30. SO萎縮例とSOの腱異常例(筋の萎縮なし)はともにSOの眼球機能を損なうが,腱異常例は下転位でより大きな上下偏位を引き起こす
Special features of superior oblique hypofunction due to tendon abnormalities
Aleassa M, Le A, Demer JL. Strabismus. 2021 Dec;29(4):243-251. doi: 10.1080/09273972.2021.1987931. Epub 2021 Nov 17. PMID: 34787034; PMCID: PMC8758521.
目的:上斜筋(SO)機能低下の多くは脱神経による収縮力の低下であるが,時に腱にのみ病変が存在することがある。本研究では,腱の異常によるSOの筋力低下と神経原性麻痺による非共同性斜視のパターンを鑑別することを目的とした。
方法:片眼SO腱断裂・欠損例(7例)の臨床所見およびMRI所見を,年齢をマッチさせた腱が無傷の片側SO麻痺例(11例)と比較した。高解像度MRIを用い,正面視と下方視でSOの位置ずれの角度を比較した。
結果:神経原性SO麻痺の筋腹は著しく萎縮し,最大断面積は平均6.5±2.7mm2,健側は13.5±3.0mm2だった(P<0.0001)。一方,腱断裂側のSO筋腹は最大断面積が平均15.1±3.0mm2で,健側平均12.1±2.4mm2よりも後方の位置で発生した。腱断裂側SO腹腹の断面積は,下転時に正常な収縮増加を示したが(P<0.0005),SO萎縮と同じような非共同性斜視が見られた。両眼のアライメントは下方視を除くすべての視方向において(頭部傾斜も)両群で統計的に同等であり,下方視において,神経原性SO萎縮では8.5±6.6⊿,SO腱異常症例では平均20.5±6.9⊿と著しく大きかった(P = 0.001)。正面視と下方視の偏位の平均差は,腱異常例で9⊿であり,SO萎縮例−4.1⊿よりも有意に大きかった(P = 0.019)。健側へむき運動では,内転時の平均overelevationは腱異常例で1.7(0〜4スケール),SO萎縮例で2.6(p=0.23),内転時の平均underdepressionは腱異常例で-2.3,SO萎縮例で-1.6(p=0.82)であった。SO腱の修復は3例で有効であったが,修復が不可能な場合は代替術を行った。
結論:脱神経と腱の断裂はともにSOの眼球機能を損なうが,断裂は下転位でより大きな上下偏位を引き起こす。断裂されたSO腱を外科的に引き締めることで,喜ばしい効果が得られる可能性がある。SO後方の肥厚と下転位での大きな上下偏位は,SO腱の異常を示唆し,腱修復の外科的戦略を導く可能性がある.
※コメント
SO萎縮例とSOの腱異常例(筋の萎縮なし)を比較した場合,臨床検査所見として下方視のdeviationが異なるということ。サンプルサイズは小さいですが非常に有用な情報です。
他の臨床パラメータも気になるところ(回旋等)ですので,引き続き論文を漁ってみたいと思います。