2024/07/12(1-p.87)#63

H・P・ラブクラフト(南條竹則編訳)『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』を読みはじめる。夏だし、新潮文庫の100冊を読もう!と思いたって、今年はあいうえお順に読んでいこうかと冊子の索引を見たら、一冊目はラブクラフト『アウトサイダー』で、これは新潮文庫の出してる同編訳者による「クトゥルー神話傑作選」の三冊目にあたっていて、どうせなら一冊目から読もう、ということになった。新潮文庫の100冊は、手元に冊子が2017年からあって、この機会に遡ってまた一からぜんぶ読もうとおもっている。『インスマスの影』も何年か前の100冊に入っていて、まだ読んでいなかったから、この機会に先に(?)読んでしまおう、というわけである。今年の100冊はまだはじめられないのだけれど。はじめて読むクトゥルー神話。サイエンスフィクションならぬサイエンスホラー?(コズミックホラー=宇宙的恐怖などといわれることもあるらしい)は好みの雰囲気でもある。

録りためておいた『映像の世紀バタフライエフェクト』の「ワイマール」回を観る。これまであまり取り上げてられてこなかった切口で、興味深い。ワイマール時代を代表する作家として、トーマス・マンが少しだけ登場していて、つい先日まで『魔の山』を読んでいた僕は、つい嬉しくなる。

この取り返しのつかなさというか、仮にタイムマシンがあったとして、遡ってどこを修正すればこうならなかったか(ヒトラーが台頭しなかったか)というポイントを見出せないのが、ただただ怖い。現代の状況とも酷似している。『ナチスの「手口」と緊急事態条項』という新書を以前読んだが、そのときもただただ怖い、という感想を抱いたのを思い出す。また読み返してみようかしら。

「ワイマール」の主人公として、映画監督のレニ・リーフェンシュタールを取り上げていて、気になったことがある。リーフェンシュタールは、元はダンサーだったが、映画に出演したことがきっかけで名声を得、映画監督となってナチスのプロパガンダ映画を数多く製作する。ナチスの党大会を描いた『意志の勝利』や、ベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』はあまりにも有名。ちゃんと観たことないけど。

女優として有名になった映画『聖山』に、海辺でダンスをするシーンがある。それを観て、どこかで観た光景だな、と思い出したのがピーター・ジャクソン監督の映画『キング・コング』だ(大好きな映画で何度も観ている)。ナオミ・ワッツ演じる売れない舞台女優が、島での過酷なロケで(『聖山』も山中での過酷なロケだったそうだ)怪物キングコングと出会う。その劇中、ワッツが崖でダンスをして怪物の気を惹くシーンがある。それが『聖山』におけるレニ・リーフェンシュタールのダンスとよく似ているのだ(観直したわけではなく、あくまで僕の記憶の中の映像で、ウロ覚えなのだけれど)。レニはその後、ヒトラーの『我が闘争』を読み、その思想に感銘を受けてヒトラーに手紙を送る。一方のヒトラーは『聖山』を観ていて、レニの海辺のダンスに魅了されていたと答える。『キング・コング』はもしかして、『聖山』のカリカチュアなんだろうか。レニ=ワッツがダンスで気を惹いた怪物キングコングは、ヒトラーの戯画なんだろうか。などという深読み(与太話)を、ついしてみたくなった。

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