【発達障害はうつ病や適応障害や不安障害に二次障害でなりやすい!?原因と理由も最後に】
発達障害の二次障害とは
発達障害の方は、社会生活において様々な困難を抱えています。
周囲の理解が得られず適切なサポートが受けられないと、困難の度合いが大きくなり、本人が感じるストレスも非常に大きくなってしまいます。
その結果、ストレスによる精神疾患を抱えてしまったり、暴力などの問題行動を起こしてしまったりすることを「二次障害」と呼びます。
二次障害は特定の疾患を指す医療用語ではなく、発達障害に伴って生じる問題の総称となっています。
発達障害の二次障害は、その性質によって「内在化障害」と「外在化障害」の2つに分類されます。
<発達障害の二次障害の分類>
内在化障害 … 本人に影響を及ぼす精神的な症状
外在化障害 … 周りの人に影響を及ぼす行動面での問題
発達障害の二次障害とは①内在化障害
内在化障害は、発達障害の当人が影響を受ける精神的な症状を指します。
具体的には、「うつ病」「適応障害」「不安障害」「強迫性障害」「依存症」「心身症」「不登校・ひきこもり」などが挙げられます。
うつ病
うつ病は、若年層の二次障害として最もよく見られるものです。
仕事での失敗が続いたことで気分が落ち込み、眠れない・食欲が無い・何をしても楽しくないといった症状が現れたため精神科を受診したところ、うつ病と併せて発達障害であることが判明するケースが非常に多くなっています。
適応障害
適応障害とは、自分の置かれている環境に上手く適応できず、仕事や学校を無断欠席してしまったり、他者に対して攻撃的になってしまったりする状態を指します。
また、めまいや発汗など、身体的な症状を伴うこともあります。
環境におけるストレスで引き起こされるものであり、ストレスの原因を取り除くと症状が改善される点が特徴です。
不安障害
不安障害は、強い不安を感じてパニックや動悸が起こる障害の総称で、パニック障害やPTSD、強迫性障害、恐怖症など様々なものが不安障害に含まれます。
激しい動悸やめまいなどのパニック発作が起こるため、「人混みに行けない」「電車に乗れない」「男性と会話できない」など特定の行動や場面を避けざるを得ず、行動が大きく制限される場合があります。
強迫性障害
強迫性障害とは不安障害の一つで、自分でも意味が無いと分かっているのに強い不安に囚われてしまう「強迫観念」と、それを打ち消すために行う「強迫行動」の2つから成り立っています。
代表的な例が不潔恐怖症(潔癖症)で、何度も手を洗ったり、電車のつり革が掴めなかったりといった強迫行動が見られます。
ほかにも、「戸締りを何回も確認してしまう」「コンロの火を消したかが常に気になる」なども強迫性障害に該当します。
依存症
特定の行動を取ることについて、自分でコントロールできない状態を指します。
アルコール依存や薬物依存など、物質そのものに依存する「物質依存」と、ギャンブル依存やゲーム依存など、行動のプロセスに依存する「プロセス依存」があります。
発達障害の方は、モチベーションをコントロールしづらいという脳の特性(報酬系の機能不全)があるため、定型発達の方に比べて依存症になりやすいと考えられています。
心身症
心身症とは、精神的なストレスが原因で様々な身体症状が現れることを指します。
強いストレスによって胃潰瘍になったり、おなかの調子が悪くなる過敏性腸症候群、蕁麻疹などの皮膚疾患が代表的です。
また、気管支喘息などの持病が悪化するケースもあります。
不登校・ひきこもり
ひきこもりとは、長期間(厚生労働省の定義では6か月以上)学校や仕事に行かずに家に閉じこもっている状態のことを指します。
また、不登校とは1か月以上欠席が続く(病気・ケガによるものを除く)ことを指します。
不登校やひきこもりの背景に発達障害やうつ病などの精神疾患が関係していることも多い一方、家族関係や人間関係のトラブルがきっかけでひきこもりとなるケースもあります。
いずれの場合も家庭だけで解決しようとせず、専門機関と連携・相談することが大切です。
発達障害の二次障害とは②外在化障害
外在化障害とは、発達障害の二次障害の中でも、自分以外の他者に影響を及ぼすものを指します。
具体的には「反抗挑戦性障害」「行為障害」「暴力」「家出」「非行」などの反社会的な行動が挙げられます。
