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北アルプスへの道⑥ 3日目・・大天井岳〜東鎌尾根〜槍ヶ岳!(大本命)
2021.9.19〜22
一の沢登山口〜常念岳〜大天井岳〜東鎌尾根〜槍ヶ岳〜上高地
Total 42km +3400
<これまでの記事はこちら>
◆ダイジェスト・・・ダイジェスト:台風、地震ニモマケズ
◆1日目・・・ 1日目:一の沢登山口〜常念岳+前常念岳(途中まで)
◆2日目・・・2日目・・常念岳〜横通岳〜大天井岳
陽が昇ったのかな……夢現のまま窓の外に目をやると、それは太陽ではなく満月だった。昨晩重く垂れ込めていた厚い雲は消え去り、中秋の名月にうっすらと照らされ、穂高連峰が浮かびあがる。ああ、晴れたみたい。Kちゃん、Nくんも目を覚ましたようだ。「さっ、今日は槍に行くよ。神さまが、行っていいってよ!」3人の覚悟は決まった。
パパッと身なりを整え、食堂へ。お弁当でいいかと思ったが、大天荘の食事のおいしさは捨てられない。その判断は間違っていなかった。期待を裏切らない最高の朝食よ。槍攻めに向け、しっかりとエネルギーチャージだ。
出発、、、その前に。マジックアワーの誘惑
写真や映像を趣味とする人ならお分かりであろう「マジックアワー」。太陽の位置が+6度から-6度の角度にあたる時間帯で、時間にすると日の出や日の入りの前後40分位の間……らしい。前日の常念小屋から見た日の出の景色も素晴らしかったが、山脈の「⊃」の右下あたりに大天荘は位置するため、穂高連峰や槍ヶ岳をはじめ、それに続く東鎌尾根の稜線は、まさに神が創った芸術品。大盤振る舞い過ぎる、夢のような絶景をどうぞ。
一足早く紅葉に染まる尾根。で、(やっぱり)転倒……
早朝5時、早めに出発したはずなのに、のっけから30分押している。言い訳するならば、私たちは単に登山に来ているわけでない。「写真を撮る」も同じく大事なことなのだ。大天荘から大天荘ヒュッテへと下り、牛首展望台は……Nくんだけ行ってきて(割愛①)。喜作新道はすっかり秋。朝陽に照らされた、赤、黄、橙と色づいた木々は、朝露に濡れ一層みずみずしく輝いていた。赤岩岳の手前あたりでNくんが追いついてきたので、「じゃ、写真でも撮るよー」と踵を返した瞬間、ドテン!!! ザックの重心が前に触れ、それを肘で止めて滑落こそセーフだったが、両脛、右肘を負傷。一度は転けないと始まらない病ないし、呪いにかかっているとしか思えない。でも、これで厄が落ちたんだ……と言い聞かせる。めちゃ痛い。富士山を遠くに眺めながら進むと、ヒュッテ西岳が見えてきた。なんだよ、この景色ったら。適切な言葉が浮かばない。日本じゃないみたい。海外のソレを見たこともないけれど。
「もう、ここでやめる!」47歳、ふて腐れる
西岳……Nくんだけ行ってきて(割愛②)。ハシゴと鎖場をなんとかこなし水俣乗越に到着。ここから、槍ヶ岳の東の門番・東鎌尾根が待っていた。苦手なガレ場の下りが続き、私一人遅れ気味。迷惑はかけられないと頑張ってみるも、そう簡単に下れるわけもない。転んだ足は痛いし、2人とも先に行って見えないし……不甲斐なさと疲れと痛みでテンション急下降。「もう、ここでやめる!」自分でも意味が分からないが、本気でそう思っていた。プンプン顔はおふざではなく、かなりマジだった。
崩落が続く北鎌尾根を横目に槍ヶ岳を目指す
