彼女が奏でる、私の救い
横浜モアーズ前。
横浜駅の改札をくぐると東京のにおいが消える。今日は金曜日。彼女が出ているはずだ。
キーボードとスチールギターだけでラブソングを歌う彼女。音世界と名乗る彼女。彼女の歌を聴くと平日の汚れが消し去られる。
彼女はいた。わたしは声をかけた。
「こんばんわ」
髪の毛がシルバーグレーの彼女は言った。
「今日もありがとう。寒いね」
わたしはコートをつまみながら。
「厚着してきましたから大丈夫です。今日は何曲ですか?」
「30分ぐらいで引き上げるつもりだから、5曲ぐらいかな」
「今日も楽しみます」
「よろしくね!」
彼女はギターをチューニングしはじめた。ジョイナスが冬のイルミネーションを見ていた。
「それじゃぁ、はじめるね!」
彼女が歌い出した。ちょっと低音気味な彼女の声。でも歌詞はわたしたち女性を歌っていた。これを聴くと月曜日からの5日間を消し去ることができる。
歌っているとだんだん人が集まってきた。
いつかは彼女はメジャーへ行くと思う。そうなっても応援する。でも、それまではわたしと見つめいながら歌って欲しい。