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変わり続けるから、貢献し続けられる | 住友生命保険相互会社 藤本宏樹 × COTEN

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々への対談連載。
今回は住友生命保険相互会社の藤本宏樹さんです。

生命保険会社でウェルビーイングの産業を作り出している藤本さん。ウェルビーイングやその考え方についてお伺いしました。

対談のお相手は同じく法人COTEN CREWでもあるreborn株式会社のハブチンこと羽渕彰博さん。
法人COTEN CREWのコミュニティは、敬語を使わず「タメ語」で話すのが通例。その空気感をお伝えするため、記事内も「タメ語」のままお送りします。

藤本宏樹(ふじもと ひろき)
住友生命保険相互会社 上席執行役員兼新規ビジネス企画部長/SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者
住友生命入社後、秘書室長、経営総務室長等を経て2013年ブランドコミュニケーション部長。アウター・インナーのブランディングを統括し、「1UP」プロモーションでACCグランプリ等の広告賞を受賞。2019年4月から新規ビジネス企画部を立ち上げ、オープンイノベーションを推進。2020年11月にCVCファンドを設立し、その事業共創責任者に就任。WaaS(Well-being as a Service)構想の実現を目指した新事業・新サービスの開発、デジタル保険ビジネス、地方創生事業等を推進。

ウェルビーイング産業を作り出す挑戦

羽渕彰博(以下、ハブチン):フジさんは生命保険会社だと思うんだけど、他メディアの記事を読むとウェルビーイングの産業自体から作り出してる。新規事業ではなく新規産業を作るってすごい挑戦だなと思ってるんだけど、なぜそんなことを考えてるの?

藤本宏樹(以下、フジさん):住友生命の経営理念として「社会公共の福祉に貢献するのがわれわれのパーパスです」というのを最初に言ってるんだけど「社会公共の福祉への貢献」の中身は時代に応じて変わってきてるんです。

ハブチン:どう変わってきたの?

フジさん:昭和の時代だと主なリスクと言えば、一家の世帯主が亡くなったときや病気になったとき、それから逆に、老後の生活の面からの長生きのリスクだったりした。生命保険会社としてそのリスクに対して「お金」で埋め合わせるという手段で解決してきた。

ハブチン:確かに生命保険ってそういうイメージ。

フジさん:それが、時代が変わって平成になると、単なる長生きじゃなくて健康で長生きじゃないと意味ないよねっていう「健康寿命の時代」になってきた。でも、生命保険って経済的なリスクに備えることはできても、健康的なリスクは減らせられないんですよ。

リスクを減らすためには、生命保険単体では課題を解決できない。そこでさまざまな企業と連携しながらWellness(ウェルネス)プログラムを作って、生命保険でカバーできるリスクへの備えに加えて健康寿命を伸ばそう。そういうふうにミッションが変わってきた。

ハブチン:なるほど。「社会公共の福祉への貢献」という言葉がカバーする範囲には、経済的なことだけではなく、健康維持に関することも含まれるようになってきたんだね。

フジさん:これが令和に入ると、体の健康だけでなく、その人が幸せを感じていることも大事になってきた。年をとっても、病気になっても、幸せを感じていたい。「健康寿命の時代」から「Well-being寿命の時代」に社会がシフトしている。

そうすると、生命保険では経済的リスクに備える力しかないので、体の健康、心の健康、社会的健康を実現して幸せになるためのウェルビーイングのサービスを作っていかないと貢献できない。ウェルビーイングのサービスを僕らはWaaS(Well-being as a Service)って呼んでるんだけど、むしろ生命保険はその中に溶け込む大事な要素という位置づけですね。

ハブチン:お金や体の健康に関してある程度の数値化はできるけど、幸福については人それぞれで簡単には数値化できない。そこも含むというのは、面白いチャレンジだよね。

フジさん:いろんなチャレンジするのが面白いし、永久に答えなんてないかもしれないけど、イノベーションってそんなもんじゃないですか。僕らはイノベーションをやるのが生きがいみたいなところもあるんで。
でも、法人COTEN CREWの皆さんって、そんな人多いんじゃないかな?

ハブチン:うん多い!みんなそんな感じ。数値化できない見えない価値を含めて経営されている方が多くて、ポスト資本主義の文脈とウェルビーイング産業の取り組みは近いと思った。

変わっていくものと変わらないもの

ハブチン:フジさんはCOTENRADIOの特別編の「財閥の歴史」にも出演していたよね。住友生命はずっと「変化しなければならない」って言ってるって話をしてて、あれも面白いなって。今だけじゃなくずっとそうなんだなって。

フジさん:戦後70年間の社長訓示っていうのを読んだんですけど、「今は変化の時代です」「イノベーションの時代です」っていつも言ってて。ということは安定的な状態なんかなかったし、結局ずっと激動してるんすよね。

