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ジャズ、ウイスキー、未来への投資 | バリュークリエイト 佐藤明 × COTEN

法人COTEN CREWになってくださった企業の方々への対談連載。今回は株式会社バリュークリエイトの佐藤明さんです。
経営のアドバイザーをしながら、音楽にも関心の高い佐藤さん。企業の資産価値についての考え方をはじめ、音楽から学んだことなどについてお伺いしました。

対談のお相手は同じく法人COTEN CREWでもあるreborn株式会社の羽渕彰博さんです。
法人COTEN CREWのコミュニティは、敬語を使わず「タメ語」で話すのが通例。その空気感をお伝えするため、記事内も「タメ語」のままお送りします。

佐藤 明(さとう あきら)
バリュークリエイト創業者。選曲家。証券アナリストの人気ランキングにおいて29歳で企業総合部門1位などの評価を得る。世界の投資家や経営者と対話。2001年、バリュークリエイト設立。資産運用会社や複数の事業会社で社外役員や調査部長を歴任。国内外の社会起業家に投資。ワイワイミュージック代表、「コトノハ」シリーズを企画、プロデュース。旅をして、音楽を聴き、本を読み、人に会うことを大切にしている。

レコードを出す資金を稼ぎたかった

羽渕彰博(以下、ハブチン):経営のアドバイザーもしながらCDも出したり、日比谷音楽祭を支援サポートしていたり、音楽をすごい大事にしているよね。音楽に最初に触れたのっていつ頃?

佐藤明(以下、チェット):大学1年のときにジャズミュージシャンのチェット・ベイカー(Chet Baker)に出会ったんだよ。ドラッグを買うお金欲しさにレコーディングするような弱さがあって、情けないというか弱くて繊細なところが音楽に出てるところが良いなと思った。
で、とにかくハマって、彼のレコードを出したいって思うようになった。レコードを出すには300万くらい必要って聞いて、まずはそのお金を稼ごうと思って金融の世界に入ったんだ。

ハブチン:レコード出す資金を稼ぎたいというのが大きな原動力になったんだね。

チェット:そう。でも、当時の証券会社はみんなそうだったと思うんだけど、朝から晩まで数字に追われるような生活で。一日中ひたすら働いていることに対するストレスが大きくて、何のためにやってんだろうって考えるようになった。そうやって仕事に追われてるうちに、レコードのことを考える余裕もなくなったよ。
もうこのままじゃ人生終わるなってくらいストレスが大きくなったころに、アナリストのチームに社内転勤になったんだけど、今度はこれがめちゃくちゃ楽しくてね。

ハブチン:何が楽しかったの?

チェット:経営者と話すのがとにかく楽しい!
当時担当していた造船業だと、1800年代ぐらいから、イギリスが最初は強くてそれがどうなって……みたいな歴史につながる話もするし、会社単位だと、経営者が変わって何が変わったのか、という話とか。
そうやって長期で見ていくとどの会社にもストーリーがあるんだよね。
四半期決算とかの短期で見るよりも、30年後くらいの長期で考えていくほうが面白いし、それを評価してくれる投資家もそれなりにいるんだ。

ハブチン:見えない価値みたいなものに投資するのかな?

チェット:企業価値って過去はあんまり関係なくて基本は将来のことなんだけど、将来を予想するには過去をすごく見る必要がある。30年後も輝いてる会社を見つけようとするなら、少なくとも過去30年は調べる、そういうことをずっとやってたね。

ハブチン:なるほど。そうやって面白がってやってたのに、なんでベンチャーに転職したの?

チェット:やっぱりインターネットが出てきたことだよね。これは大きかった!この大きな変化の波に乗らなくちゃって思った。
あと、アナリストの仕事は楽しかったんだけど、このまま続けていけば偉くなって調査部長になって、みたいに自分の将来像がイメージできるようになってしまって。
それよりも、いまこの大きな変化の中で若い経営者がたくさん出てきているインターネット業界に興味がわいて、今までと全然違う世界を見てみたいなと思って飛び込んじゃいました。

音楽はビジョンを伝える手段の一つ

ハブチン:経営者のビジョンとかにワクワクしていくっていう延長線上で、違う業界へ飛び込んだのかな。そして次はバリュークリエイト。ここから今の事業につながった理由とか背景とかってどういうところなんだろう?

チェット:アナリストはいつも投資家と経営者の真ん中にいて、会社の価値が高いとか低いとかって評価をする仕事なんだけど、僕はもっと経営者の近くで膝を詰めて話をして、どうしたらもっと会社の価値が上がるかっていう話をする方がワクワクするんだ。経営者の考え方が変われば企業のその後が変わる。先をみなくちゃいけないのに、過去のことばかり気にしちゃって、それじゃ駄目だよねっていうのを経験的にも学んだし、そういうことに気づく機会がいっぱいあった。

チェット:僕は製造業のアナリストだったから、いろんな工場や現場に行ってエンジニアと話すことも多かったんだけど、みんなすごく目がキラキラしてるんだよね。それが楽しいし、答えはむしろそっちにあるんじゃないかなって。
社員がつまらなそうに働いてる会社と、目を輝かせて働いてる会社だと、成長率が全然違うだろうし、そうなると利益率も違ってくるはず。
その会社の強みや創業のときの気持ちを大事にしてることと、日々のいろんな活動が一貫してるかどうかっていうのを見てるかな。

ハブチン:社長がそのビジョンを持っていても、社員は必ずしも腹落ちしていないということもあると思うんだけど、そういう場合はどういうふうに支援してるの?