反抗挑戦性障害
反抗挑戦性障害とは、10歳前後の子どもにおいて、反抗的で挑戦的な行動が継続して現れ、それが日常生活や人間関係に支障を来している状態を指します。
例えば、大人をわざと怒らせる言動を取る、同年代の子どもともよくケンカをする、癇癪を起こすなどの行動が6か月以上続くといったものです。
発達障害などの生まれつきの性質と、学校や家庭における環境的な要因の両方が影響すると考えられています。
行為障害
行為障害とは、他者への威嚇や動物虐待などの暴力行為や、繰り返し嘘をつく、他人の物を盗んだり壊したりするなど、犯罪行為を含む様々な反社会的行動を繰り返す状態を指します。
思春期の子どもに多く見られ、両親からの愛情不足や虐待、人間関係のトラブルなどから引き起こされると考えられていますが、その背景に発達障害が関係しているケースもあります。
暴力・家出・非行
反抗挑戦性障害や行為障害に該当するほど程度が大きくなく、継続性が見られない場合でも、暴力や家出、非行といった反社会的な行動がしばしば見られる場合は、発達障害による二次障害であると捉えることができます。
「自分のことを誰もわかってくれない」「自分なりに頑張っているのに怒られる」という孤独感や自己否定感が、他者への攻撃性や反社会的な行動へとつながってしまいます。
これらの問題行動は思春期に現れることが多いものの、幼少期でもわざと大人を困らせたり、怒られたりする行動を取る場合があります。
外在化障害は本人の気質や特性だけでなく、環境的な要因で生じる部分も非常に大きいため、幼い頃から丁寧に愛情深く接することが大切です。
また、これらの外在化障害が、内在化障害と密接に関わっているケースも多く見られます。
発達障害から二次障害が生じる原因・理由
発達障害の二次障害は、周囲の理解が無く、適切な配慮が受けられないことが原因となって生じます。
発達障害の方は、外見上は“普通の人”です。←この表現論文から見つけたので使ったのですが、私は大嫌いです。不快に思われたら申し訳ございません。
また、仕事や勉強の全てが苦手なのではなく、一部のことだけが極端に苦手なだけで、周りと同じかそれ以上にできることもあります。
そのため、周りの人も発達障害について理解しづらく、「頑張ればできるよ」「怠けているんじゃない?」「皆そんな感じだよ」と適切ではない声掛けや対応をしてしまうことがあります。
こうした経験からストレスを感じたり、自己肯定感が下がってしまったりすることによって、「2.発達障害の二次障害とは」で挙げたような二次障害が生じることになります。
また、発達障害の二次障害には、それらを解決しづらくなる「悪循環」が存在します。
ADHD・ASD・LDのそれぞれの悪循環について、以下で詳しく説明していきます。
発達障害から二次障害が生じる原因・理由①ADHDの場合
ADHDの方は、特性によるケアレスミスの多さやそそっかしさによって、周囲から叱責を受けることが多いです。
また、自分自身は改善したいと思っているにも関わらず、何度も同じ失敗を繰り返してしまうため、「自分はダメだ」と自信を失ってしまう方も少なくありません。
「どうせ自分には無理だから」とやる気を失っている状態を見て、周りの人は「なぜもっと頑張らないのか」とより強く叱責します。
すると、ますます本人は自信とやる気を失ってしまうという悪循環が生じ、やがてうつや適応障害といった二次障害を引き起こすことになります。
<ADHDの二次障害の悪循環>
不注意・多動性・衝動性によるミスや問題行動
失敗経験や周りからの叱責
本人の改善意欲の低下
繰り返されるミスや問題行動
周囲のさらなる叱責
→やがて二次障害へとつながる
発達障害から二次障害が生じる原因・理由②ASDの場合
ASDの方の場合は、コミュニケーションが苦手で人間関係を築きにくいほか、こだわりが強く融通がきかないなどの困りごとを抱えるケースが多くなっています。
会話が噛み合わなかったり場にそぐわない発言をしてしまった際に、怒られたり笑われたりすると、コミュニケーションを取ること自体を避けるようになってしまいます。
また、イレギュラーな出来事について丁寧に説明するなどのサポートが無いと、他者と行動することそのものを避けるようになる場合もあります。
