(第三話)桜の花が散る時
約束をして、随分時が経った。
暑さはなくなり、蝉はみな死んだ。寒さも飽きたのか
暖かさに本気を出し始めた時期に変わった。
いつの間にか桜の木の蕾は花に
花は散り始め、葉が出始めた頃になっていた。
またいつも通りの日々を過ごし
いつもどおりの終わりを迎えるはずだった。
その日は三人で遊ぶ予定だった。いつもと違うのは
いつも二人一緒にくる女性陣が珍しく二人別々でくる予定らしい。
まぁそんな事気にせず、僕は先に着いて時間を持て余す。
だがその後三人が揃う日常がくることはなかった。
行き道の途中に車との接触事故。いやひき逃げだった。
相手の車の運転手はながら運転だったらしく、
信号無視をし事故に至ったようだ。
なんていうのか、日常だったものが日常じゃなくなって
上書きされたはずのものに新たな上書きが重なったんだ。
泣いた。励まし合った。でもなぜか日常が目を覚ました。
人間というものはすごく薄情なものだ。
大事な一ピースが欠けた完成間近のパズルでも
成長を伴い記憶の片隅に片付ける。
でも毎年思い出さしてくれる。
桜の蕾が終わる前に。