ムンバムンバとピッコリーノ
①そこは不思議ないきものや、かみさまが住んでいる美しい島。
島の真ん中には休火山と温泉があり、
金色の鳥のホウオウさまと銀色の龍神さまがいました。
ドシン、ドシン ・・・ ざぶーん。
②からだの大きな、ムンバムンバがやってきて、龍神さまの温泉につかります。
「ふぅ~。きもちいい。龍神様、湯加減が最高だ」
「おおそうか、水の神のわしと、火の神のホウオウがいるからのう。・・・ところでムンバムンバ、幸せか?」
「昔、オイラがなくした目玉のかわりに、龍神様が宝の水晶玉をいれてくれたろ?あんときオイラ幸せな気持ちだったなぁ。きれいだねってみんながほめるんだ。感謝しているよ」
「そうかそうか・・・でもムンバムンバ、なんだか今は寂しそうな顔をしているのう。」
「オイラ、見えるほうの目もだんだん見えなくなってきているんだ。
だからね、今美しいものを見ておくんだ。」
ムンバムンバと龍神様が話し込んでいると、夜になっていました。
「ああ、星がきれいだ」
と、夜空を眺めると
③ピカリ!と流れ星!
すこしすると、山の穴の中からかわいらしい歌声が聞こえてきました。
「ホウオウさま、お山の穴に誰かいるの?」
「あら、ムンバムンバ、この中にはピッコリーノという、小さい人がいるのよ。今美しい流れ星を見たでしょう。あのこは感動して心が動いたときに歌ったり、笛を奏でるのよ。素敵な曲ね」
それからというもの
ムンバムンバは次の日もまた次の日もピッコリーノの歌が聞きたくて穴がきになってしかたがありません
ピッコリーノの心を動かし、感動させるにはどうしようかと考えます。またあの歌が聞きたい!笛も聞きたい!会いたい!
また流れ星一緒に見れるかなぁ。
④天気のいい日、ムンバムンバは海を眺めていました
海では鯨たちが歌いながら優雅に泳いでいます。
プシューッ!プシューっ!鯨の親子が息を吐くと
ふわりと美しい虹がかかり
風に流れて一瞬で消えました
「わぁっ!ねぇみた?ピッコリーノ・・・見れないよねぇ。あの美しい虹を見せてあげたいよ」
ピッコリーノも穴の外が気になってきました。
⑤「ホウオウさま、わたしを背中に乗せて穴の外まで連れて行ってくれませんか?ムンバムンバに会いたいなぁ」
「ピッコリーノ、そうしたいけど、私は火の神。あなたを背中に乗せたら焼け焦げてしまうわ」
ドシン、ドシン おやまをのぼり ムンバムンバは色とりどりの宝石や真珠を穴の中に入れました。
「ピッコリーノ、これは鯨たちがくれた宝石だよ。むかし、宝の船をまちがってのみこんじゃったのをやっと吐き出したんだって。」
そこのほうでキラキラ光るのが見えました。
ムンバムンバは 穴のなかをのぞきこみます。
⑥すると、ぽろっ・・・・ボトーーン!パリーン!
「ああぁぁ!」
ムンバムンバの水晶の目玉が取れて穴に落ちて、
割れてしまいました。
「われちまったぁ。龍神様にあやまらなくっちゃ・・・。」
割れた水晶の中からなにかのふしぎなタネが出てきたので
それを見つけたピッコリーノは穴の底にタネを埋めました
⑦何日かするとタネからぽん!と芽が!
ピッコリーノは芽が出たのが嬉しくて、笛を吹きます。
ムンバムンバは笛の音色を聞いて嬉しくなり
お礼に今まで集めたきれいなものをパラパラと穴に入れました。
それは肥料となって
⑧芽はぐんぐん成長し、やがて大きな木になり・・・
とうとう穴を突き出てきました!
ピッコリーノは木をかけのぼり、穴から、ぴょーん!と飛び出し、
外にいたムンバムンバが受け止めると
⑨いっせいにピンクの花がぱあーーっと咲きました!
ぽろぽろと涙を流しながら、二人は出会ったのです。
「やっと会えたね!」
「あぁ見える!かわいいピッコリーノも、美しい花も」
⑩ムンバムンバのぽっかりあいた目の穴に、
ピッコリーノはすっぽり入ってにこりと笑いました。
おしまい。