「つながりが壊れるかもと不安な時に使って欲しい」|cotree × emol のプロダクト対談:中編
cotree編集部のたにぐちです。
感情を記録してAIロボと会話するアプリ「emol」を中心にサービスを展開するemol株式会社のCEOであるちかみさんと弊社COOのひらやまとの対談の中編です。
前編から攻守交代し、中編ではちかみさんが「cotree」への素朴な疑問をひらやまへぶつけます。
カウンセリングの「理想的な終結」
ちかみ:カウンセリングって、目標はどういうところになるんですか?
ひらやま:定義はすごくいろいろあるんですけど、河合隼雄さんはある本で「理想的な終結には条件がある」って言ってます。
本によると条件には三つで。一つは「この人との関係性がうまくいかない」みたいな外的な問題がなくなること。もう一つは内的に人格的な成長をすること。最後にその二つが関係していると認められること。
例えば内的な成長がなくても、嫌いな人がいなくなったら悩みは解消はするんです。でもそれってカウンセリングの効果ではなくて、内的な成長を通じて外の解釈が変わって耐えられるようになる、良い捉え方ができるようになる、っていうのがカウンセリングでは大事なんです。
ちかみ:なるほど。
ひらやま:そして、そういったプロセスが「カウンセリングによって行われたよね」と合意されることで、ちゃんと意味がついている。色々言いましたけど、つまり、カウンセリングがその人の中で意味がある時間になっていることが、「カウンセリングの目標」の定義ですね。もうそこまでいったら多分カウンセラーがいなくても大丈夫だから。
とはいえ、「そうやって終われれば一番いいよね」みたいな理想ですね。流派によって違うので。あくまでも一つですけど。
資格の位置付け
ちかみ:カウンセリングに流派っていろいろあるじゃないですか。
ひらやま:ありますあります。
ちかみ:cotreeのマッチング診断は、流派にも合わせてマッチングしてるんですか?
ひらやま:今だと、流派というよりは資格ベースですね。あとはカウンセラーさんに自主申告してもらってる「ここが得意です」っていうこととか。「こういうテーマの相談が得意です」というニュアンスです。
「〇〇流だからこうです」っていうのをやってないのは、それ以上に「ユーザーのどういった困りごとを解消できるんですか?」を重視しているからですね。
ちかみ:あー、恋愛だったりとか。
ひらやま:とか、人間関係や職場の話とか。
で、「ここに強いですよ」をわかりやすい形で客観的に担保してるのが、キャリアコンサルタントや臨床心理士みたいな資格という位置付けです。
ただ、あくまでも資格はわかりやすい形でしかないと思っていて。実際、資格を持ってなくてもユーザーさんにいつも「ありがとうございました」って感謝されるカウンセラーさんもいるので。
資格だけで判断するのもちょっと違うかなとは思ってはいます。
ちかみ:そうですよね。ちょっと自分に引き寄せすぎかもしれないですけど、カウンセラーの人に話すより、すごい聞き上手で支え上手な友達に話す方がいいみたいな場合もあると思ってて。そう考えると、確かに資格がどうこうっていう話ではないかもしれないですね。
ひらやま:そうですね。友達や恋人に相談して、それが良い方向に作用している場合はそれで全然いいと思います。カウンセラーはいらないかもしれない。
でも、つながりはあるんだけど、話すことでとそのつながりが壊れるのがちょっと不安、みたいな時に使っていただけると良いのかなと思っています。
例えば、夫婦で子育てについてもっと真剣に考えたいんだけど、奥さんの強いモチベーションに比べて、夫は全く興味がない、むしろ話題に出すとすごく腹を立ててしまう、みたいな時とか。
cotreeの気になるあれこれ
ちかみ:マッチング診断で気になったんですけど、診断結果で「タイプ」が出るじゃないですか。この4つのタイプってどう出してるんですか?
ひらやま:理論的には『ソーシャルスタイル理論』を使っていて、その中で分けられている4つのタイプに準じて分類してますね。簡易的なものなので精度は中の上くらいですけど。
ソーシャルスタイルとは
他者との関わり方の傾向を「ドライバー」「エクスプレッシブ」「エミアブル」「アナリティカル」の4つのタイプに分け分析する理論。
ちかみ:このタイプはカウンセリングに活かされるんですか? マッチングに活かされるんですか?
