非日常を日常に
わたしは生まれてから、地元を出たことがない。
大学や就職のタイミングで何度も出ることを検討したが、結局今に至るまで実家ぐらしである。
狭い範囲での"地元"は気に入っている。自然も多くて、景色も綺麗。交通の面では不便だけど、車がある今なら問題はない。大切な人が近くにいる。幼なじみと気軽に会える。だいすきなピアノが身近にある。
だけどやっぱり、やりたかったのにしてこなかったことは、いつまでも心にずんと残っている。憧れのあの場所に一度住んでみたい、海の見える街に住みたい…
誰かにとっては、"日常"である場所に、捨てきれない憧れが募る。私にとっては、今そこは"非日常"であるけど、"日常"として生きてみたい思いが消えない。
今までの旅でも、ビジネスホテルをとって、近くのスーパーなんかでお惣菜をみたり、無駄に身軽な荷物でふらふらと散歩をしたり、どこにでもあるチェーン店に入ったりと、まるでそこが"日常"であるかのように過ごすのが好きだった。
もし、すこし自由を与えられるのなら、私は一度この思いを成仏させたいのだ。
数ある叶えたいことの中のひとつとして。