私記
誰となにを話しても自分自身としか話していないような気がする季節、ものを書くときにペンをかたく握りしめてしまう癖が治らなくて、ひらがなの変換をなやんでいる時間さえもが敵のようにおもえてしまう、大切なひと、いないといってしまえる自意識を横目でみながら、大切という言葉の意味をくみたてなおす。つめたい水ばかり飲むのはじぶんがそういう存在になれたらいいとおもうからだ。酩酊する時間よりもきっときれいなインクの瓶を日にすかして眺めた夕方のほうが何倍も価値があることを知っていながら瞼があかない。肌が荒れるばかりだ。手のようすに人物が表れるとどこかで聞いてから、そんなの信じていないのに自分の軟弱で鈍臭そうな手がいっそう嫌いになってしまった。だれも悪くない。だれも悪くないということがわたしだけが悪いことにつながるまでのつかのまようやく息をしている。誠実ってなんだ。不誠実のことだけわかる。ひとりがいいとはじめにいったのに。いい詩を読みたい。ライブハウスに行きたい。
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本買ったりケーキ食べたりします 生きるのに使います