チェット:投資として考えると、そういう会社はなかなか厳しいですねっていうことになるし、支援しようとする場合は、社長が変えたいと思うのなら本当にいろんな形で支援できる。
長期的に成功した組織、例えばキリスト教は賛美歌やゴスペルとか、音楽の力をものすごく使っているんだよね。大事にしてるビジョンを音楽にすることで伝わりやすくなって、組織が一つになっていくってのはあるんじゃないかな。

ハブチン:抽象的でわかりづらいものを、音楽のような肌で感じられる体験にしていくことで伝わりやすくする…

チェット:直接話したり、社長やいろんな人の言葉にしてみたり、ストレートにメッセージも伝えていくんだけど、音楽もそうやって伝える手段の一つとして使っていけばいいかもね。


法人COTEN CREWはエンジェルズシェア

ハブチン:法人COTEN CREWにはどうして参加したの?

チェット:大学の時に、無形資産や知的資本の勉強をしたことが大きいかな。お金や物は誰かにあげたら自分の分が減るけど、ナレッジは共有すればするほど増えていく。つまり、知識とか情報は、他の財とは全く違う財であり、どんどん共有した方がいいっていう考え方が、自分のベースにある。
共有すればするほどみんなの知識が高まっていくっていうのは、COTEN RADIOがやってることとつながっている。だから、COTENをサポートすることで、より良い社会に近づいていくんじゃないかという感覚がある。

チェット:もうひとつ、「エンジェルズシェア」って考え方が好きでね。
「天使の取り分」っていうんだけど、ウイスキーって製造する樽の中で毎年5%とか蒸発していくんだよ。これ、普通に考えたら減っていくわけだからもったいないんだけど、ウイスキーを作ってる人たちは「エンジェルズシェア(天使の取り分)」って呼んでる。

ハブチン:おしゃれだねえ。

チェット:「天使の取り分」は樽から減っちゃうんだけど、残っているウイスキーはどんどん味わい深くなっていって、結果的にはそれが高く売れる。ナレッジを共有すればするほど増えていくって考え方とも重なる。

ハブチン:うんうん、確かにそうだね。

チェット:例えば、決算書はちゃんと数字になってるけど、無形資産は数字になっていない。だから信頼できないしつかめないってみんな言うんだけど、ずっとアナリストをやってて思ったのは、決算書もいい加減な部分があるってこと(笑)。それぞれの会社の都合が入っていたり。仕分けとかもそうだよね。

チェット:資産って使い方によってはフルに使えるけど、工場の機械でもちょっとしか使っていない場合もあって、それでも同じ資産価値になるわけじゃない?でも本当は全然違う。投資するときも費用対効果で説明しようとするんだけど、本当にそれで大丈夫?。その数字が正しいってことが前提になってるんだけど、本当にそれ正しいんだっけ?ってね。

ハブチン:面白い問いだね。数字になったり見える機械だったり、そういうものを信じがちだけど、使われてるか使われてないかで資産価値は全く違ってくる。

チェット:そう、だから数字を信じて投資するって、実は法人COTEN CREWになるのと同じぐらいやわらかいことかもって思うんだ。結局は未来に投資することだから。
みんな、数字を信じすぎてるし、逆に数字にのらないものを信じなさすぎてるんじゃないかな。

ハブチン:ただお金を出すだけじゃなくて、そこから得られる学びやつながり、そこから生まれる価値がちゃんとあるっていうことだね。
日比谷音楽祭をサポートしているのもエンジェルズシェアの考え方につながってる?

チェット:日比谷音楽祭は、プロデューサーの考え方とかいろんなものごとの進め方を近くで見るだけで、めちゃくちゃ学べるんだ。それが僕自身にもつながるし、会社の他のメンバーにもつながって、さらに社会にもつながっていく。

チェット:法人COTEN CREWもね、振り切ってすごい実験をする、みたいな話があって、あれがやっぱり僕には直接的に一番響いたんだよね。やっぱりこのぐらい振り切って実験しようとしている人と一緒に何かをやりたいなって。
法人COTEN CREWになることで、あるいは日比谷音楽祭に参加することで、自分たちの価値が高まるっていう確信もある。
今日や明日ではないけど、フラグを立ててアンテナをはっていくことで、絶対に次のなにかにつながっていくんじゃないかな。


ここまでお読みいただきありがとうございました!

この記事を書いた人:森まゆみ (Twitter: @march_320)

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