ASDの方の場合は、ソーシャルスキルトレーニングを通してコミュニケーションのパターンを覚え、それを日常生活でも実践していくことが重要ですが、コミュニケーションや人との関わりそのものを拒否するようになると、コミュニケーションスキルが上達しないばかりか、社会的に孤立してしまう場合もあります。
社会からの疎外感や「自分のことは誰もわかってくれない」というストレスが、精神疾患の原因となったり、反社会的な行動の原因となったりすることがあります。
<ASDの二次障害の悪循環>
コミュニケーションの行き違い、融通の利かなさ
周囲からの叱責やからかい
コミュニケーションや他者との関わりを避ける
コミュニケーション力や臨機応変さを身に付けることができない
周囲からの一層の叱責や孤立
→やがて二次障害へとつながる
発達障害から二次障害が生じる原因・理由③LDの場合
LDの方の場合は、読み・書き・計算といった基礎的な学習スキルが上手くこなせないため、「こんな簡単なこともできないのか」と叱責されたり、「字が汚い」「簡単な計算を間違えるなんて」と周りから笑われたりしてしまうことがあります。
また、学校現場では、「反復練習さえすれば改善できる」という誤った指導により、ひたすら音読や漢字練習、計算練習をさせられて、ますます読むこと・書くこと・計算することが嫌いになってしまうケースが非常に多く見られます。
真面目な子であればあるほど、先生の指示に従って一生懸命練習するのですが、それでも改善されないため、やがて自信を無くして自己否定に陥り、不登校になったり、小児うつや適応障害を発症してしまったりするケースもあります。
<LDの二次障害の悪循環>
読み・書き・計算の苦手さ
周囲の叱責、からかい、負担の大きい反復練習
読み・書き・計算を忌避
学習スキルの停滞
周囲からの一層の叱責
→やがて二次障害へ
発達障害の二次障害の予防と対応
発達障害の二次障害については、周囲が特性を正しく理解し適切な配慮を行うことで予防することが可能です。
また、二次障害を抱えてしまった場合でも、医師や専門機関に相談し、しっかりと休養を取ったり、認知の偏り(考え方のクセ)を直したりすることで治療・改善が可能です。
発達障害そのものを解消することはできませんが、二次障害やそれに伴う困りごとは必ず解消することができます。
以下では、発達障害による二次障害の予防や対応のポイントを紹介していきますので、参考にしていただければと思います。
発達障害の二次障害の予防と対応①できていることを褒める
発達障害の方への適切な配慮とはどのようなものか、全く知識の無い人が正しい知識を身に付け、それを実践するまでには相当の時間が掛かります。
企業や学校では発達障害に関する研修が行われることも増えていますが、研修をすればすぐに完璧な対応ができるというものではありません。
専門的な内容を理解することが難しいときは、とにかく「褒める」ことを意識しましょう。
発達障害であっても、定型発達であっても、褒められると人は嬉しいものです。できないことを指摘されるよりも、できていることを褒められた方が、「次も頑張ろう」「苦手なことにも挑戦してみよう」という気持ちになれます。
発達障害の方自身も、自分で自分を褒めることを意識してみましょう。
「できないことよりも、できることに注目する」ということは、自分自身を振り返る際にもとても大切です。
「遅刻しなかった」「昨日よりもミスの数が少なかった」など、どんな小さなことで構いません。
1日1回自分の行動を振り返り、良かった点を挙げることを習慣にしていくと、徐々に自己肯定感を高めていくことができます。
発達障害の二次障害の予防と対応②対応方針を共有する
発達障害の方への対応方針は、組織の中でしっかりと共有するようにしましょう。
Aさんは理解ある対応をしてくれるのに、Bさんは頭ごなしに叱るだけ、という状況ではストレスがより大きくなってしまいます。
特にお子さまの場合は、父親と母親で教育方針が違ったり、先生によって対応が異なったりすると、大人が信用できなくなり、余計に問題行動が増えてしまう場合があります。
よくある困りごとを具体的に挙げ、その対応について細かく整理し共有しておきましょう。
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