不耕起栽培の実践者として | SOYSCREAM JAPAN 衣川晃 × COTEN
株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。
今回は今回はSOYSCREAM JAPANの衣川晃さんです。
環境問題に誰でも参加しやすい仕組み作りを
COTENインタビュアー(以下、ーー)SOYSCREAM JAPANについて簡単にご紹介いただけますか?
衣川さん:SOYSCREAM JAPANは2022年12月に起業しました。
僕は2018年に新たに農業を始める新規就農者として茅ケ崎で農業を始めて、不耕起農法という耕さない農業をしています。環境問題や地球温暖化についてのアプローチとして、農業者の視点から解決に向けてやっていきたいなと思っていて。それでアイスクリームに辿りつきました。
ーーアイスクリームブランドというより、不耕起栽培の考え方を啓蒙するというひとつの手段として、大豆を使ったソイスクリームがある、という感じですか?
衣川さん:そうですね。言葉ではなく、実践でどんどん広めていこうってのが僕らの取り組みなんです。
地球温暖化という気候変動の視点から見て不耕起栽培を実践する僕らみたいな小さな農業者をもう少し増やしていきたい。そういう人たちが増えるためにはどうしたらいいのか、と論理的に考えたときにアイスクリームがアイディアというか手段としてでてきたんです。
ーーアイスクリームって少しポップな感じがするので、自然と広がりやすそうですね。
衣川さん:そうなんですよね、そこがすごく大事だと思っています。
環境問題ってどうしても難しくなってしまうし、課題が大きすぎてなかなか自分ごととして捉えてもらえないところもあって。
小さなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、アイスクリームを食べるなら誰でも参加できるんです。「美味しい」や「楽しい」って思ってもらうことで、そこに関わる人たちが増えていけば、結果として環境問題の解決へ向けて進んでいくんじゃないかなと思っています。
ーー衣川さんが農業を始めたきっかけや、環境に関心を持ち始めた原体験みたいなものってありますか?
衣川さん:僕は14歳からサーフィンを始めました。茅ケ崎という海の町に住んでいてずっと海に入っていたからこそ、怖さも含めて自然への敬意のような感情はその頃からありましたね。
大きな波を攻めるのは怖いんだけど、周りのみんなも行くから自分も行かなきゃみたいな感じで海に入って。そこで死ぬかと思う経験を何度もしました。
普段学校に通っていてなかなかない経験ですよね。
その時から、自然との向き合い方を考えるようになりました。
もちろん、スポーツとしての楽しさもあるし、サーフィンってかっこいいなって感覚で最初はやってたんですけどね。
ーー自然に対する恐怖とか生かされてるという感覚でしょうか。サーフィンって波の力を借りながらやっていくものだと思うし、環境との向き合い方みたいなものが自然とついたんですね。
衣川さん:そうですね。自分のところに本当にいい波が寄ってくる、引き寄せるという状態にいるには、海とのコミュニケーションが大事だと思っているんです。波に乗るときは海と自分のリズムを合わせるようにしています。
ーー面白いですね。
衣川さん:実はサーフィンをする前にバンド活動もしていました。中1ぐらいからパンクバンドをやっていて、農業を始めるつい最近まで音楽をずっとやっていたんです。
震災の頃にも、僕らみたいなパンクバンドってよく呼んでもらっていて、反原発的な歌とかやっていたりしたんですけど、自分たちは音楽をしているだけなんですよね。
音楽をするのはもちろんいいんですけど、僕も一人の人間として何かをしなくちゃいけないんじゃないかって、その頃に思い始めました。
いろいろなことを音楽を通して伝えていけるんですが、僕としては、まず自分が実践することが大事なのかと思って。
今は、農業者っていう形で実践してるからこそ言える内容があるんです。
自分で体現しながら、そういった環境問題を伝えていく、言うだけではなくて自分でも実践していくのが大事かなと思ったんです。
ーー実践っていうのはまさに、衣川さんが自分でやっているというのが大切だと。
衣川さん:みんなが知るってことがまず大事だから、環境活動家も必要な役割です。で、みんなが知ったフェーズに入ったらその次には実践していくことが必要になっていきますよね。だから僕はもう実践していこうと思ったんです。ソイスクリームって、食べるだけで参加できる仕組みなんですよ。僕らのアイスクリームを食べることで、そのプロジェクトに一緒に関わっていく人口が増えていけばいいなと思ってるので。みんなが取り組みやすく、みんなが実践しやすくって考えたんです。
ーーだからアイスクリームなんですね。
否定するのではなく選択肢を増やす
衣川さん:今の日本の主な生産方法は科学的な安全基準をもとに国民の食糧安全保障を担っている慣行栽培なのですが、大量生産のデメリットとして土壌の劣化など環境問題の原因も指摘されてきました。僕たちはそこに対して農産物の生産をしながら土壌を再生して次の世代に繋げていくということを実践しながらやっていけたらなと。
農業の歴史を勉強してみたら、戦後の食料難が関係してくるんですね。国策として自給率を上げていくのが必須だったので、化学肥料はその時代には絶対的な正義だったんです。
それを今、急に悪いものと言われたら今までやってきた人たちは嫌だと感じますよね。
今の主流となっている農業スタイルでは、環境に対してとても負荷があるとか、輸入に頼ってるから持続可能じゃないという時代になっている。
でも、そうやって歴史を知ると、今までやってきた農家さんを急に否定するのは違うなと思うんです。
あくまでの選択肢の1つとして、僕らのやり方を進めていくという立場ですね。
ーー今までの方法を否定するわけではなく、受け止めながら選択肢を増やしていくんですね。一つ一つの選択肢が文化的だったり楽しいという感情だったりを大事にした上での実践なんですね。
衣川さん:正しさだけでは世界は変わらないんですよ。正しさだけだと喧嘩になるしね、みんな自分が正しいと思ってるし、もちろんそれは間違っていないので。
だから、かっこいいとか美味しいとか、楽しいとかで変えて行きたいなと思っています。例えば音楽だったら3分で人を癒したり、立ち直らせたりできますよね。やっぱそういった芸術的な手法の方が人が行動を変えるのには効果的だと思ってます。
起業のきっかけはCOTEN RADIO
実はこのアイスクリームブランドにたどり着いたきっかけにCOTEN RADIOがあるんです。
ーーそうなんですか?!
衣川さん:自分たちでも2〜3年前からPodcastをやっているんですけど、いろいろと聞いているうちにCOTEN RADIOを知りました。
歴史の話が面白くて学びもあるし、知的好奇心をくすぐられて楽しくなって聞いて。それで、ボーダレス・ジャパンの田口さんの回を聞いたんです。
ーーハチドリ電力の回、ありましたよね。
衣川さん:僕は高校にも行ってなくて、働きたいって思える場所もなかったし、音楽をやっていても人間関係がうまく行かないことが多く、自分がフィットする場所が社会にはないんだなって思っていたんです。それで農業に辿り着いたんですが、そのハチドリ電力の回がすごく僕に刺さっちゃって、ボーダレス・ジャパンを調べていたらボーダレス・アカデミーってのがあったんです。田口さんたちがソーシャルビジネス業界をサポートしてて人を輩出していこうみたいな取り組みでした。
それで、2022年5月から8月まで、そのアカデミーに入ったんです。つまりCOTEN RADIOがきっかけなんですよ。
そこで考えに考えたプランの中で、最終的な出口にアイスクリームが出てきて、起業したんです。
だから、そのお礼として間接的ですけど、法人COTEN CREWになろうと決めたんです。
ーーすごい!COTEN RADIOに影響を受けたんですね!ありがとうございました。
(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:森まゆみ)
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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