炉内温度測定器『CurveX』ワンポイントアドバイス:データロガーを炉外で使用する際の注意点
データロガーを「炉の外」に置いて使うことはできるのか?
CurveXシリーズは「炉内温度測定器」の名の通り、本来は製品と共に測定機器一式を乾燥炉に投入し、製品と共に加熱されながら温度勾配を計測するのが正しい使用方法になります。
しかし、例えば断熱ボックスの通過が困難なほど狭い乾燥炉であったり、いわゆるボックス炉のような、内部で移動しない乾燥炉の場合には、データロガーを炉の外(室内環境)に置いたまま、熱電対だけを炉内に投入して使用をする方法も一つの手です。
ただし、このような方法で計測をする場合、「ショートレンジオーダリング(SRO)」という、K型熱電対が抱える問題が生じる場合があるため、注意が必要です。
下記に詳細な現象をご説明します。
K型熱電対の不可避誤差「ショートレンジオーダリング(SRO)」とは?
簡単に内容をまとめますと、K型熱電対を「およそ300℃~550℃の温度」で使用をすると、本来の精度から大きくずれる(特にプラス側に誤差が生じる)ようになる現象です。
細かな内容
熱電対は異なる2つの金属線を先端溶接でつなげたものとなり、この2つの金属に温度差が起きると電流が発生します。これをゼーベック効果と言います。
また、電流が発生する=電位差が生じていて、この電位差を熱起電力と言います。
データロガーは、このゼーベック効果にて生じた電流の大きさを温度に換算して表示する仕組みです。
熱電対が上記の「およそ300℃~550℃の温度範囲」にさらされると、熱起電力が大きく変化し、結果として本来発生する電流より大きな電流が生じ、プラス側に誤差が生じるようになります。
この温度帯以外の温度で使用をする場合には、熱起電力の変化は起きないため、考慮をする必要はありません。
対策方法は?
ショートレンジオーダリングは原則としてK型熱電対では避けられない現象になりますが、ある程度緩和させる方法があります。
熱処理を施しておく
上記の問題は、熱電対の熱起電力が、乾燥炉に投入する前と後で変化するところにあります。
そのため、使用する予定の温度で予め熱電対を加熱しておくことで、前もってショートレンジオーダリングを発生させておくことができるため、乾燥炉への投入の前後で熱起電力がほとんど変化することがなく、精度誤差を抑えることができます。
ショートレンジオーダリングについてや、熱処理の有効性については、産業技術総合研究所様のレポートがございま。
下記リンクにてご覧いただけますので、よろしければご参考になさってくださいませ。
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/832.pdf
CurveXを、今後も貴社の品質管理・省エネにご活用いただけますと幸いに存じます。