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法人COTEN CREWになって、「認知の揺さぶり」に投資する | 羽渕彰博 × 深井龍之介

法人COTEN CREWになってくださった法人の方々と深井龍之介との対談連載。今回は、企業にコンサルティングを提供しているreborn株式会社代表取締役の羽渕彰博さんです。「COTEN RADIOで学んだ歴史の教養は、仕事でも便利」だという羽渕さん。なぜでしょうか?

羽渕彰博(はぶち あきひろ):reborn株式会社 代表取締役「認知を揺さぶる、面白がる」を合言葉に、法人には組織の在り方が変わっていく組織コンサルティングを、個人には身体を通じて在り方を変えていくパーソナルトレーニングを実施している。rebornは「在り方ベンチャー」で、「目標達成」という言葉は社内で一度も使ったことがない(ということを最近メタ認知した)。会社で得られた利益の一部は、毎年「認知を揺さぶる団体」に喜捨し続けている。

COTEN羽田と子どもの幼稚園が一緒だった!

羽渕彰博(以下羽渕);はじめまして。いつもCOTEN RADIOにお世話になっています(笑)

深井龍之介(以下深井):ありがとうございます。
この対談連載では、法人COTEN CREWの方々とお話しさせていただいているんですが、いつも思うのが「見返りのない法人COTEN CREWになるって、市場経済的にはありえない判断だよね」ということです。
特に僕は法人営業をやったこともあるので、法人COTEN CREWになる判断の難しさは理解しているつもりです。だって、ビジネス的にはすごく……ありえない判断じゃないですか(笑)僕が言うのも変ですが……。

羽渕:確かに(笑)

深井:そこで羽渕さんに伺うのですが、なぜ、法人COTEN CREWになってくださったんでしょうか? 

羽渕:まずCOTEN RADIOを知ったきっかけですが、実は、COTENの取締役の羽田隆也さんのお子さんと僕の子どもの幼稚園が一緒なんですね。

深井:あ、それは羽田から聞きました。お二人のお子さんが同じ幼稚園に通っているみたいですね。

羽渕:年齢も一緒だし、「羽」田に「羽」渕だしで何かと近くなるじゃないですか(笑)。それで親しくなったんです。その羽田さんがCOTEN RADIOを勧めてくれたのが聞き始めたきっかけです。

深井:これも僕が聞くと変な感じですが(笑)、羽渕さんにとって、COTEN RADIOはどこがおもしろいですか?

歴史の教養は「わかりやすい」

羽渕:僕は企業に組織コンサルティングサービスを提供する会社『reborn』をやっているんですが、お客さんと企業の理念やビジョンについて話し合うときに、歴史のメタファーを使うと非常によく伝わるんですよ。
コンサルティングでの話って、どうしてもバーチャルで概念的、抽象的になりがちですよね。でも、抽象的なものごとを抽象的に伝えても、向こうにとってはわかりにくいんです。

深井:たしかに。

羽渕:ですが、抽象的なものごとを具体的な形に変換すると、相手も理解しやすくなります。その時に歴史の教養が役立つんです。
「今は価値観が変化している時代ですから、制度もそれに合わせて変えなければ……」と言ってもピンと来ないけれど、「江戸から明治に変わった時に、国の制度もこういう風に変わりました」と言えば、感覚的にわかるじゃないですか。

深井:本当にそうです。歴史ってストーリーとして伝えられるから、なおさらわかりやすいんですよね。

羽渕:つまり、難しいものごとをわかりやすく伝えたいときに、COTEN RADIOで学んだ歴史の教養がものすごく役立っているんです。
僕、深井さんが作ろうとしている歴史データベースが完成したら、世界で一番使いこなす自信がありますよ(笑)。現に歴史の教養を使ってコンサルの仕事をしているわけですから。

深井:うわあ、めっちゃ嬉しいです。実は今、歴史の教養の具体的な使い方についてフィードバックをくれる人を探してるんですが、羽渕さんはぴったりですね!

羽渕:ぜひ!

「コミュニティ」と「組織」の違いとは……

深井:最近、羽渕さんみたいな法人COTEN CREWの方々のコミュニティを作れたら、交流から新しいものが生まれて面白いんじゃないかなと思ってるんですが、一つ問題があって……。

羽渕:なんですか?

