84. 外傷性脳損傷後の滑車神経麻痺は全年齢の患者で最も多く発症し,斜視手術を受けた患者は約13%であった。眼球運動神経麻痺の発症率は成人より小児の方が約4.3倍低く,小児では外転神経麻痺が最も多い

Ocular Motor Nerve Palsy After Traumatic Brain Injury: A Claims Database Study

Heo H, Lambert SR. J Neuroophthalmol. 2023 Mar 1;43(1):131-136. doi: 10.1097/WNO.0000000000001635. Epub 2022 Jun 14. PMID: 36166785.


背景:外傷性脳損傷(Traumatic brain injury:TBI)は,眼球運動神経(動眼神経[CN3],滑車神経[CN4],外転神経[CN6])麻痺の一般的な原因の一つであるが,TBIによる眼球運動神経麻痺に関する大規模研究はこれまでなかった。本研究では,TBI後の眼球運動神経麻痺の特徴や違いを,患者の年齢やTBIの重症度によって検討することを目的とした。

方法:IBM MarketScan Research Databases(2007~2016年)の請求データを用いて,6か月以上継続して登録したTBI後の眼球運動神経麻痺の患者を対象とした人口ベースの後向きコホート研究。性別,TBIの初診時年齢,TBIの重症度,TBIの年齢と重症度に応じた斜視手術の実施率を評価した。CN3,CN4,CN6麻痺における斜視手術と抹消神経ブロックの実施率を調査した。

結果: TBI患者2,606,600人が基準を満たした。その中で,1,851人(0.071%)がTBI後に眼球運動神経麻痺を発症していた。患者の年齢中央値は39歳(Q1-Q3:19-54),患者の42.4%は女性であった。TBI初診後の継続登録期間の中央値は22か月(Q1-Q3:12-38)であった。小児のTBI患者1,350,843人のうち,454人(0.026%)が眼球運動神経麻痺を有していた。成人のTBI患者1,255,757人のうち,1,397人(0.111%)が眼球運動神経麻痺を有していた。この1,851人のうち,CN4麻痺(697人,37.7%)が最も多く,237人(12.8%)に斜視手術が行われた。CN6麻痺は,小児で最も多かった。成人(11.6%)よりも小児(16.5%)の方が斜視手術を多く受けた( P = 0.006 )。軽度のTBI患者では,CN4麻痺の割合(52.3%)が高く,CN3麻痺の割合(15.5%)が中・重度のTBI患者より低かった( P < 0.001 )。

結論:CN4麻痺は全年齢の患者で最も頻繁に発症し,TBI後の眼球運動神経麻痺に対して斜視手術を受けた患者は約13%に過ぎなかった。眼球運動神経麻痺の発症率は成人より小児の方が約4.3倍低く,小児ではTBI後にCN6麻痺が最も多く発症していた。

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