73. ADHDの子どもは調節反応が低下しているが,調節の刺激に影響されない。ADHDの薬物療法は調節の精度に顕著な影響を及ぼさない
Accommodative response in children with attention deficit hyperactivity disorder (ADHD): the influence of accommodation stimulus and medication
Redondo B, Molina R, Vera J, Muñoz-Hoyos A, Barrett BT, Jiménez R. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2020 Jun;258(6):1299-1307. doi: 10.1007/s00417-020-04645-4. Epub 2020 Mar 14. PMID: 32172295.
背景:注意欠陥多動性障害(ADHD)児の調節は定型発達児と比較して異なるという主張がある。我々は,ADHD児の調節反応が,注意レベルに関与する調節刺激の種類によって影響を受けるか,また,ADHDの治療薬によって影響を受けるかどうかを検討した。
方法:ADHDの非薬物療法児と薬物療法児(n=22,平均年齢10.1±2.4歳;n=19,平均年齢11.0±3.8歳)および年齢を合わせた対照群(n=22,平均年齢10.6±1.9歳)を対象に,両眼開放オートレフラクターを用いて調節反応と瞳孔径を計測した。参加者は,(i)高コントラストのマルタ十字,(ii)アニメ映画のフレーム(写真),(iii)参加者が選んだアニメ映画に焦点を維持するよう求められた。各刺激は25cmの距離から180秒間視聴され,呈示の順序は無作為に設定された。
結果:薬物療法を受けていないADHDでは,対照群と比較してより大きな調節ラグが存在した(p = 0.023,ラグはそれぞれ1.10 ± 0.56 Dと0.72 ± 0.57 D)。薬物療法を受けたADHD児(ラグ1.00±0.44D)と対照群(p = 0.104),薬物療法を受けたADHD児と薬物療法を受けていないADHD児(p = 0.504)の間で,調節ラグに統計的に有意差は認められなかった。視覚刺激は調節ラグに影響を与えず(p = 0.491),群間に有意な相互作用は見られなかった(p = 0.935)。視覚刺激によって調節の変動性は異なり,アニメ映画(p < 0.001)およびマルタ十字(p = 0.006)に比べ,絵の条件では高い変動性を示した。また,変動幅は,time-on-taskの主効果(p = 0.027)に対して統計的な有意差が得られ,時間の経過とともに高い変動幅を示すことが示された。しかし,調節の変動性について群間差は認められなかった(p = 0.935)。
結論:ADHDの子どもは調節反応が低下しているが,調節の刺激に影響されない。ADHDの薬物療法は調節の精度に顕著な影響を及ぼさない。
※コメント
ADHDでは調節反応が低下しているとのことですが,平均で1Dと0.7D程度の差ですので,臨床的には有意ではなさそうです。薬理的な影響はあると思いましたが,今回の結果では差はないようです。
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