障害の傾向があると、言葉を額面通りに受け取ってしまい、「簡単に」「適当に」といった曖昧な表現ではどれくらいやればいいのか理解できません。そのため、必要以上に時間をかけて緻密に丁寧に仕上げるか、あるいはやり直しが必要なほどの雑さで終わらせるかといった極端な結果になりがちです。
ただ、期待通りに仕上げる能力がないわけではないため、具体的に指示を出すことで避けられることもあります。
しかし、グレーゾーンの場合、上司や同僚の協力を得られず、思うように実力を発揮することができないという状況になりがちです。
好きな作業に集中しすぎる
自分の関心があることに過剰に執着するのも発達障害によく見られる傾向です。
仕事でも好きな作業には集中し過ぎるものの、関心が持てない業務内容に関しては必要な技術や知識を習得することができません。
逆にいうと、集中できることなら高い成果が期待できるということです。そのため、配属先を配慮してもらうことで能力を発揮できる可能性は高いのですが、グレーゾーンの場合、職場に協力を仰ぎづらいという問題があります。
不用意な言動をしてしまう
発達障害の場合、想像力の欠如から不用意な言動をしてしまうことがあります。
相手がどう思うかを想像できないため、暗黙の了解だけでなく、世間一般で常識とされている遠慮や礼儀が抜け落ちている可能性もあります。
例えば上司や取引先に対して敬語を使わなかったり、何でも率直に言い過ぎて他人を不快にさせたりといったことです。
障害のために悪気なく不用意な言動をしてしまう、ということを周りが理解しているだけでも状況は変わりますが、グレーゾーンの場合、ただ単に常識のない失礼な人と思われてしまうかもしれません。
口頭での説明が理解できない
発達障害は言葉に対する理解力が低い傾向にあり、口頭での説明では理解できない場合もあります。印刷した資料やメールなど視覚による説明の方がわかりやすいため、職場では本来そういった配慮が求められます。ですが、グレーゾーンでは周囲の協力を得にくく、対処が難しいことがあります。
クローズ就労をせざるを得ない
発達障害の症状を抱えて就業するには職場の理解と協力が不可欠です。しかしグレーゾーンの場合、支援を求める根拠となる診断書が出ないため、障害者枠での就職や、就業時に障害を提示するオープン就労は選択できません。
そのため、症状について配慮を受けられないクローズ就労をせざるを得なくなってしまいます。
自分に合っていない方法で仕事に必要な技能や知識を習得し成果を出す必要がありますが、実力を発揮しにくいため正当な評価を得ることは極めて困難でしょう。
発達障害のグレーゾーンの方におすすめの職種
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)の傾向がある方は人間関係が苦手、自分が興味を持てることには集中して取り組むという特性があります。そのため、1人で黙々とできる仕事を選べば、特性を生かすことができるでしょう。
不測の事態に対応できず、自分ルールにこだわりがあるため、あらかじめ段取りを細かく決めておくことで、大きなトラブルは回避できるはずです。
■自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの方の職選びの条件
他人とのコミュニケーションが重要ではない
興味のあることに専念でき、習得した技術や知識が評価対象となる
マルチタスクや臨機応変な対応は求められない
興味があるものであれば単純作業もOK
■自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーンの方におすすめの職種
研究者
エンジニアアナリスト
校正・校閲
プログラマー など
なお、ASDのグレーゾーンの方、社内にそう思われる社員がいるという方は、自身もアスペルガーで、発達障害カウンセラーの吉濱 ツトムさんによる「隠れアスペルガー」についての記事を読んでみてください。仕事がうまくいくヒントが見つかるかもしれません。
https://toyokeizai.net/articles/-/117506
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)の場合、一つのことに腰を据えて取り組むことが苦手で、目まぐるしく変わる興味の対象に向かって常に行動する傾向があります。
そうした特徴を生かすには、さまざまな視点からのアプローチと実行力が求められる職種を選ぶとよいでしょう。
じっとしていられない衝動性が行動力として評価されれば、マイナスに働くことはありません。
■注意欠如・多動症(ADHD)のグレーゾーンの方の職選びの条件
自分の興味が持てるジャンルを見つける
誰よりも早く身軽に動ける行動力と推進力が評価対象となる
常識に縛られないユニークな発想が求められる
単純作業は向いていないので避ける
■注意欠如・多動症(ADHD)のグレーゾーンの方におすすめの職種
営業職
販売職
プランナー
マスコミ関連 など
学習障害(LD)
学習障害(LD)は文字や数字が苦手なので、作業や表現の過程で読み書きや計算などが求められない仕事がおすすめです。アートや料理といったジャンルであれば、障害の影響を受けにくいはずです。
文字情報が必要な場合は電子書籍の読み上げ機能を使ったり、計算が必要なら表計算ソフトを利用したりすれば、苦手な部分をカバーすることもできます。自分の症状をしっかり把握して、仕事がしやすい環境を整えていきましょう。
■学習障害(LD)のグレーゾーンの方の職選びの条件
読み書きや計算が必要ではない職種
読み上げ機能や表計算ソフトなどのツールを使えば苦手な部分をカバーできる
■学習障害(LD)グレーゾーンの方におすすめの職種
アーティスト
広告業
デザイナー
俳優 など
仕事で悩むグレーゾーンの方におすすめの相談先
公的なもので各種リンク先に飛ぶので、利用してみてください。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある方の自立と社会参加の支援を目的とし、医療から職業訓練まで一貫した体制で必要なケアを提供しています。
相談に障害者手帳は必須ではないため、グレーゾーンの方が受けられるサービスについて確認してみましょう。
センターは全国各地にあります。
また、障害者就業・支援センターでも就業・生活面について相談が可能です。
障害者就業・生活支援センターについて
精神保健福祉センターでも、医師や臨床心理士などの専門家が相談を受けてくれます。
https://www.zmhwc.jp/centerlist.html
サポステ
地域若者サポートステーション、通称サポステは15~49歳の就労を目的とした厚生労働省委託の支援機関です。
コミュニケーション講座やジョブトレ(就業体験)、ビジネスマナー講座、就活セミナー(面接・履歴書指導など)といった就労に必要なスキルを習得する場を数多く提供。職場定着まで全面的な支援が期待できます。
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