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キャベツ
ザク切りでも千切りでもない、「太め」に切ったキャベツが苦手だった。よく、給食の揚げ物に茹でて添えられていた。衛生面の配慮で火を通していたと後から聞いたが、口に近づけると独特のにおいが鼻に入ってきた。残せないので、顔をしかめながら噛んでいた。
生のままでも、中濃ではないウスターソースをかけたものは好きではなかった。ウスターソースでは、あのにおいがなぜか引き立つように感じられたのだ。ウスターソースは、アジフライには最高なのに。実家の常備はウスターソースだったので、子どもの頃は苦労した。
先日、キャベツが4分の1玉だけ冷蔵庫に残っていた。前日、半玉購入し、その半分を豚肉と味噌炒めにした。しばらく前は、水餃子と一緒にトマトスープにした。短期間に同じ料理を繰り返すのが好きではない、面倒な性格だ。さて、今度はどうやって食べようかと悩む。味噌味、トマト味以外で。炒めず、煮ずに。
とんかつ屋さんで出てくるように、きれいに細くカットできたら、柑橘系のドレッシングをかけて頬張ることができるのだけれど、美しい千切りのできる技術も道具も持ち合わせていない。私は無意識に、苦手に挑戦したかったのだろうか。4分の1玉の小さな塊を、いつのまにか、ザク切りでなく「太め」に切ってしまっていた。
もう、焼くことしか思いつかなかった。フライパンに、油も引かずに広げて火をつける。あんまり味気ないかなと、豚コマを少し。豚肉にしっかり火を通したいので、蓋をした。
台所に、火の通った豚肉の脂のにおいと、焦げる手前のキャベツの甘い香りが漂い始めた。遅まきながら気づく。
お好み焼き……?
粉も卵もソースもないが、私にはお好み焼きだった。温かいからか、全く調味していないのに美味しかった。箸が止まらず、冷める間もなく食べ終えた。
決して「映え」ない、恥ずかしくて人には作ってあげられない。でもきっと、いつかまた作る予感。