ハブチン:不確実な時代は、今に限ったことじゃないんだね。

フジさん:今のようなデジタルの時代になってくると、変化は当然早くなってると思うけれど、でも歴史って実は一人ひとり、特に個人や小さな会社単位で見てると常に激動してるんじゃないかな、とは思う。

ハブチン:過去を振り返ることってどういう意味があるのだろう。

フジさん:松尾芭蕉さんの「不易流行」って言葉があるんだけど、世の中は変わっていくものと変わらないものがある。人の価値観や考えるパターンなんかはあまり変わらない。もちろん時代によって変わることはあるんだけども、根本的な価値観みたいなものって普遍で、その軸足が定まってるからこそ変化に対して対応できる。では不変の部分ってどこなのかってのを探していくと、われわれにとっては会社の経営理念やもともとのパーパスとかなんですよ。住友生命でも、経営の要旨3カ条のうち2カ条は、400年前からの住友の経営理念を引き継いでいるんですね。

ハブチン:すごい、不易!

フジさん:不易があるからこそ、その時代の激動に対応していけるみたいなのはあるのかな。そういう意味で、どこが不易なのかっていうのを探りたくて、戦後70年間の社長訓示を読んだんだよね。

ハブチン:それって自主的に読んだの?

フジさん:そう、自主的に。われわれは、どういうふうに進むべきなのかなって考えると、自分たちの原点っていうかこの不動の軸を知りたいなって。それで会社の歴史を研究したんですけどね。

ハブチン:バスケットボールのピボットみたいに、軸足をどこに置くのかってことだよね。

フジさん:動きって変わっていくものだと思うんだけど、バスケットボールをする人の喜びだったり楽しさだったり、感動につながる根本的な部分はたぶん不変なんだよね。それがあるからこそ、その時々に応じて軸足をどこに置いたらいいか、動きはもっと激しくしようか、みたいに変わっていくのかなって気はするんですよね。

ハブチン:技術が変わったり勝ち方が変わったりはするけど「バスケおもしろい!」みたいなところは変わらないってことかな。

フジさん:そうそう、バスケの技術は変わっても、見たりやったりするおもしろさは変わらないんだよね。

歴史や伝統を次の世代に渡していきたい

ハブチン:不易なところを知ろうと思ったきっかけってあったの?

フジさん:80年代にバブルが崩壊したとき、うちの会社も不良債権問題に直面して会社の危機みたいなのがあったんですよね。
当時、僕は社長のスタッフをやってたんだけども、会社をやめようとは思わなくて、それよりもどうやってこの危機を乗り越えて会社を存続して発展できるのかみたいなのを考えないといけないと思って。社長のスタッフだからその責任がある、みたいな若さゆえの気負いもあったんだと思う。だから、われわれの原点ってどこにあったんだろうっていうのを探りました。当時20代でしたけど、やっぱり原点をまず見にいかなくちゃって。

ハブチン:へえ!若いときって新しいことに興味がいって過去は振り返らないみたいなイメージもあるんだけど。フジさんは学生時代から原点を知ろうっていう意識とかあったの?

フジさん:僕、学生時代は、あいつ床ずれがあるんじゃないか?と言われてるぐらい家で寝てたんで、そんな原点を知ろうみたいなのなかったですね(笑)。

ハブチン:そうなんだ(笑)

フジさん:でも危機に直面するとみんな原点を考えるんじゃないかな。そもそも何のためにこの会社はあって、何のために働いてるのかみたいな。
そういう経験をして、やっぱり社会公共の福祉に貢献するために仕事をしてるんだっていう原点を思い出したし、そのために400年にわたって続いてきたこの住友の歴史や伝統を次の世代に渡していかないといけないって、若いながら思ったよね。あれは良い経験だったのかもしれない。

ハブチン:いいね!先の事ばかり考えていると、過去のことを振り返らずにおろそかにしがちだよね。住友生命では、どのように伝統を次の世代に伝えているの?

フジさん:最近はコロナでできてないんだけど、大きな会議のときには、経営の要旨3カ条を唱和するんだよね。これを言うと、何その社風、古っ!みたいに馬鹿にされるんだけど。でも、日本って言霊の国って言われるけど、毎日のように唱えてるとだんだん覚えるじゃないですか。覚えていると覚えていないってすごく違いがあって、普段は関係ないんだけど、本当に困ったときや迷ったときにふと思い出したりするんですね。これはうちの「進取不屈の精神」に照らすとこうすべきじゃないか、みたいに。だから昭和の世代の唱和する文化みたいなのを決して馬鹿にできないんじゃないかなって思うんだよね。

ハブチン:うん、馬鹿にできないし、すごく大事なことだと思う。変わらない軸がありながら、時代に合わせて変わり続けている。だからこそ変わらない貢献がし続けられるんだと感じた。ありがとう。


この記事を書いた人:森まゆみ (Twitter: @march_320

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