ひらやま:基本はマッチングですけど、最終的にはどちらにもですかね。カウンセリングの時に一番大事なのはカウンセラーとの信頼関係が築けるかどうかだと思っていて、タイプが近い方が話すスピード感や考える時間が阿吽の呼吸でなんとなくわかりやすい傾向にあるので、近いタイプの人をマッチングしています。
ちかみ:例えば私は「冷静沈着で慎重な完璧主義者」なんですけど、「この人は完璧主義者だから認知行動療法のいう“べき志向”が強い人なのかな」とかが参考になったりするんですか。
ひらやま:そうですね。あくまでも参考にですけど。
マッチング診断に限らない話なんですけど、カウンセラーさんが判断しやすかったり、あと我々としてもマッチングしやすかったりする情報はいろいろな角度のものがあるとよいなと思ってタイプ診断を入れています。
ちかみ:あと、マッチング率って何がパーセントで表されているんですか。そのカウンセラーさんに合う率?
ひらやま:そうです。カウンセラーさんとユーザーさんのタイプや悩みの種類、あと一応、カウンセリングを話してしたいか、書いてしたいか。
そういった要素をマッチングのロジックに入れてパーセンテージで出るようにしています。
ちかみ:カウンセラーさんには話すだけ、書くだけっていう人がいるんですか?
ひらやま:いますいます。カウンセラーさんには、リアルでも働いているし、cotreeでも働いているし、病院にも勤務しているし、みたいな、副業をしている方も沢山いて。
働ける時間が限られていたりもするので、夜寝る前や早朝を活用したいからcotreeの書くカウンセリングだけやってる、とかあります。
カウンセラーの「働き方改革」みたいな意味合いですね。
ちかみ:その働き方ってどんな感じなんですか? シフト制的な「火曜日は何時から何時まで毎週入ります」みたいな感じなのか、もうバラバラに「今月ここが入れます」って感じなのか。
ひらやま:それだと後者に近いかな。カウンセラーさんにほとんど任せていて、一応月の最低稼働回数をお願いはしてたりしますけど、「いつ、どれくらいのペースで」とかそんなに決めてないので、カウンセラーさん次第ですね。
ちかみ:ユーザーが予約する時はどうなるんですか?
ひらやま:カウンセラーさんごとにカレンダーがあるので見てもらって、空いている枠にその都度予約してもらうという形になります。
だいたいカウンセラーさんごとに何曜日の何時に枠を空けてるかは決まっているので、リピート予約とかだと勝手がわかるというか。「この人は火曜と木曜だから、じゃあ来月は次の木曜にしようかな」とか、そんなペースになりますね。
ちかみ:なるほど。
カップルカウンセリングの難しさ
ちかみ:アメリカとかで、カウンセリングを夫婦で受けたりカップルで受けたりってあるじゃないですか。そういうのって。
ひらやま:今はやってないですね。これからやりたいなとは思ってるんですけど、難しさもあって。アメリカとかでやってるのって多分、対面だと思うんですよね。でもオンラインだと、なんか二人がケンカし始めた時とかに……。
ちかみ:あ、止められないと。
ひらやま:そう。あと、片方はすごいやりたいけど、もう片方は全然やる気がない、とかも想定されて。
一応、「両方がやりたい時にちゃんと申し込んでください」みいな形で、ユーザーの気持ちとかニーズに合わせて実現できなくはないかなと思うんですけど、サービスを公開するとなると、ほんとにいろんな人が来るので。
「二人ともやる気があります!」みたいなケースだったら、今いるカウンセラーでもいけるけど、そうじゃない時の対応は結構難しいんじゃないかなと思ってます。だからかなり枠組みが難しいなと思っていて。
ちかみ:たしかに。
ひらやま:でも、そのニーズは結構あるんですよ、「一緒にしゃべっていいですか」っていわれるユーザーさんもいますし。
コーチングもご夫婦で受けられたりするので、枠組みさえちゃんと整えられればやりたいなとは思っています。
ちかみ:cotreeって24時間対応ですよね。
ひらやま:そうです。カウンセラーさんにも、ユーザさんにも、海外にいる方がいるので。時差を利用してやっています。
ちかみ:海外需要は結構あるんですか?
