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cotree Academyマガジン

カウンセリングの学びを促進していくために、カウンセラーに向けたカウンセリングに関する限定コンテンツを配信していきます。 ▼cotree Academyについて https://…
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2021年2月の記事一覧

児童精神医学の“今”と“これから”

はじめに-精神医学、児童精神医学の”今” 精神医学の潮流は全体として大きく変わりつつある。統合失調症や躁うつ病といった疾患同士の関連が生物学的な知見から明らかになり、従来の精神疾患の枠組みのように「カテゴリカル」な診断(境界を定め、定義する診断)で疾病を分類することへの問題が生じており、「ディメンジョナル」な診断(症状の重症度を”無し”から”重度”という評価を記述する診断手法)へと変化することが求められている。 このような流れは児童精神医学の分野にも大きな影響をもたらしてい

「狐憑き」を通してみえるもの― ムラのなかで心の病が「受容」されるということ ―

「狐憑き」とは何か…あるフィールドワークの記録2000年の夏、教育委員会による民俗誌編纂調査で訪れたA県の山奥のムラで、私は初めて「狐憑き」にまつわる世間話(ここでは口承による物語の意)を耳にしました。大正時代に生年を持つ話者の方々からは、当たり前の出来事として、ある日突然村人に起きる「異変」の様子が語られます。 ペンを止めて聞く私に、話者の隣に居た年配の女性がほほ笑みながら答えます。 詳しく聞けば、狐に憑かれた者は例外なくおこわ(赤飯)や油揚げを食べたがるので、釜で炊

カウンセリングで子育てを支えるために―応用編:発達段階ごとの悩みへの向き合い方(後編)―

青年期のアイデンティティ発達や親子関係についての研究するほか、スクールカウンセラーや幼稚園カウンセラーなどで教育・保育(子育て支援)分野で活躍なされている遠山千尋カウンセラーに、全3回に渡って、心理支援を通した子育て支援のあり方や実践について解説いただきます。 入門編では、子育ての悩みを紐解きながら、大まかに振り返ってきました。 応用編では、子どもの発達段階別によく見受けられる悩み事の実体や傾向、また、どんな対応をしていけるとよいかについて考えていきます。 乳児期(0歳~

永井玲衣 「 哲学対話と場の安全性」

「哲学」というと一見して、なんだかとっつきづらい大変なものというイメージがあります。しかし、鷲田清一によれば、哲学とは、なにも専門書を長い時間を掛けて読解するようなものだけではなく、「問う」という作業それ自体ことでもあるといいます。 そういった「問う」という作業にフォーカスを当てて、哲学を身近にしようとする営みに、「哲学対話」というものがあります。 今回は、この哲学対話について研究を行っている哲学者の永井玲衣さんに、哲学対話について、そして哲学の営みをセラピーの場面に接続し

メールカウンセリングでエモティコンを使うこと

メールでやり取りをするという作業において、私たちは「メールを書くこと」と「メールを読むこと」の二つを行っています。それはメールを使ってカウンセリングをするという状況においても大きく変わるものではありません。とはいえ、カウンセリング場面という特異な状況においては、カウンセラーには、普段行っているメールのやり取りと比べてとくべつに高い「メール表現力」と「メール読解力」が求められることになります。  今回は、そのうちの「メール表現力」に関わることについて、具体的には、「エモティコン

カウンセリングで子育てを支えるために―応用編:発達段階ごとの悩みへの向き合い方(前編)―

青年期のアイデンティティ発達や親子関係についての研究するほか、スクールカウンセラーや幼稚園カウンセラーなどで教育・保育(子育て支援)分野で活躍なされている遠山千尋カウンセラーに、全3回に渡って、心理支援を通した子育て支援のあり方や実践について解説いただきます。 入門編では、子育ての悩みを紐解きながら、大まかに振り返ってきました。 応用編となる今回(第2回)と次回(第3回)の2本では、子どもの発達段階別によく見受けられる悩み事の実体や傾向、また、どんな対応をしていけるとよいの

カウンセリングで子育てを支えるために―入門編:子育ての悩みを紐解く―

「子育て支援」というとどのようなことを思い浮かべるでしょうか? もしかしたら、何か子育てに役立つアイデアやコツ、工夫を教えることを思い浮かべたり、発達心理学の知識を伝えたりすることを思い浮かべる人もいるかも知れません。 たしかに、アドバイスを伝えたり、心理教育をしていくことが大事な局面もあります。とはいえ、カウンセリングにこられるお母さんの中には、むしろ育児書を読み漁ったり、たくさん勉強をしていて、それでもどうしようもなく苦しくて、途方に暮れてやってこられる方も多いものです

“自殺”に対して何ができるか? :自殺についてカウンセラーが知っておきたいこと

我が国の自殺者数はここ数年、減少傾向にありましたが、今年ふたたび増加に転じるのではないかと懸念されています。 私達、こころの専門家は、この状況で何ができるのでしょうか?そして、目の前のクライエントが「もしかしたら自殺を考えているんじゃないか」となったとき、何をすればいいでしょうか? この記事を通して、皆さまのそれぞれのフィールドで自殺に対して何ができるかのヒントを得ていただければと思います。 ※なお、本記事はcotree Academyに参加している梨谷竜也講師にご協力いた