深井:僕たち、ヤバいくらいコミュニティ作りが下手なんですよ(笑)。僕の人生に「コミュニティ」って意識がそもそもないんです。「世界とオレ。以上」みたいな(笑)。極端な話、自分で作ったCOTENに対してさえ距離を感じてます(笑)

羽渕:(笑)。逆に僕の周りには、コミュニティ作りが得意な人が多いですよ。ただ、一つ思うことがあって、コミュニティにはお金が絡まないほうがいいですね。そこは通常の組織との違いです。

深井:コミュニティと組織の違いですか。

羽渕:はい。僕は両者を明確に区別しています。まず「組織」は、所属する人を評価して、それに基づいて対価を与える場所ですよね。代表例が会社組織です。

深井:なるほど。

羽渕:それに対して「コミュニティ」は、趣味のサークルとか地元の友達の集まりとかですけど、そこには評価も対価もない。だから当然、お金は絡まないし、絡むとおかしくなる。ここが重要な違いだと思うんです。

深井:たしかに。 

羽渕:どちらがいいというのではなく、社会では、組織とコミュニティの両方が相互に影響を与え合うべきだと思うんです。たとえば、コミュニティで出会った仲間と組織を作ったりとか。そこを勘違いするとおかしくなる。

深井:めちゃ腑に落ちました。経済を介在させたほうがいい場合もあるし、そうじゃない場合もありますよね。

投資のリターンを、自分で決める時代へ

深井:コミュニティには市場経済を介入させない方がいいと思いますが、僕は「市場経済が悪い」と言いたいわけじゃないんです。
市場経済はすごく上手くいってるシステムだと思いますし、僕自身も、ベンチャー時代には市場経済にお世話になってきました。
でも、市場経済にははっきりした課題もあって、それは目先のお金が儲からない、つまりリターンがはっきりしない分野にリソースが分配されないこと。
いつも言うように、僕たちCOTENが作ろうとしている世界史データベースがいい例です。世界史データベースに興味を持ってくれる人は多いけれど、すぐにお金儲けに結び付くとは限らないから、人やお金のリソースを回しにくい。これは市場経済の明確な弱点だと思います。

羽渕:同感です。でも僕は、投資に金銭的なリターンだけを期待する時代が終わりつつあるとも感じるんですよ。今回、僕が法人COTEN CREWになったのも、まさにその「新時代の投資」を実践するためです。COTENに投資……、いえ、僕は喜捨って言ってるんですけど、投資はしたけれど、何が起こるかはわかりませんからね。

深井:ありがとうございます。

羽渕:いや、でも、法人COTEN CREW1年分、60万円もの喜捨ははじめてかな(笑)。どうして喜捨したのか……。うーん、もう少し正確に言うと、実はCOTENへの投資に対するリターンはあるんですよ。でも、それはお金じゃないんです。COTEN RADIOを聞いたり、こうして深井さんと話すことで僕の認知が揺さぶられる、そのことがリターンなんです。
金銭的なリターンを求める普通の投資が「予定調和」なら、僕のCOTENへの投資は「予定不調和」ですね。そのことに僕が価値を感じるから、投資したんです。

深井:すごくありがたいです。というのも、多くの人がなぜか、今の市場経済の下ではリターンの形式が決められてると思い込んでるじゃないですか。つまり「投資では金銭的な利益を得ないといけない」って信じ込んでる。
でも、よくよく考えると、必ずしもそのルールに従う必要はないんですよね。何をリターンだと思うかは各自の自由ですから、羽渕さんみたいに「認知の揺さぶり」をリターンにしたっていい。投資の形は自由でいいんです。

「認知の揺さぶり」に価値を感じる

羽渕:本当にそうですよね。特に僕は、自分の仕事が企業の経営者の認知を揺さぶることですから、僕自身の認知がCOTENによって揺さぶられることには、すごい価値があるんです。僕がCOTENにもらった「認知の揺さぶり」を、僕なりの形でコンサルティング先に手渡すことで生活しているんですから。
色々な会社をコンサルティングしていつも思うんですが、どんな会社も結局、トップの認知の枠組みが会社の課題に直結してるんですよね。「離職者が多くて困るんです」という会社があるとして、表面的な要因はいろいろあるでしょうけれど、どれも根本的には社長の認知の枠組みにつながってる。だから、そこを揺さぶらないと根治しないんですよ。

深井:自分で言うのも恥ずかしいですが、個人の認知ってその人の全行動に影響しますから、そこが変わる意味はものすごく大きいはず。でも、お金に換算しづらいから、注目されない。もったいないですよね。

羽渕:たまに座禅をしに行くお寺のお坊さんがよく「利他的なことをした時が一番気持ちいい」と言うんですが、僕もそう感じます。金銭的リターンもいいですけど、もっと大切なものが他にあるはずなんですよ。
別に利他的な行為のつもりで法人COTEN CREWになったわけじゃないですが、今の気分は少し似ています。なんだろう、溺れている子どもを夢中で助けたような、そんな感じですね。COTENの羽田さんと一緒に保育園から帰るときに法人COTEN CREWの話を聞いたんですが、その場で即決して、家に帰ったらすぐに振り込んだくらいです。
だから今の僕は、すごく豊かな気持ちです。これはちょっと、お金には換算できないかな……。