ひらやま:ありますね。慣れない土地なのでコミュニティがどうしても多くないし、どこかに所属していてもそこで深刻な悩みは相談できないとかは結構あるみたいです。
「わかる」と「腑に落ちる」の違い
ちかみ:起業家向けの「escort(エスコート)」とか、企業向けとかいろいろあるじゃないですか。そういったサービスではカウンセラーさんは違う人になるんですか?
ひらやま:escortはちょっと違いますね。でも、企業向けの「cotree for business」や学生向けの「cotree for student」は枠組みとしてほとんど「cotree」と一緒です。
あくまでもユーザーさんはある企業や大学の一人ひとりなので、そんなに変えてないですね。
ちかみ:企業や大学が連携してたら「cotree」をすぐ使えますよっていう感じですか。
ひらやま:そうです。でも「to B」向けにサービスを提供する形になので、決済方法や決済者が違ったりするから、その辺をやりやすくしているみたいな感じですかね。
ちかみ:なるほど。私は、自分自身が起業家であるので、起業家向けの「escort」がすごい気になってるんですけど、どういう……、カウンセリングなんですか? コーチングなんですか?
ひらやま:ありがとうございます。escortはコーチングですね。もしタイミング的にカウンセリングの方がいい人がいたらご案内することはありますけど。
ちかみ:コーチングではどういう相談がくるんですか。
ひらやま:相談内容の割合としては、社内の人間関係やマネジメントの相談がちょっと多めですね。でも、会社をどうするかみたいな相談や、「ビジョンとかミッションを固めたいんだ」みたいな相談もあるので、ほんといろいろです。
ちかみ:へー。ビジョンやミッション固めたいみたいな相談もあるんですね。
ひらやま:といっても、どんな内容がいいかというよりは、どのように決めるか、自分が決めるならどうやって進めるか、一緒にこの人と決めたいんだけどどういうふうに進めていけばいいか、みたいなことを話しますね。
ちかみ:じゃあ、アイデア出しの方法を一緒に考えてくれたりとか。
ひらやま:そう。そうなんですけど、「みんなでブレストして抽象度を上げて、最後はトップダウンで決める」みたいなセオリーはもうあるし、そういう一般論って本を読んだらわかるじゃないですか。
でも、腑に落ちるかって全く別で。だから、自分に合ったやり方がわかるっていうことがコーチングでは大事になると思ってます。
例えば、特性として「決める力」が強いから「じゃあ最後はこれにしましょう」っていうやり方にするのか、みんなと合意を作るのが上手だから「じゃあその方向でいきましょう」っていうやり方をするのか、みたいな。
自分のアクションを後押ししてくれる存在が基本的にはコーチなので、コーチがすごいクリティカルなアイディアを持っているわけではない。実際、持っていても言わないことの方が多いと思います。
ちかみ:それは考えるべきことだからということですか?
ひらやま:近いですね。良い答えが出るのももちろん大事なんですけど、「良い答えを出せた」と本人が思うことがすごく大事なので、「これなら大丈夫そうだ。よし頑張ろう!」みたいな。
ちかみ:なるほど。
ひらやま:だからどんな悩みでも対応できるっちゃ対応できると思います。
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ちかみさんの素朴な疑問は「なるほど、ユーザーさんそういったことが気になるのか」と新鮮な気持ちでインタビューを聞いていました。
ひらやまの語りは「あくまでその人の選択によりそうサービスでありたい」というサービス像を強く感じさせます。
そして、そのことは「カウンセラーはいらないかもしれない」という言葉にわかりやすく集約されているのではないでしょうか。
次回は最終回。お互いのサービスについての疑問が一通り出揃ったところで、後編では「プロダクトとは」という少し踏み込んだテーマで語りあいます。
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