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Stryker『Transgender History』を読了

アリゾナ州立大学教授のSusan Strykerの著書『Transgender History: 2nd edition』を読了。とてつもなくおこがましいけれども、私のロールモデルはSusan Strykerになりました。素晴らしい著書であるだけでなく、トランスジェンダーを生きやすくするスーザンのその広範な活動に心服しました。

本書でアメリカにおける波乱のトランスジェンダーの歴史をつぶさに学び、重要なポイントと思う節を書き抜いて、用語や人物や事件などをネットで調べながら10万字以上のノートをつくりました。まだその歴史への私の知識は浅いけれど、非常にインスパイアされた読書体験でした。各章を概観します。

Chapter1Contexts, Concepts, and Terms
本書を読む上で基本用語や概念を説明
Chapter2 A Hundred-Plus Years of Transgender History
17世紀から産業革命にかけてのトランスの歴史
Chapter3 Trans Liberation 
コンプトンズカフェなどの反乱、トランス支援
Chapter4 The Difficult Decades
1970年代のフェミニストからの逆襲と1980年代からのトランスジェンダーの再逆襲
Chapter5 THE MILLENNIAL WAVE
1990年代からの社会変容
Chapter 6 The Tipping Point 
トランスジェンダーは病気扱いから脱し、トランプ政権でのあつれきに耐えながら「正義への弧を描く」

本書の最後にReader's Guideがあり、スーザンが投げかける質問リストがあります。そのいくつかに答えてみます。

トランスジェンダーの歴史を通じて視点はどのように変わったか?
トランスジェンダーの武器の多様性に気づいた。闘争や論争、デモ行進という闘い。法律制定による社会変容。執筆や歌や演技。美しくなること。自分は何を武装すべきかを考えさせられた。

トランスジェンダー50年間の歴史で何が最も重要な進展と思うか?
1966年、サンフランシスコのテンダーロインの「コンプトンズ•カフェの反乱」。トランスジェンダーが主体的に関わり、路上生活のトランスの支援活動につながったこと、そして69年のストーンウォールインの反乱のさきがけであること。

あなたが重要と思う三人のトランスジェンダーを挙げよ
1、Reed Erickson/リード•エリクソン:富豪となってトランスジェンダーを支援したftm
2、世界初の「美しいMTF」クリスティーン・ヨルゲンセン
3、Justine Tunney/ジャスティン•タネイ〝ウォール・ストリートを占拠せよ〟

あなたの住む国や地域でトランスジェンダーのために今何が必要か?
外側の闘争:特例法の改正、トイレ問題の解消(シンボルとなるトイレの設置)、就職就業上の差別をなくすこと
内側の活動:人はなぜ、何のためにトランスジェンダーになるのか?そこにある人類のための使命とは何か?を書くこと。

本書のトランスジェンダーへの差別や疎外、解放への闘争が連綿と続くところは読むことがつらいパートです。そのような歴史があって今の我々が暮らせるのですが、私自身は、闘争や政治で社会を変容させる「外側の活動」よりも「内側の活動」により興味があります。なぜならトランスジェンダーとは楽しい体験であり、幸せへの道だから。それも再確認ができました。

個人的に本書から深掘りする人物や本やドラマ
Joanne Meyerowitz『How Sex Changed: A History of Transsexuality in the United States』
カート•ヴォネガット『スローターハウス5』
Christine Jorgensen『A Personal Autobiography』
Reed Erickson
森山至貴『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』
Lou Sullivan『From Female to Male: The Life of Jack Bee Garland』
ジュディス•バトラー『ジェンダー・トラブル: フェミニズムとアイデンティティの撹乱』
Justine Tunney
Susan Faludi 『In the Darkroom』
武内今日子
Ryka Aoki『Light from Uncommon Stars』
Amazon Prime『Transparent』

本書は来年第三版が出版されるそうです。最後に感想をひとことで。

私の余生のトランスジェンダー活動を支える本になりました


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