とはいえ、ふて腐れたところで誰も助けてはくれない。短い足を最大まで持ち上げ、四つん這いになり、断崖の尾根を一歩一歩進む。右横に見える北鎌尾根から時折、ゴゴゴゴッ……と不穏な音が聞こえてくる。地震による崩落で登山者が救助されたのはこの辺り。急峻で崩れやすい箇所ではあるが、大きな地震(余震)がきたら私たちだってひとたまりもない。一瞬の油断、一瞬の災害、生と死を跨ぐ細いザレ道をトボトボと進む。唯一の励みは、ずんずんと近くなる槍ヶ岳の姿。あと、もう少しだ。
ヒュッテ大槍に到着。従来の予定では、時間短縮を目指すべく、そこから直登するつもりだった。しかし、地震によってルートが崩落。友人の情報よると「すっかりコースは抜け落ち、進めば奈落の底に落ちます」とのこと。恐ろしすぎる。急がば回れ。宿泊先の殺生ヒュッテで荷物をデポした方が、結果としてラクなはずだし。昼食を済ませ、本丸・槍ヶ岳を目指す。「すぐに着くさ〜」と思っていたが、なんのなんの石礫(せきれき)の急登が疲れた体に響く。空気も薄く、30m進んでは休み、30m進んでは休み、このまま槍ヶ岳山荘で休憩してから登ろう……と思っていたら、Nくんより「天気崩れるかもよ!休まないで、はい、いくよ」この鬼め!! でも、この判断が明暗を分けることになるとは……。
鎖、杭、ハシゴ……ついに槍ヶ岳を制覇!
ヘルメットのベルトを締め直し、いざ、槍ヶ岳の頂上3180m地点へ。鎖、杭、ハシゴ……○や↑を頼りに進むというより、全身を使ってよじ登る。行ったことのある友人から「カナさん、高いところ好きじゃないでしょ。立ち止まって動けなくなるかもよ〜(イシシ)」と吹き込まれていたので内心ビクビクだったが、えっ、ぜんぜん平気なんだけど?! 三点支持を意識しさえすれば岩が崩れない限り落ちることはないし、ハシゴも後ろを見ずに手元に集中すればよいし、不安定な岩場より断然安定している。トントントントン……軽快にハシゴを登り詰めると、頂上に到着。360度、奥の奥まで連なる山々。「私たち、ついに来てしまったね! 槍ヶ岳、制覇だ!」強風に耐えながら、3人で記念写真をおさめた。
さて、下山しようか……強風とともに雲がどんどん上がってきた。陽の光も遮られ、どんどん曇ってくるではないか。とりあえず、無事に下山し、槍ヶ岳山荘に着いた頃、あっ、、、、雨だ。ここで濡れるのも勘弁と宿泊先の殺生ヒュッテへ下っていると、道中一緒になった登山グループとすれ違った。「もう、この天気では登頂は無理と判断して、途中で戻ってきました」とのこと。あと、30分遅かったら……Nくん、ナイス判断。
感動の余韻。そして、旅が終わる寂しさ
殺生ヒュッテのスタッフさんいわく、「地震があった日は連休の中日ってこともあって、山小屋もテン場も満員。地震直後はテン場から避難してきた人でパニックでした。地震でキャンセルも多くて宿泊客も少ないですし、ゆっくりしていってください」。夕食をいただき、ストーブを囲んでぼんやり。感動で高揚してワイワイというより、夢が覚めてしまう寂しさの方が勝っていて、口々に「帰りたくないね……」。黒霧島のお湯割りを3人で分け合い、静かに夜は更けていった。明日で旅は終わる。
そんなこんなで、泣いたり笑ったり痛かったりの3日目が終了。
とはいえ、20km以上の長丁場。おやすみなさい。
4日目に続く
<3日目のまとめ・雑感>
・何度も言うが、大天荘は朝食も美味!
・喜作新道→西岳ヒュッテの紅葉はきれい。富士山も見える
・槍ヶ岳山荘のグッズがかわいい
・殺生ヒュッテは質素だけど、スタッフは温かい
・東鎌尾根はハードではあるが(ある程度の体力がある人ならば)なんとかなるキツさ
・槍ヶ岳は行くまでの方がキツい(登頂自体はそこまで難しくない)