実現したらサステナブルな東京に?「東京都農業施策」意見書を読み解く
こんにちは、地域と農のブランディングデザイナー江藤梢です。
一般社団法人東京都農業会議さんは、東京都へ「東京都農業施策に関する意見」という意見書を出しました(2023年5月19日付全国農業新聞より)。
https://www.tokaigi.com/files/libs/1506/202103241049146215.pdf
その中には、”東京都には「農業・農地のある東京」を次世代に受け渡すことを目標に、持続可能な東京農業の構築に向けて独自の施策を打ち立
てることが強く期待されている”とあります。
この実現のために、どのような意見が記載されているのでしょうか。令和4年の意見書と比べながら読み解いていきます。(以降、「令和」は「R」と表示)
全体像の把握
意見は以下のように10項目に分かれていました。
主に、”これら意見書が実現したら、わたしたち生活者と生産者さん両者にとって、変化が起きそうな項目”をピックアップしていきます。
1.都市農地の利活用の促進「生産緑地の保全」
R4では4項目目だった「生産緑地の保全」は、R5では最初に登場しています(ちなみにR4の1項目目は「多様な担い手の確保」)。これはこの1年間で、予想以上に生産緑地が有効活用されているのを受けた結果のようです。重要項目なのですね。
わたしたちは、どう変わる?
わたしたち生活者に直接関係ありそうなのはこちら。
災害時など、「防災」に役立つ畑が街に増えそうです。
都市の畑は、
・火災の延焼防止
・水田や畑で雨を一時的にためて、ゲリラ豪雨等の洪水を防止する機能
などさまざまな防災機能を備えているそうです。
畑は、わたしたちの生活を災害から守ってくれるために必要なのですね。
生産者さんは、どう変わる?
新しい仕組みや制度をつくることで、もっと畑を有効活用できるような対策が打てるようになりそうですね。
2.地域の特色をいかした農業の支援
地域の特色を生かした農業の支援は、5項目に分けれています。
わたしたちは、どう変わる?
わたしたち生活者に直接関係ありそうなのは「荒廃農地の活用」です。
荒れた畑を「市民農園エリア」「農があること前提のまちづくり」のモデルケースエリアに変えてしまおう!ということです。
「市街化調整区域(農業振興地域含む)に「市民農園区域」をモデル的に設置する事業の創設」では、今後の都内のお手本として「これが市民農園だ!」というエリアをつくっていく感じでしょうか。市民農園エリアが増えたら、ますます農は身近になっていきますね。
もうひとつの「”農あるまちづくりのモデル地区”事業の創設」では、”農があること前提のまちづくり”で、より緑を大切にしたり食べ物を大切に思える街づくりへのプロジェクトに燃える行政さんや会社さんが増えそうです。
生産者さんは、どう変わる?
荒れ農地撤廃のために、より厚い支援や奨励金制度ができるかもしれません。我が瑞穂町にある「農業振興地域」という地域への意見に、以下の2点が記載されていました。
瑞穂町含む「農振地域」と呼ばれる地域の生産者さんがたは、都の支援や制度の内容になかなか当てはまらないことも多く、困っている方も多いと聞きます。そのためひとつ目の「他地域同様に支援する事業の構築」はとても助かるのではないでしょうか。
また、農地の貸し借りを長い期間で契約する生産者さんに向けて奨励金が出るのであれば、貸すことに躊躇していた方も乗り気になってくれるのかもしれません。わたしたちの街に荒地が少なくなるということは景観も良くなるので、街の観光事業にも一歩貢献できますよね。
3.多様な担い手の確保
R4では「担い手の支援」は2項目目でしたが、R5では「担い手」の項目は2つに分かれます。
3項目目に「担い手の確保」、4項目目に「担い手への支援」です。
まずは「確保」についてはこちらの5点です。
わたしたちは、どう変わる?
「援農ボランティアの育成」が実現すれば、農園へボランティアしてみたい方にとっては、より楽しい時間が増えそうです。詳しくは以下をご覧ください。
また「農福連携の推進」が実現すれば、障害を持った方や働きづらさを感じている方、福祉業界にお世話になっている方などにとって、「農園で働く」という選択肢が増えることになります。
生産者さんは、どう変わる?
「女性農業者への支援」では、「育成・支援と仲間づくりへの支援強化」が記載されています。実現すれば、何か女性生産者さんだけでのチームやプロジェクトなどが発足しそうです。
4.担い手の経営力強化に向けた支援
担い手についての二つ目、「経営強化支援」は以下の7点です。
わたしたちは、どう変わる?
それぞれが実現したら、品質と価値の高い商品を購入できるようになります。
生産者さんは、どう変わる?
・専門性の高い農業改良普及指導員を育成し、大幅に増員されます(「農業改良普及事業の強化」)。
・花や植木が公共事業でより活用され、新たな需要創出のための施策が強化されます(「都内産花・植木の需要拡大への支援」)
・産業分野との連携強化や販売開拓の支援が強化されます(「6次産業化や農商工連携、販路開拓に取り組む担い手の支援」)
6.都民の期待に応え、ともに育てる農業の推進
「都民の期待に応え、共に育てる農業の推進」では5点が挙がっています。
わたしたちは、どう変わる?
東京の農を身近に感じる子供たちの舌が東京農産物で育っていきそうです。
・学校給食で地場産農産物がもっと増えます(「学校給食・食農教育の推進」)
・農地がない地域にも、都内各地で生産された農産物が届くようになります(「都内農産物の供給」)
・東京農業の応援団になれます(「都民への情報提供と東京農業の応援団を育成」)
生産者さんは、どう変わる?
東京の農を身近に感じる子供たちの舌が東京農産物で育っていきそうです。よく生産者さんが言う「農業がいつか、大人になったらなりたい職業No.1」になる日も近そうです。
・都内各地に供給するための流通支援の取組が強化されます(「都内農産物の供給」)
・肥料の生産体制と流通の強化(「優良堆肥の確保」)
まとめ
以上、「東京都農業施策に関する意見」の”これら意見書が実現したら、わたしたち生活者と生産者さん両者にとって、変化が起きそうな項目”の読み解きでした。
この意見書の内容が実現すると、わたしたち生活者にはこんな変化が訪れそうです。
1)老若男女、品質高い地産地消が日常的になる
2)防災時の頼れる選択肢に「農地」が増える
3)働き場やボランティア先の選択肢に「農園」が増える
4)東京農業の応援団になれる
生産者さんにはこんな変化が訪れるかもしれません。
1)農地の貸し借りがよりスムーズになる
2)専門性の高い農業改良普及指導員が指導してくれる
3)他業種との連携が増える
4)女性生産者さんだけのチームやプロジェクトなどで活動できる
5)地産地消や食育に、より力を入れられる
「これからは、生産者だけでなく日本のみんなが少しでも、自分で農産物をつくるようになればいい」と夢を語ってくれた生産者さんがいました。
「そうすれば価値や栽培の大変さが伝わり、より農を大切にするだろう」と。
その夢に一歩近づくような意見書なの、かも?
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ではまた。
”小さなトリコ”を大切にしたい
地域と農のブランドデザイナー、コトリコ江藤梢でした。
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