102. 1%アトロピンは内腔面積(luminal area )と間質面積(stromal area)を増加させることで脈絡膜の肥厚を誘導したが,0.01%アトロピンでは脈絡膜の反応をほとんど示さなかった
Potential Choroidal Mechanisms Underlying Atropine's Antimyopic and Rebound Effects: A Mediation Analysis in a Randomized Clinical Trial
Xu H, Ye L, Peng Y, Yu T, Li S, Weng S, Huang Y, Chen Y, Fan Y, Zou H, He J, Zhu J, Xu X. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2023 Apr 3;64(4):13. doi: 10.1167/iovs.64.4.13. PMID: 37043339; PMCID: PMC10108732.
目的:高濃度アトロピンの抗近視およびリバウンド機構に脈絡膜血管が関与しているかどうかを検討すること。
方法:ランダム化比較試験の中に,媒介分析を組み込んだ。合計207人の近視の小児が,A・B群にランダムに割り当てられた。A群の参加者は,1%アトロピンを毎週(phase 1),0.01%アトロピンを毎日(phase 2),それぞれ6か月間投与した。B群では,0.01%のアトロピンを1年間,毎日投与した。4つの介入メディエーター(総脈絡膜面積(total choroidal area:TCA),内腔面積(luminal area:LA),間質面積(stromal area:SA),脈絡膜血管性指数(choroidal vascularity index:CVI))が評価された。
結果:A群では,1%アトロピンを6か月間投与した後,LA,SA,TCAが有意に増加した。0.01%アトロピンに漸減すると,その増加量は減少した。B群では,これらのパラメータは安定したままであった。TCAは,両期間において,等価球面の進行に対する1%アトロピンの効果の約3分の1を媒介した。phase 1では,TCAの媒介効果はLAとSAと共有されていたが,phase 2ではLAの媒介効果のみが有意に残っていた。CVIの媒介効果は認められなかった。
結論:1%アトロピンはLAとSAを増加させることで脈絡膜の肥厚を誘導したが,0.01%アトロピンは脈絡膜の反応をほとんど示さなかった。1%アトロピン投与後の脈絡膜の変化は,0.01%アトロピンに切り替えると減少した。TCAは,CVIではなく,アトロピンの抗近視・近視回復メカニズムを部分的に説明するものである。SAは,高濃度アトロピンのリバウンド後の治療効果を予測するバイオマーカーとなる可能性がある。
※コメント
0.01%アトロピン点眼は脈絡膜への影響はほぼなく,濃度が大きいとその影響は大きいようです。
0.05%や0.025%だとどうなるのか,比例関係だと想像しますがどうなのか,気になるところです。
*脈絡膜の菲薄化が眼軸伸長とSEの進行に先行する可能性があることが示唆されている。脈絡膜の厚さ(ChT),総脈絡膜面積(TCA),管腔面積(LA),間質面積(SA),脈絡膜血管指数(CVI),および脈絡膜毛細血管血流などのパラメーターの減少が近視の重症度と相関しているとの報告もあり,近視の発達中に脈絡膜血管系の障害が存在することを示唆している。