296. 神経発達障害患者の弱視治療成績

Amblyopia treatment outcomes in patients with neurodevelopmental disorders

Chinn RN, Wilkinson CL, Staffa SJ, Michalak SM, Shoshany TN, Bishop K, Hunter DG, Gaier ED.J AAPOS. 2023 Oct;27(5):276.e1-276.e8. doi: 10.1016/j.jaapos.2023.07.014. Epub 2023 Sep 21. PMID: 37739211; PMCID: PMC10591796.


目的:神経発達障害患者と定型発達者の弱視治療成績を比較すること。

方法:ボストン小児病院で2010年から2014年の間に弱視と診断された2,311人の患者のうち、460人が組み入れ基準を満たした(2~12歳で不同視、斜視、または混合弱視[眼間差(interocular difference:IOD)2 line以上])。神経発達の状態(神経発達遅滞(neurodevelopmental delay:DD)か定型発達(typical development:TD))かによって、治療と視力の転帰を分析した。

結果:DD群(n = 54)とTD群(n = 406)は、人口統計、弱視リスク因子、ベースライン視覚測定、治療法、アドヒアランスにおいて類似していた(P≥0.10)。DD群(0.65[0.42-0.97]年)はTD群(0.5[0.36-0.82]年;P = 0.023)より経過観察期間が長かった。IODは、最終診察時までに各群で同様に改善した(DD群:-0.15logMAR[-0.31~-0.02];TD群:-0.2logMAR[-0.38~-0.1];P = 0.09)。各群とも、最終診察までに弱視が解消する頻度は同程度であった(DD群, 23/54 [43%]; TD群, 211/406 [52%]; P > 0.2)。DDの診断は弱視の解消に独立して影響しなかったが(HR, 0.77;95%CI、0.53-1.12;P = 0.17)、追跡調査の受診間隔が1か月あくごとに、解消の可能性は2.7%減少した(HR、0.67;95%CI、0.51-0.87;P = 0.003)。

結論:DD患者とTD患者は弱視治療に対して同様の反応を示したが、DD患者では経過観察の間隔が長く、弱視が持続する可能性と相関していた。

※コメント
神経発達遅滞の患者は定型発達の患者と比較して、弱視治療に対して最終的に同様の反応を示しますが、神経発達遅滞患者ではフォローアップ間隔が長くなることを予期し、考慮すべきであるとのことです。

discussion抜粋-
弱視治療の関連因子(弱視の重症度、病因、治療アドヒアランスなど)と追跡間隔をコントロールし、DD患者は弱視が解消しにくいという仮説を検証したが、統計学的有意性の閾値に達する差は認められなかった。しかし、生存分析で弱視が治る確率が50%になるまでの期間における6か月間の群間差は、臨床的に意味のあるものである可能性がある。
全体として、神経発達状態は最終的な弱視消失の可能性には寄与していない。弱視の解消は、弱視の重症度、追跡間隔、および治療のアドヒアランスと予想通りの相関があり、DDの状態と弱視の治療成績に関する結論がさらに妥当なものとなった17)。本サンプルでは、弱視の重症度に群間差はみられなかったが、より重度の弱視をもつDD患者は、経過観察間隔が長くなると、最適な治療結果が得られない可能性がある。


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