186. 外科的治療を受けた乳児内斜視患者における垂直偏位の発生とその後の進展
Occurrence and subsequent development of vertical deviations in patients treated surgically for infantile esotropia
Sharma M, Ganjoo S, Ganesh S. Indian J Ophthalmol. 2023 Jul;71(7):2835-2840. doi: 10.4103/IJO.IJO_2777_22. PMID: 37417130.
目的:本研究の目的は、交代性上斜位(dissociated vertical deviation:DVD)と下斜筋過動(inferior oblique overaction:IOOA)の発症、その後の進展、および術前・術後のパラメータとの相関を評価すること。
方法:2005年から2017年の間に手術を受けた乳児内斜視患者のカルテをレトロスペクティブにレビューした。手術前後にDVDとIOOAを測定した。患者は、来院時の水平偏位と垂直偏位に基づいて、乳児内斜視のみの患者(A群)と垂直偏位を発症した乳児内斜視の患者(B群)の2群に分けられた。
結果:102人の患者のうち、DVDの発生は53人(51.9%)にみられ、IOOAは50人(48.04%)にみられた。DVDは初診時22例、術後31例にみられた。IOOAは初診時45人(44.1%)、術後5人(8.8%)にみられた。両群の手術年齢、偏位量、平均経過観察期間、平均屈折異常には統計学的な差はみられなかった。術後の運動予後は両群間で統計学的に同等であった(P = 0.29)。融像(P = 0.048)と立体視(P値 = 0.00063)の感覚面の転帰はA群で良好であった。
結論:垂直偏位の発症年齢と屈折異常、偏位量、年齢、手術の種類との間に関連は認められなかった。垂直偏位を有する患者において、運動面の転帰は影響を受けないが、感覚面の転帰は影響を受けることがわかった。このことは、DVDとIOOAが、融像と立体視の本質的な障害によって発症することを示している。
※コメント
A群、B群ともに手術時年齢の中央値は36か月のようです。早期(6か月〜12か月)の手術はDVDの発生率を下げると言われていますが、この研究内では早期手術例はいなかったとのことです。立体視ができないからDVD, IOOAが発生するのか、DVDがある(隠れている)から立体視が悪いのかは判断が難しいところかなと思います。