19. distance-independent esotropia(遠近ともに内斜視)はAge-related distance esotropiaより重症な特徴を示す

Characterization of the position of the extraocular muscles and orbit in acquired esotropia both at distance and near using orbital magnetic resonance imaging

Kawai M, Goseki T, Ishikawa H, Tatsui S, Li H, Ukisu R, Shoji N. PLoS One. 2021 Mar 12;16(3):e0248497. doi: 10.1371/journal.pone.0248497. PMID: 33711045; PMCID: PMC7954285.

目的:加齢関連性遠見内斜視(Age-related distance esotropia:ARDE)は,遠見では後天的に内斜視になり,近見では斜位になる。しかし,距離非依存性内斜視(distance-independent esotropia:DIE)は,遠見と近見の両方で内斜視が存在する。そこで,DIEの眼窩MRI所見を検討し,その特徴の違いを評価した。

方法:本研究は後ろ向きケースコントロールスタディである。後天性斜視の患者と視神経炎の対照患者を対象に,標準的な冠状断MRIの有効性を評価した。対照群に斜視を有する症例は除外した。DIEは遠見と近見に内斜視があり,近見で10⊿以上の角度があるものと定義した。LR-SRバンドの状態,直筋の位置,眼球と眼窩全体の体積比(G/WO)を調べた。

結果:DIE群は6名12眼(77.3±7.7歳),ARDE群は19名38眼(73.1±6.8歳),対照群は17名34眼(70.9±4.3歳)であった。LR-SRバンドの異常の比率は,DIE群とARDE群で対照群より高かった(p<0.01)。外直筋の垂直角は,コントロール群(-7.5±5.1°),ARDE群(-12.2±9.1°),DIE群(-18.8±5.7°)で下方に偏位していた(p<0.05)。外直筋の傾斜角は,コントロール(-12.2±9.1°),ARDE(-20.0±8.6°),DIE群(-28.6±5.4°)で耳側に傾いていた(p<0.01)。G/WOは,コントロール群(0.25±0.03)に比べ,DIE群(0.28±0.01),ARDE群(0.27±0.02)で高かった(p<0.01)。

結論:ARDE群およびコントロール群と比較して,DIE群ではLR-SRバンドの異常,外直筋の位置異常,G/WOの違いがみられた。DIE群はより重症のARDEを示した。

※コメント
ARDEが重症化するとDIEの特徴になる可能性を示しています。それには,機械的な変化(LR-SRバンドの異常や外直筋の位置異常;下方偏移や耳側へのtilt)が関与しており,病因的には延長線上にあるかもしれないと解釈しました。
臨床では強度近視性の内斜視や代償不全型の内斜視等もあるため,あらゆる因子が混在しています。少しずつ機序(病因)が解明されていくのが面白いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?